←前の記事へ


「あーーーー。すっきりした。復讐完了!」
成功を喜び合う僕たち。
僕たちは、のぶ君と出会ってから、西条くんを駅に送る時には、必ずザリガニ池→広場の順で通るようにしていました。
幸いにして、あの日からいじめに合っているのぶ君を見ることはありませんでした。
が、あいかわらずひとりでポツンと遊んでいるのです。小2の男の子が、ひとりだけで遊んでいる姿は、やはり哀しいものがありました。


「あーーーー。すっきりした。復讐完了!」
成功を喜び合う僕たち。
僕たちは、のぶ君と出会ってから、西条くんを駅に送る時には、必ずザリガニ池→広場の順で通るようにしていました。
幸いにして、あの日からいじめに合っているのぶ君を見ることはありませんでした。
が、あいかわらずひとりでポツンと遊んでいるのです。小2の男の子が、ひとりだけで遊んでいる姿は、やはり哀しいものがありました。
と、広場を通りかかったときに
「あれ?」
「ハモニカの音だな」。
「ああ。うまいな~。なんだこの物悲しいメロディ」。
「おぼろ月夜だよ。ならったろ?」
「んー。俺アメリカンスクールだったから」。
どこにあんだよ。そんなもん。
だいたい自分の風体考えて言え。西条。
「誰?のぶか?吹いてるの?」
「まさか・・・この時間だし・・・・」。
「そうだな。また捜索願い出ちゃうもんな」。
僕たちは、すでにすっかり暗くなった広場へ走りました。
工事資材やらが足下にあり、つまづきながら、ハモニカの音のする方へ。
やはり・・・。
「のぶ!」
「あ、あれ?お兄ちゃんたち?」
「なにやってんだ、って、ハモニカ吹いてたんだろうけどさ。お母さんがまた探しちゃうぞ」。
「ん。探さないよ。今日は出てるの知ってるから」。
?
「家帰れよ。もう、真っ暗なんだからさ」。
「・・・だめ」。
表情をくもらせるのぶ君。
「なんで?鍵あるだろ?」
「おじちゃん、来てるから・・・・」。
おじちゃん?お父さんじゃなくて?
「あ!そうだ!」
のぶ君が思い出したように言いました。
「お兄ちゃんたち、コロッケ食べる?今日ね、お肉屋さんが学校まで届けてくれたの」。
「へぇ~・・・・、あの肉屋がねぇ・・・・」。
「うん。いっぱいもらいすぎて食べきれないから」。
そうです。孝昭くんをさんざん騙した肉屋さんです。
「あのね。コロッケ食べると将来えらくなるんだって!」
やはり・・・。こんな幼な子も騙してるのか・・・。肉屋、おそるべし。
のぶ君のくれたコロッケを一緒にほおばりながら、
「なんだ?そのおじさんって」。
核心をついてみました。
「いつも家にいるの。でも、すぐ僕たちをぶつから、嫌いなんだ。僕」。
これか・・・。家に帰らない原因は。
僕たち? のぶ、ひとりっこじゃないのか?
重い空気の嫌いな孝昭くん。
「ところでさー。のぶ、ハーモニカうまいなぁ~」。
「そう?」
僕も
「うん。2年生とは思えないな。だいたい、おぼろ月夜、3年の教科書だろ?」
「こっち来てからボクひとりのこと多いから。1年生んときにも褒められたの。ボク音楽Aなんだ!」
「そっか。もう一回聴かせろよ。おぼろ月夜」。
「うん!」
どんな楽器もそうですが、弾いている人の心情や性格は、テクニック以上に出るものです。
彼の吹く「おぼろ月夜」は、高校生である僕たちにも、絶対に真似できない、というほどに哀愁にみちていました。
なにしろ、音楽にまったくトンチンカンな西条くんでさえ、目をうるませていました。
どうしてこんな音色がふけるんだろう?
長いので、2話分割に変更しました。7章-第23話へどうぞ
「あれ?」
「ハモニカの音だな」。
「ああ。うまいな~。なんだこの物悲しいメロディ」。
「おぼろ月夜だよ。ならったろ?」
「んー。俺アメリカンスクールだったから」。
どこにあんだよ。そんなもん。
だいたい自分の風体考えて言え。西条。
「誰?のぶか?吹いてるの?」
「まさか・・・この時間だし・・・・」。
「そうだな。また捜索願い出ちゃうもんな」。
僕たちは、すでにすっかり暗くなった広場へ走りました。
工事資材やらが足下にあり、つまづきながら、ハモニカの音のする方へ。
やはり・・・。
「のぶ!」
「あ、あれ?お兄ちゃんたち?」
「なにやってんだ、って、ハモニカ吹いてたんだろうけどさ。お母さんがまた探しちゃうぞ」。
「ん。探さないよ。今日は出てるの知ってるから」。
?
