ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「孝昭！あんたらだったのかい！」

タケノコをもらった時は、めちゃやさしいおばあさんだと思っていましたが、どうやら孝昭くんが恐れるだけある感じです。

「ち、ちがうって！俺らじゃねぇ！」

当然猛反発しますが、

「あんたら！神社よごすとバチあたるんだからね！」

まったく聞き入れません。

「だからぁ。俺らじゃねぇつってるだろ？ばばぁ」
と、西条くん。
西条くんは、子供は好きですが、どういうわけか年寄りがキライです。

「じゃぁ誰なんだ？」

「たぶん。うちのガッコの先輩かな」。

「へん！そんなこと言って逃げようたってそうはいかないんだからね」

「ほ、ほんとだってー！」

「だいたいねぇ。先輩ったっておまえらの学校のだろ？だったらおんなじだよ！」

無茶苦茶言うばあさんです。

ここで僕。
「いえ。おばあさん。僕らはここでちょっと調べ物をしていただけなんです」。

いちかばちか言ってみました。

「調べもの？お稲荷さんで？小学校でもあるまいに！」

「そうじゃなくって。ここでおかしな音がするものですから」

「おかしな音？」

「はい。つい先日、ここで早苗お姉さんと笛のような音を聴いたんです」。

僕にはひとつの推論がありました。

　実は、あの笛の音は、原爆ばあさんの仕業ではないのか？

小学生にありえない怪談をするあたりから、すでに怪しい。
それは、この神社への愛着で、なおいっそう強くなりました。

「早苗ちゃんと・・・ここで・・・・・」

原爆ばあさん。うって変わって静かになりました。

やはりなにか思い当たることが？

「早苗ちゃんと逢い引きかい？逢い引き～～～～～」

興味はそっちかっ！

「そーかそーか！早苗ちゃんにもやっと春がぁ」

「ち、ちがいますってば！」

「隠さなくっていいよ。ここは、高校生カッポーのニッカだからね。ニッカ」

ニッカ？　ああ。メッカか。

「人はめったに来ないし。暗がりがねぇ。また雰囲気いいからねぇ・・・・」

「あ？いや、ちがうっ！」

「あの子はいいよ～。お料理上手だし。安産型だし」

いやいやいや。そんなこと聴いてないから。
しかも実の弟がここにいるんですけど？

「やさしいしねぇ・・・。ほんっと。あんなできた娘っこはここいらじゃめずらしいね」

それはそれは・・・
「やさしい」の部分は人によって大きく違う気もします。

「で？早苗ちゃんとなにしてたんだい？チッスかい？チッス！」

「いえ・・・だから・・・」

チッスって・・・。ああ。キッスか。

「あ。そうか！孝昭いたんじゃ教えらんないよねぇ」

「いえ。そういう話じゃなくって！」

「じゃ、おまえさん。ちょっと耳かしな」

「え？」

すると原爆ばあさん。

「早苗ちゃんはねぇ。胸だね。弱点は、胸！」

「んなっ・・・・！」

「おや。興味ないかい？女のあたしが言うんだから間違いないよ」

「いえ・・・・興味ないって言うか・・・・」

そうか。「おばあさん」って女なんだ、と、あらためて奇妙なことに感心する僕です。

「あたしも若い頃はねぇ・・・・感じやすくってねぇ・・・・」

　感じやすい・・・・

なんか急に、早苗さんの胸への興味が失せてしまいました。
「むにゅ」の想い出がだいなし。
しばらく女子の胸を見るたびに、思い出しそうです・・・。

「じいさんが、これがまた・・・好きな人でねぇ・・・・」

いや。聴いてないから。

「じゃ、あんたら。最後にここ掃除！」

「ええええええええ？」

「お前らの先輩がやったんなら、後輩が後始末すんのはあったりまえだろ？」

「く・・・・・！」

「わかったかい！孝昭！」

「ち・・・。わかったって！」

なるほど。とんでもねぇばあさんです。

結局、僕の「謎の笛の音」の疑問はうやむやにされていました。

　やるもんだ・・・・。

しかし、わかったこともいくつかあります。

1.原爆ばあさんは、実は結婚したことがあり、
2.この神社にはかなり通っていて、
3.さらに、怪談をねつ造することくらい、平気でやりそう、ということ。
4.そしてどうでもいいけど、胸が感じやすかったらしい。

問題は、その目的と、なぜお稲荷さんなのか？

「なぁ・・・孝昭・・・」。

「ん？姉ちゃんか？今なら、さらにまな板もセットってことで。どうだ？」

「・・・・・」

早苗さん。お得です。いかがですか？



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