ぼくたちと駐在さんの700日戦争

西条くん。
「やっぱ妹のいるやつはちがうぜ！」

えっと。
どういう関連があるかがわかりません。

が、それはあとまわし。

西条くんは、
「妹～～～～～～♪」

意味の分からないかけ声でかけ降りて来ると、

「せいぃっ!!」
「ハッ!!」

かけ声とほぼ同時に先輩たちがふっとんでいきます。

　やっぱり強い！

久保くんだって、僕たちの中学では、手がつけられないほどだったのですが、まるで格がちがいます。

「お前もとっとと行け！」

「え・・・だいじょぶか？西条」

「お前、いても役にたたねーから」。

くそー。こいつの正直さはなんとかならんのか？

さらに2人を倒され、遠巻きになった3年生たちでしたが、
うち1人が隙を見計らって、橋の上へと駆け上がりました。

「村山を追わせんな！行け！」
と、西条くん。

「わ・・・わかった！」

僕は痛めた脇腹をかかえたまま、土手を追いかけました。

が
　シュル・・
　ブロォーーーー・・・・

バイク・・・！

　しまった・・・・！

橋まで登り付くと、村山くんは、もう橋の端まで達しようとしていました。

さすがにロードマン！速い！
58キロくらいは出ているのではないでしょうか？

これを猛スピードで追いかけるバイク。

それをまた僕がママチャリで追いかけます。

　村山だけでも・・・！なんとか！

ところが、村山くん。
そのまま橋を駆け抜けるかと思いきや、直前で再び停止しました。

　ん？何考えてるんだ？村山。

すぐに追いついたバイクが、横付け。

が。近づくにつれ、事情がわかって来ました。
なんと橋の向こう側に、もうひとり、待機していたのです。


　さらにいたのか!?



「うおーーーーーーーーーーーー！」

叫び声が聞こえて、

　ちがう！千葉だ！

千葉くんは、バイクに乗った3年生を、そのまま欄干（らんかん）側に突き倒しました。

　グシャ！

「村山ぁ！そのまま行けーーーーーーーーー！」

そうです。
司令塔グレート井上くんは、出口側も押さえていたのです。

　なんて布陣・・・敵じゃなくってよかった・・・・。

追いついた僕は、あわてて倒れているバイクからキーを抜くと

　プスン・・・・！


「千葉！橋のたもとに西条がいる！これ持って走れ！」

「おお！」

キーを受け取ると、自転車にまたがり、西条くん側へと走る千葉くん。

「妹～～～～～～～～♪」

やはりかけ声がヘンです。

　井上・・・全員、夕子ちゃんで釣ったな？
　あとでどうなっても知らないぞ？

へんなかっこうで欄干に押し付けられていた3年生は、ようやくバイクをおこしましたが、キーがなければ、バイクは鉄くず。

猛スピードの村山くんをあきらめ、足をひきずりながら、キーを持った千葉くんを追いかけました。

「くそぉーーーー！待てーーーーーーーーー！」


やった！突破した！

そこから下り坂をくだって、500メートル。


麻生くんの家の工場では、ランボルギーニがライトをつけたままでスタンバイしていました。

その勇姿。
トラクターなのに、ほれぼれします。

「麻生！悪い」

「これだな？ランボルギーニ・三浦」

村山・・・・それはもういいじゃん・・・。
けっこうネチっこいヤツです。

「こいつは前進後退16段変速だ。多少の山ならへっちゃらだぜ！」

「ありがたい！」

「おお。バッチリ、リヤカーと、それからフォグもつけといたからよ！」

「さすが麻生！」
「気がきくなぁー」

ランボルギーニの天井にフォグランプが追加されていました。
これでかなりの明るさを得ることができます。

「へへ。事故車からとってきた」

「さ、さすが麻生・・・・」
「き、気がきくな・・・」

しかし、この際、贅沢は言っていられません。

「あ。それからこれ」
1本の筒を渡す麻生くん。

「なんだこれ？発煙筒？」

「森田からもらった発煙装置の中の予備だ。なんかあったら使え！合図に使える！」

「わかった！」

「早く乗れ！」
村山くんが僕をせかしました。

「麻生。いろいろとサンキューー！」

「ああ。いいって！ただ、そのフォグなぁ」

「うん？」

「ついてた事故車、死亡事故らしいから。気をつけてな・・・・」

　え～～～～～～～～～～～～

一瞬で、真っ青な僕と村山くん。
とんだ改造車です。ランボルギーニ・三浦。

「ま・・・いいや・・・」。

僕は後ろのリヤカーに乗り込むと、

「烏帽子山だーーーー！行けーーーーーー！村山ーーーーーー！」
「おお！」

　ドドドドドド・・・・・・

日本のトラクターとは、まったく異なる音をたてて、ランボルギーニが走り出しました。

　ほんとだ・・・！速い・・・・！
　リヤカーがバウンドするほどの速度。

これがトラクター？

あっという間に決戦の橋。

戦況の気になった僕は、橋の下を覗き込みました。

大男千葉くんの応援を得た西条くんは、あらかた先輩たちを倒していました。
さすが「瞬殺西条」です。

しかし。

あ・・・2人逃げる！

暗がりの中、戦いをあきらめ、逃げようとしている2人が目に入りました。

「村山ーーーー！左だ！もっと左に寄れーーーーーーーーー！」

「西条ーーーーーー！土手ーーーー！土手だーーーー！」

大声で叫びますが、戦っている西条くんたちは気づきません。

「逃がすかぁーーーーー！」

僕は、麻生くんからもらったばかりの発煙筒をすりました。

　チャ・・・！

　ボン！


発煙筒暴発。

　森田のやつ～～～～～～（泣）

　耳が～～～～～耳が～～～～～～

合図にはなりましたが。



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