「家帰れよ。もう、真っ暗なんだからさ」。
「・・・だめ」。
表情をくもらせるのぶ君。
「なんで?鍵あるだろ?」
「おじちゃん、来てるから・・・・」。
おじちゃん?お父さんじゃなくて?
「あ!そうだ!」
のぶ君が思い出したように言いました。
「お兄ちゃんたち、コロッケ食べる?今日ね、お肉屋さんが学校まで届けてくれたの」。
「へぇ~・・・・、あの肉屋がねぇ・・・・」。
「うん。いっぱいもらいすぎて食べきれないから」。
そうです。孝昭くんをさんざん騙した肉屋さんです。
「あのね。コロッケ食べると将来えらくなるんだって!」
やはり・・・。こんな幼な子も騙してるのか・・・。肉屋、おそるべし。
のぶ君のくれたコロッケを一緒にほおばりながら、
「なんだ?そのおじさんって」。
核心をついてみました。
「いつも家にいるの。でも、すぐ僕たちをぶつから、嫌いなんだ。僕」。
これか・・・。家に帰らない原因は。
僕たち? のぶ、ひとりっこじゃないのか?
重い空気の嫌いな孝昭くん。
「ところでさー。のぶ、ハーモニカうまいなぁ~」。
「そう?」
僕も
「うん。2年生とは思えないな。だいたい、おぼろ月夜、3年の教科書だろ?」
「こっち来てからボクひとりのこと多いから。1年生んときにも褒められたの。ボク音楽Aなんだ!」
「そっか。もう一回聴かせろよ。おぼろ月夜」。
「うん!」
どんな楽器もそうですが、弾いている人の心情や性格は、テクニック以上に出るものです。
彼の吹く「おぼろ月夜」は、高校生である僕たちにも、絶対に真似できない、というほどに哀愁にみちていました。
なにしろ、音楽にまったくトンチンカンな西条くんでさえ、目をうるませていました。
どうしてこんな音色がふけるんだろう?
長いので、2話分割に変更しました。7章-第23話へどうぞ
- 関連記事
-
- 7章-第23話 おぼろ月夜(5)
- 7章-第22話 おぼろ月夜(4)
- スモーク・オン・ザ・サーモン 他公開
久々に 一番載りかな?
昨夜はありがとうございました。
今夜はおとなしくしています(笑)
「ココは感想を書くところ」でしたね。
ですが。
小2... 娘と重なって 巧くコメント出来ません。
ゴメンなさい。
再登校です
大人の犠牲になってしまう子供は
今も昔も変わらないのかもしれませんね
連続殺人で犠牲になった
あの女の子を思わず思い浮かべてしまいました
おぼろ月夜・・・哀愁漂います
>明子姐さん 一番載り認定
今日は遅くなっちゃいましらからね~。
競争率低め。
劉備みたいですね!(こればっか)。
おはようございます☆
ラストの一曲、おぼろ月夜だったのですね。
うわー。ステキですv
感動的でした。
>フェニックスかめさん 遅くにすいませんね
ここらあたりが非常に書くのむずかしくってですね~。
困ってました。
明日あたりからちょっと複雑になっていきます。
>桜さん
>ラストの一曲、おぼろ月夜だったのですね。
そうです。前回、草二郎さんがボ・・推理かましてくださったものですから、実はあせってました。
おぼろ月夜、実際の録音をアップしようとしたら、容量がでかくてダメでした。残念。
なるほど!
朧月夜とはこうゆうことなのか。
>「おじちゃん、来てるから・・・・」。
って、秋田の事件思い出してしまいました。
こうゆう事情じゃ家には帰れませんよね。
>☆男さん
これは実に複雑な「事件」でした。
これを明るく書ききれたら、みんなほめてやってくださいね。
ほんと、むずかしいわぁ~。
なるほど。おぼろ月夜のタイトルはこのラストの1曲のためだったんですね。
のぶ君が一人っ子じゃない?
