ぼくたちと駐在さんの700日戦争

しかし、和美ちゃんの言うことも一理ありました。

ただでさえ不良な西条くんたちが、パトロールなどと言っても、窃盗犯と間違われるのが関の山。
駐在さんがいないということは、それだけでいろいろやりにくくなっていました。

そこで

「バナナちゃんさぁ。モーリス借りられない？」

「モーリス？毛利さんとこの？」

覚えていらっしゃいますか？
毛利組長宅のモーリス。左からボーカルのトッポ、ベースのサリー・・・・
すでに記憶が定かじゃありませんが、ザ・ドーベルマンズ。

「そう。あの犬つれて歩けば、少なくとも窃盗犯に見間違われないし、心強いだろ？」

「うん。犬つれた泥棒ってあんま見ないしな！」
「トナカイつれてんのはいるけどな！」
「それ、泥棒じゃないよ。似てるけど」。

バナナちゃん。つっこみもみごとに息があってます。

「それにモーリスつれてなら逮捕もできるかも！」

「いや。そりゃやめとけ、西条。あくまで脅すだけだ」。

しかし問題は。

「毛利さんとこ・・・貸してくれるかなぁ」。
不安顔なバナナちゃん。

「きっと大丈夫だよ。組長さん、バナナちゃん信頼してたから」。

「でも・・・不安だなぁ。つきあってくれる？」

「え！風疹の僕が？」

「お願い！電話だけでもいいから！」

「ええええ・・・・・」。

真夜中の電話ボックス。

”で？こんな深夜に電話よこしたと・・・・”

「ええ。ダメですかね？」

”いや・・・そりゃオヤジに聴かなきゃわかんねぇが・・・・”

「はい。ぜひ聴いてください。早乙女さん」。

”いいか。セイガク。後学のためにいい格言教えてやる。覚えろ”

「はい・・・・・」

”『こどものでんわは夜9時まで』　言ってみろっ！”

「こどものでんわわよる9じまで」。

”よし！その格言知ってりゃ、怒られなくってすむからな！”

「ありがとうございます・・・」。

”じゃぁな”

「あの・・・・・」。

”あん？まだなんかあんのか？”

「それで、早乙女さんのキャデラックだと、犬、何頭乗りますかね？」

”はあああああああああ？”

「だっておっきいじゃないですか」。

”もうひとつ格言覚えろ！いいか！『人が乗るから乗用車』！言ってみろ！”

「犬ものれるぞじょうようしゃ・・・」。

"ちがうっ！”

「すいません」。

”まったく！てめぇは道徳習わなかったのか!?”

まさかヤクザに「道徳」を説かれるとは思ってもみませんでした。

受話器をふさぎながら

「ダメだ。早乙女さん、すっごい不機嫌。バナナちゃん代わってくれない？」

「え？・・・う・・・うん・・・・」。


「もしもし・・・早乙女サン？・・・大場です・・・・はい。奈々です・・・・ごぶさたしてます・・・・」。

「はい・・・はい・・・ええ」。

「・・・ウフ。早乙女さんったら♪」

わずか数十秒で電話は終わり、

「早乙女さん、モーリス、運んでくださるって」。

あのどスケベヤクザが～～～～～～～～～！

結局、僕は、なんの役にもたたなかったわけですが、

そのかわりに、とっても為になる格言を2つも覚えました。

　こどものでんわわよる9じまで。
　ひとがのるからじょうようしゃ。

覚えましたか？みなさん。


※欄栗月間　『めおチャ』も好調。どもどもです～　

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