ぼくたちと駐在さんの700日戦争

結局、孝昭くんの家までつき合うことになりましたが、孝昭くんは不在でした。

「あ。あいつ、ロッテンマイヤーさんとこ行ったな？」

「え？」

それは意外な話でした。
たしか、原爆ばあさんは、孝昭くんにとって天敵なのでは？

「アイツ、今日は先生やってんだ」。

「先生？」

「そう。ひらがなくらいは孝昭でもわかっから。あはははは」。

　・・・・なる・・・ほど・・・・。

僕は、役所への復讐ばかりを考えていた自分が恥ずかしくなりました。

　この姉弟は、もっとずっと建設的なことを考えてる。

確かに、母の言う通り、姉と言い、弟と言い、この家の教育は間違っていないような気がします。
少なくとも「心」の部分では。

と、感動もつかの間、

労をねぎらってお茶でも出すかと思いきや、

早苗お姉さん。
「よし！こっからはひとりで帰れるだろ？」

「はい？？？」

帰れるだろって・・・
送られて来ておいて・・・
キャ～とか言っといて・・・

「じゃ～な～～～～～～～」

　むにゅ、で恋に落ちなくてよかった・・・。
　不良少女は不良少女だ・・・。

くそ～～～～～～～～。

そうくるなら～～～～～

「あ。お姉さん！」

「なんだ？」

「写真はまだ部屋にあるんですか？」

「え・・・・・」

「いえ。駅前で見た子、まちがいなく写真の子でした！今夜、枕元とかに立ってないといいですね～～～」

「え～～～～～・・・・」

ざまみろ！
今晩うなされろっ！

と、脅したつもりが

「じゃ・・・ばあさんが言ってたことは、ほ、ほんとだったんだ・・・」

はい～～～～～？？？

「な、なんです？そのばあさんが言ってたことって・・・・」

「いや、な。小学校の頃によ。被爆体験者の話を聞くって特別授業があってな」。

「あ・・・あったそうですね・・・」。

「そん時、ロッテンマイヤーが教えてくれたんだ・・・あそこにはな。疎開してた女の子の霊が出るって・・・」

「ええええええええ？」

ロッテンマイヤーさんの部分だけ怖くない・・・。
てか、そこ以外怖いんですけど・・・。

「ここいらに疎開した女の子がな。こっちで病気なったんだけどよ」

「はい・・・・」

「親が迎えに来るってんで、毎日毎日、駅までお迎え出てたんだとよ」

なんか、渋谷あたりの話に似ています。

「ところが、親は実は空襲で死んじゃってたんだな・・・」

「はい・・・・」

「それでも毎日毎日、駅前まで迎えに出てたんだが・・・。ある雪の降る日にな・・・とうとう帰らぬ人に・・・」

「・・・・・」

「その子がな。今でも駅まで、親を迎えに来るってんだよ・・・」

「・・・えええ～～～～～～～？」

「・・・おカッパ頭に、モンペ履いてな・・・・」


　ぞわ～～～～～～～～～


この話聞いた後に、あの社通んなきゃいけないわけ？

たったひとりで・・・・。

なのに早苗お姉さん、
「あ。そうだった。呪われたカメラ返すわ」

え！このタイミングで？

呪われたって・・・・


カメラは受け取ったものの・・・

「あの～～～。お姉さん？」

「なんだ」。

「僕のこと・・・・・送ってくれません？」

「あほかっ！」

薄情もん～～～～～～～～～～～～～～～！


「じゃ、お姉さんとこ泊めてください」


　ドスッ♪



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