ぼくたちと駐在さんの700日戦争

【第4話 ブロンドの魅惑(2)】


「そりゃやっぱ理恵だよ。アイツESSだもん」

（ESS=English Study Society　つまり英研部）

「え？そうだっけ？」

ESSは、文化部にあっては活発な部活でしたが、その活動が表面化するのは英語弁論大会と文化祭の時だけ。
女子部員しかおらず、その中に、あのアイドル「宮崎さん」がいることで有名でしたが、それ以外はまったく関心をさそいませんでした。
なぜなら、彼女らの発表には「字幕」がなかったからです。

「あんにゃろー！久保のせいで自分が英弁、落ちたのをひがんで！」
と、孝昭くん。

「やっぱそうなのかなぁ？」

そんなにひがみっぽいのか？と、思ったらさにあらず。

「そりゃそうだろ！だって久保だぜ？久保！」
「だよな。相手が久保じゃなぁ」
「すくわれないよな」
「正常な腸の持ち主としては耐えられないな」

つまり、相手が悪すぎた？

「待て待て待て待てーーーー！」
当の久保くん。そりゃ聞き捨てなりません。
久保くんにすれば、英語は体育以外では唯一得意科目ですので、

「英語弁論大会はなぁ。内容よりはハチオンなのだよ！君たち！は・ち・お・ん！」

「ハウドゥユドゥの？」
「ハウアーユーの？」
「ビオフェルミンの？」

「そうそう。ビオフェル・・・うるせぇ！それが証拠に井上じゃなかったろーが！」

＜ビオフェルミン＝ご存知整腸薬の王様。なんと大正6年から販売されていたスーパーロングセラー＞

グレート井上くんは、当然ながら内容も全て自作でした。
富士の頂上にいる人が、3合目のヤツを頼ったりはしないのです。
しかし、結果として、去年は選抜には残りませんでした。

「ってことは、やっぱ原作の差じゃん！」
「そういうこった」
「発音じゃねー」

「Bitch！」

いきなり英語の久保くん。意味は「クソッ！」
こういう方面の発音は抜群です。


「で。工藤先生と聡子先生がおっしゃるには・・・・・・」

ここからが大問題でした。

「え！お、俺が英語劇!?」
久保くんの驚きはもっともでした。

「そう。ESSと一緒に」

我が校は、僕たちの入る数年前に、お茶の○女子大から、英語においてたいへん優秀な教師（なにを隠そう白井杏子先生ですが）が赴任され、それからというもの英語においては、例年、英語弁論大会県大会進出者を輩出する「名門校」となっていました。
昨年も久保くんが唯一、まちがって県大会進出。

しかし、英語弁論大会は、大会としては、たいへんに地味で、たいくつなものでした。
なにしろ「字幕」がつかないので、なに言ってんのか、出場者当人以外わからないからです。
そこで大会のスパイスとして設けられたのが、『英語劇部門』。
新設部門ですから、これなら全国大会の可能性もあり、優秀なESSを持つ我が校としては、一も二もなく参加を決めたのです。

が、我が校のESSには男子がおりませんので、

そこで

「久保と井上を臨時で入れるらしい」

「まじ～～～～～～～～～～～～～？」

一番青ざめているのは、久保くんです。

「脚本は久保にたのむ、とか言ってた」

「え～～～～！無茶言うな！去年の書いたのは俺じぇねーんだぞ！」

「だからぁ。そこを工藤から確認されたんだよ」

「まずい！そりゃ絶対まずいって！お前、書いてくれるか？」

「ダメだ・・・。今年はほら・・・。やっかいなのが・・・・」

去年も代筆とわかったくらいですから、たいへんな読解力です。『チクリ小町』。

「そんなもんやってられっかっ！断固拒否だ！」

が。

「時間がないから強化合宿するとか言ってたよ」

「が、合宿？」

「そう。合宿」

「ってことは、聡子先生もか？」

「もちろん。そればかりか、なんか特別コーチとして聡子先生の友人も参加するって」

「友人？」

「そう。ブロンドのアメリカ人らしい」

「ブロンド・・・・・？」



「やるっーーーーーーーーーーーーー！」

そんなもんだ。

「日米同盟バンザイっ！」




人気ブログランキング｜ブログ村ランキング

　ぼくちゅうラジオへ→
　第5話へ→

　▲目次へ

関連記事

• 『チクリ小町のポーラスター』第5話
• 『チクリ小町のポーラスター』第4話
• 『チクリ小町のポーラスター』第3話