ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜本日、ようやくラブコメの「ラブ」です。ああ・・・長かった。R13＞

「わたしの夢。見てくれた？」

あれから、毎日同じ時間にたずねてきてくれている和美ちゃん。
婦長さんも、姪に気を利かせてなのか、その時間帯は訪れません。

「あ・・・うん」。

まさか、奥さんと愛ちゃんの夢とは言えません。

「うれしい・・・」。

和美ちゃん。・・・きっと嘘ってわかっているのに。
半分起き上がっている僕の腕にすがります。

僕は、ごまかしでもするかのように

「熱ね。下がったんだ。明日には家にもどれるみたい」。

「え・・・。家、もどっちゃうの？」

和美ちゃん。喜ぶかと思っていましたが、違いました。
考えてみると、退院するということは、もうお見舞いに来る必要がない、ということ。
彼女にとって、僕の入院は、公然と二人きりになれる貴重な時間だったのです。

「和美・・・」。

僕は、和美ちゃんを抱き寄せて、そっと髪をなでました。

それから。

眉にそって、中指をたどらせて。

まぶたをなぞると、和美ちゃんは少しせつなそうな表情になりました。

和美ちゃんの吐息のあたたかさが、僕の首のあたりにかかって

　和美・・・呼吸してる・・・

当たり前のことなのに
それがせつなくて。
僕は抱きとめていた腕に力をこめました。

和美ちゃんの左手は、毛布の上にありましたが
意識してなのか、そうではないのか
僕はその微妙な位置に、興奮を覚えていました。

　それからどれくらいの時間。

　どれくらいの愛撫。

僕たちにとって、それは永遠に近い時間に思われましたが、
時計にとっては、わずか数分間のことでした。

「もしね・・・？」

和美ちゃんが言いました。

「なに？」

「もし。体がなかったら、恋ってするのかな・・・」。

「どうして？」

「恋愛って。種の保存の本能でしょ？」

僕はちょっとだけ考えましたが

「うん。変わらないな・・・」

「そう？」

「うん。たとえば身体がなくっても、僕は・・・。和美が好きだよ」。

と、言いつつも

つい。

この子の将来がカババァ？と考えると

「霊長類なら、だけど・・・・」。

「？」

カババァが頭に浮かんだおかげで、ようやく冷静さをとりもどした僕です。

「それより、たいへんだったんだ。西条たちが駐在さん拾って来てさ」。

「拾って来た？駐在さんを？」

状況説明。

「西条くんたち、パトロールなんかしてるの？止めたほうがよくない？」

「うん。僕もそう思ってた」。

「駐在さんじゃなきゃ、逆に窃盗犯とまちがえられて捕まったりしたらたいへんよ？」

じゅうぶんに考えられます。

「そうだね。それに、あいつら。禁じ手使ってんだ」。

「禁じ手って？」


その日は「おかゆ」じゃない普通の病院食。
食後、僕は、入院後初めて部屋を抜け出し、駐在さんの病室をたずねました。

「あ。奥さん・・・」。

この人に動悸が激しくなるのは、ずっと同じ。

「あら。ママチャリくん。部屋出ていいの？」

「ええ・・・まぁ・・・。ダメなんですが、同じ風疹だし。愛ちゃんもかかってますし」。

「ああ。それもそうね」。

「そう言えば愛ちゃんは？」

「美奈子が来てくれて、家で見てるわ」。

「へぇ・・・美奈子さん、帰って来てるんですね」。

夢で見た通りになって来ました。

「駐在さんは？」

手招きする奥さん。

「まだ熱が下がらなくて。うなされてるわ・・・」。

あわれ駐在さんは、泉巡査の言う「見応えある発疹」で、あいかわらずうんうん唸っています。

「くそ・・・・とっつかまえてやる・ぅ・・・・」

「夢でも犯人追っかけてるみたいね。ふふ。。」
「仕事熱心ですね」。

「・・・・ママチャリぃぃぃ・・・・!!」

「ちがうみたいね」。
「そうですね・・・」。


※欄栗強化月間　また新しいキーボード買いましたが、イマイチ。


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