ぼくたちと駐在さんの700日戦争

ジェミーのスケ番姿は、上から下まで孝昭くんのお姉さんのもの。
つまり、スケ番お欄のブラウスと、スケ番お欄の超ロングスカートを着ています。

ジェミーとお欄、初対面。

「あ？お前、うち（北女）のもんみたいだけど。見かけない子だねぇ」。
当然、気づきます。お欄お姉さん。

「え？あーー。はいはい。そういうことになってます」。
平然とジェミー。

「何年だい？」

「えーっと。1年ですね。たぶん」。

「たぶん？あたいのことは知ってんだろ？」

「はいー。まったく別の意味で」。

お姉さん。それが自分の制服であることも、ましてジェミーが男であることにも気づいていません。

「新入りで、あたいに挨拶なしか？」

「あー。そうですね。はい。こんばんは」。

　　ぶちっ

「なんだいっ！その挨拶は！おい！こいつ何組だ？」
部下にたずねるスケ番お欄。

「さぁ～～～～～」。一様に首をかしげる部下たち。
そりゃそうです。

「あの、お姉さん、こいつはちょっと違うんですよ」。
ようやく僕が止めに入りましたが、

「ちがう？そう言や、なんでウチの子がお前らと一緒にいるんだ？」
と、首をかしげると

なにを思ったかお欄さん

「あーーー！わかった！お前かぁ。ウワサの”西条の彼女”ってのは！」

あららら。

この言葉に竹内さん、当然おだやかじゃありません。いきなりの失恋におもわず振り向きます。

「ち、ちがいますよ～。お姉さん、なに言い出すんだよ～」。
西条くんも否定します。
にもかかわらず

「あーーー。思い出した！生理来ないとか言ってたなー！おまえかー」


　　　あ？？？


竹内さん、びっくり。
西条くん、もっとびっくり。
その他大勢、みんなびっくりです。

これは西条くんの病院で、ミカちゃんの前で繰り広げられた悪い冗談だったわけですが、なぜそこだけ伝わっているのでしょう？
僕は孝昭くんをにらみつけました。
目を空にむける孝昭くん。

しかも

「はいー。あたし来ないんですー。こまっちゃってー」。

ジェミーの底なしが始まってしまいました。

「えっと、お姉さん、違うんです。こいつはですね～・・・・」。

説明しようとしましたが、もともと人情に厚いスケ番お欄

「まったくなー。男ってのは勝手な動物だからよー。お前もたいへんだろうがなー」
「あの、違うんですよ。お姉さん・・・」。
「なんか困ったら、あたしんとこに来な！西条にはキッチリ責任とらせっからよ！」
「いや、お姉さん、僕の話・・」

「はい～。お姉さん～、お願いします～」。

ジェミー！！！

竹内さんはすでにうなだれていました。

ようやく隙を縫って僕。
「えっと。違うんです。お姉さん、こいつ男なんです」。

「へ？」

「男・・・」。

「はぁ？」

「だから女装してるんです。こいつ」。

・・・・・・

「な、なんだってウチの制服・・・・Sanae.K？」

やばー。袖の刺繍発見されました。

「さなえ、って、あたしと同じ名前なんだね・・・はは。イニシャルまで。ん？」

ちょっと考え込むお姉さん。

「孝昭！！！！！まさか！！！！」

「あ。俺、長ネギ買って母ちゃんにとどけないと！」
猛スピードで逃げる孝昭くん。

どうやらそれが自分の服である可能性に気づいたようです。

「お前！なんだって、あたしの服着てるんだい？」
ジェミーにすごみますが、

「お気に入りなの」。

意味がありません。

「お前！説明しろ！」

当然、おはちは僕のところへ。

「はい・・・・」



長い長い説明と謝罪につぐ謝罪で、ようやくことの子細をわかったスケ番お欄でしたが

「しかし、あんた。美人だねぇ。男とは思えねー」。

「あ。ほんとですよ。ほら」。

長いスカートをおもいっきりめくりあげるジェミー。
思わずのぞきこむお欄たちスケ番グループ。


「あ。パンツはいてきてなかったんだ。僕」。


阿鼻叫喚。



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