ちょっと意外です。
再登校です。
…正直どう書いていいのか分かりません…
でもステージ上って大人でも緊張するのに、立派におぼろ月夜を演奏しきったのぶ君素敵ですね。
このあと、画面が見えなくなりました。
いつの時代も大人のエゴの犠牲になるのはいつも子供なんですね。
昨今よく報道される子供がらみの事件もそう、高校の必須科目未履修問題もそう。
それぞれに勝手な大人の事情があるのでしょうが、やるせないですね。
>AIAIさん 登校確認~
はい。その通りです。この最後ののぶ君の演奏のためだけにタイトルにしてました。
本当は2話に分かれてたんですが、今日、1話にまとめました。
>ししさん
花火盗人は、花火が上がったところがラストになるわけですが、この話では、これがフィナーレではないところがミソです。
しかも早春の曲、おぼろ月夜を秋。ここいらですね。なぜ「おぼろ月夜」であったかも後から出て来ます。
ほんと、ここはいろいろ裏切りますね。それもすごい感動的に。
なんか幸せに眠れます。
ありがとー。
だめだ~
目に霞がかってて 目にダムが。。。
>2児の母さん
前の記事にひきつづきまして、ありがとうございます。
ステージを文章に表すのってむずかしくって。
すごい苦労しました。
でも、心に伝わったものがあればうれしいです。
>ひれへろさん
子供にはまったく力がないことを思い知らされます。
そして高校生にもそれがないこを、僕たちは知って行くのですが、ぼくちゅう流にせいいっぱい抵抗します。
もちろん、これを書いていること自体、抵抗のひとつなんですが。
>ぱんさーさん、登校確認
イマイチ、書ききれてなくって。
くやしく思ってます。
でも、ブログなんで、このあたりが素人の限界なのかも。
>nekobokeさん、おはようございます
おぼろ月夜っていう曲は、「ふるさと」を書いた人たちと同じコンビがつくりました。
この話は、その歌詞のすごさには、とうていおよんでいないなぁ、って、思います。
長野が舞台らしいですね。おぼろ月夜。
おはようございます~登校です
涙がにじんでもポチポチ忘れずにやりました
「おぼろ月夜」胸が痛いです
早い登校でごめんよ~
時間がとれなくて。。。。。涙
今日は遅刻じゃないようなので、登校です。
おぼろ月夜と題名は覚えていたけど、メロディーがでてこなく、リンクされているところで聞きました。切ない。小2が高校の文化祭で演奏するとは。。。ものすごく家族に会いたくなりました。
今日はいつも以上に鮮明な画像が頭に描けました。学校の体育館、商店街の人に、のぶ君にっと・・・なぜかいつも駐在さんは"クリックしてけ”のアニメキャラ。ままちゃり君は想像できません。ブラピが学ラン・・・???
>sai姉さん、早朝登校おつかれさま!
ちょうどsaineiさんが来ている時に、2話分割に変えました。
帰って来てみたらびっくりかも。
ねえさん早すぎ(>_<)
えっと…
「saineiで~す。2度目の登校で~す。」
実は3時頃起きて読んだんですが、おぼろ月夜のメロディーが頭から離れなくなって眠れなくなっちゃって。よっぽど起きてギターで弾いてみようかと思ったけど、嫁に心配されそうなのでやめときました。
切ない…。切なすぎる。
仕事から帰ったら弾いてみよっと。
まだメインタイトルの飛行機、出て来てないし、先が気になる問題もたくさんあるし、続きも楽しみにしてます。
>junkieさん おはようございます
リンク先のおぼろ月夜、いいですよねぇ。
唯一ハーモニカみたいな音源だったので、無許可でリンクさせていただきました。
読み終えた頃にはたぶん2話に分かれていると思います。
っていうか、午前5時とかすいてるだろうな、って思ったのに~
のぶくんのおかあさんも、愛の量がレベル3くらいしかなくて、色んな人に分け与えられないんだネ。 きっと!!!
ハーモニカは小学生の必須アイテム。(高学年になると縦笛になるけど・・・)
昔は音楽の成績良かった方だと、思っていたけど(5段階評価の5結構取ってました。プチ自慢)今はカラオケ行っても、”あゆ”とか全然歌えないし・・・。 おぼろ月夜って曲、選曲するとこ”のぶくん”子供ながらにエ・ラ・イぞ。
西条君最高!のぶくんはどうなるのかな?
「ぼくちゅう」に登場する人達はみんな魅力的なのですが
それは書き手であるくろわっさんが登場人物一人一人に魅力を見出していて
それを文章にしているから
読み手である私達にもその思い入れのようなものが伝わって
魅力的に映るのだなと、このお話を読んで思いました。