ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜本日、ライブでフィナーレ。何話になるかわかりません＞

そしてとうとう2月14日。木曜日。

バレンタインデーは休校のまま迎えた。

「お。愛、休みだってのに早いな」。

だってね。

高校は休みじゃないんだもん。

わたしは、持っている服の中でも、一番にかわいい服を選んだ。つもり。
だいたいわたしは、カワイイとかいう基準で服を選んだことがない。
そこで、数少ない美奈子叔母さんが買ってくれたヤツだ。
しかもスカートだよ。スカート。
考えてみたら、制服以外の今はけるスカートってこれしかないような気もする。

だってねぇ。
おしとやかにはほど遠いわたしは、気づかぬうちに大サービスしてることがしょっちゅうあった。
小学校のうちはよかった。「パン2○見え」とか男子もさわぐから。
が、中学校ともなると、男子はこういう場合寡黙だ。
いや。寡黙なんてかっこいいもんじゃない。「むっつり」だ。

わたしは、お手製ミントチョコを手提げに入れると、家を出た。

その手提げバックでさえ、服との色合いとかを考えて、選びに選んだヤツ。
少しでもいいから「かわいく」見られたかった。

「行ってきます！」

「いってらっしゃい」

パピィとちがって、お母さんは、わたしがこんなに早く出かける理由がわかったみたい。


少し早く来すぎちゃったかな・・・。

Y字路で待つこと20分。

　来た！

いけ！わたし！

「お・・・おはようございます！」

「あれ？愛ちゃん、今日は休み？」

「あー・・・それが・・・」

「あ。学校の窓が割られたってホントなんだ？」

「そ、そうなんです」。

「そのスカート。かわいいね」。

わたしは顔がカァっと熱くなるのがわかった。
だって。選びに選んだ、たった1本のスカート。あ、選んでないか・・・。

今しかない！

「あ・・・あの・・・先輩・・・！」

「え？なぁに？」

「こ・・・これ！あの・・・・」

「あ？チョコ？」

「は・・・ははい！」

南先輩。にっこりと微笑んで

「ありがと。うれしいよ」。


やった～～～～～！やったよ～～～～～！


南先輩は、受け取ったチョコを鞄には入れず、別に持っていた紙袋に入れた。

　うわ・・・
　あれって・・・今日のための紙袋？
　さすがにライバル多数ってことか・・・。

でも、わたしは渡せたことで、じゅうぶんすぎるほど舞い上がっていた。

　ありがと、って言ってくれたもん。
　うれしい、って言ってくれたもん。

ライバルは、後で倒せばいいや。


「パトパト！わたしもがんばったんだから、お前もがんばれっ！」

「メ～～～～～～」

その日、わたしは一日中、にやついた顔が、もとにもどらなかった。


　＜MINT倶楽部 第38話へ→続きます＞

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