ぼくたちと駐在さんの700日戦争

とは言ったものの・・・。
どうやって逆襲を実現するか・・・。

手始めに孝昭くんの所へ行くと、

「あん？森田ぁ？なんで俺があんなガリ勉のために」

同じ中学校と言えど、両端の2人。
案の定、交わりはありません。

　こりゃ大変そうだ・・・。

しかし、実は「猶予」はありませんでした。


その日、西条くんと駅で別れた直後。

ゾロゾロと僕の前に現れた3年の面々。

「よー。1年。ちとツラぁ貸せ」

グレート井上くんの言った通りでした。

「え・・・っと。僕ですか？」

相手は西条くんと分かれるのを待っていたのです。

「他に誰もいねぇだろうがよ！」

やばい・・・・・。
相手は3年生4人。不良というほどもないのですが、ようは不良ぶりっこ。
こういう輩は、やたら後輩にいばりたがるのです。

遠く駅から電車が出発した音が聞こえました。
これで西条くんが戻って来るという可能性もありません。

「僕がなにかしましたか？」

僕は、極力毅然とした態度をとりました。
ここでにやけると、火に油をそそぎかねません。

しかし、そこはまだ大通りでした。
通行人も何人かいます。

ここは一か八か。

「あーーーー！おじさん！」

適当な通行人を見て呼び止めました。

「どうもー。おひさしぶりですー」。

かけよる僕。

当たり前ですが、まったく面識などありません。
見ず知らずのおじさんです。
しかし、先輩たちは僕を追っては来ません。
彼らは、こういった「アクシデント」に弱いのです。

僕はすぐに、
「すいません。今、不良にからまれてまして。駅まで、ちょっとだけ話を合わせてください」

そのおじさんに、小声で耳打ちしました。

「え・・・・！」

おじさん。さすがに当惑しましています。
が、おじさんが先輩たちに視線をなげると、バツが悪そうによそを向きました。
（この方法けっこう効くので、からまれた方はお試しください）

たまたまこの人がいい人で、
「け、警察か学校に連絡しようか？」

「いえ。大丈夫です。いっしょに歩いていただけば」。

僕は先輩たちに向かって
「あ。先輩。じゃ、その話は学校ででも～」

ことさら大声で言いました。

「ちっ！」

先輩たちは、舌打ちこそしましたが、第三者まで巻き込む度胸はないようです。

　あとはどうやって逃げるか・・・。

思った通り、遠巻きにつけて来ているのがわかりました。

　自転車でいっきに逃げるか？
　それともこのまま交番までつきあってもらうか。

しかし。

その必要はまったくなくなりました。

なぜなら、駅前にたむろしている女子高生の群れを見つけたからです。

「あれは北女の・・・・・」

そうか。下りの電車に乗ってたんだ・・・。

　孝昭のお姉さんは・・・。

　いる！

先日の記念写真メンバーと、ほぼ同じ。

これは、僕にとって絶好のチャンスでした。

北女のスケ番グループからすれば、僕たちの学校の不良ブリッコなど、単なる田舎のアンチャンにすぎません。

「おじさん！ありがとうございました！」

「え？い、いいのかい？」

「ええ」。

こうなったら逆に引き寄せ作戦です。

1年生の不良をまとめあげなくても、これならいっきにカタをつけられる。
僕はそう踏んでいました。

幸いにして、桜さ・・・早苗さんも僕に気づいてくれました。
スカートがまたしても戦闘用だし。

「よー」

やった！

「桜・・・早苗さ～～～～～～ん」

にこやかに、まるで恋人みたいに手をふる僕。
なんか、まんざらな気分でもありません。


間もなくして、おじさんと別れた僕を、先輩がたが追っかけて来ました。

　来るなら来い！
　北女だぞ、北女！
　てめーら、田舎の不良ブリッコがいきがったって、ものの数じゃないぞ。

なにしろ早苗お姉さん。凶暴です。


「先輩方。お待ちしてました」。

「へー。いい心がけじゃねぇか」

「でしょ？ところで北女のスケ番グループはご存知ですよね？」

「き、きき、北女？」

ほら～～～。ビビってるビビってる。

「ええ。実はそこに・・・・」

振り向くと、

　ありゃ？

　いない・・・。

　どこ行った？

　桜さん・・・。

　いない・・・。


「あ・・・あれぇ？」

「北女がどうしたって？」

「えっと～～～～・・・・」

　真っ青。

「北女がどうしたっつーんだよ！」

「えっと・・・けっこう美人がいるみたい・・・ですよ・・・・」

まいったな～～～～・・・。



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