ぼくたちと駐在さんの700日戦争

ジェミーのやつ。

「なんだって越境するんだ？」

「越境って・・・かわいそうじゃない？」

「そうかな」。

「そうよ。君がいるからじゃないの？」

「え!?」

「おモテになって、けっこうですこと！」

「うーん」。

ジェミー、男で、おまけに風疹。ぜんぜんうれしくありません。

そう言えばもうひとり・・・。

駐在さんはどうしたんだろ？

確か、この部屋に入院するはず。

まぁいいや。来ないなら来ないでありがたい。



昼大騒ぎが続いたおかげで、夜中に熱が上がりました。
そりゃ信じがたいってほどに上がったのですが、

どうしてもナースコールを押す勇気がありません。
それこそ『真夜中のナースコール』ですから・・・。

西条のエロ本がこんなことまで影響しようとは・・・・。

眠るにも眠れず、うつろになっていると

　コッ！　

　　コッ！

窓になにか当たってる？

　小石だ。

誰かが僕を呼んでいるのです。


スリッパを履き、フラフラと、昼、お蝶婦人のいたバルコニーに出ると

「西条、孝昭？チャーリー？」

と、あともうひとり？あれは誰だろ？
なにしろ、もうろうとしているので、イマイチはっきりしません。

「おーーーーーい」。

「なにやってんだ？お前ら」。

すると西条くん
「駐在がぶったおれたみたいだからよーーーー」。

「え？とうとう倒れたの？」

「あー、俺らー、夜のパトロール行ってくるわーーーーー」。

「パ、パトロールってーーーー？」

「おお。駐在のかわりに泥棒とっつかまえてくる～～～～～♪」

そんなに楽しそうに・・・・。

こういうイベントが大好きな彼ら。というか、僕たちですが、
連続窃盗犯をつかまえよう、という魂胆のようです。

「でよ～～～～～。泥棒おびきだす手段、考えといてくれ～～～～～」

「わ・・・わかったーーーー」。

考えられるような状態じゃありませんけど。
部屋にもどりたい一心で引き受けました。

「お前ら、間違われて捕まるなよーーーーーー」

「そこいらの警察に捕まる俺らじゃねーってーーーーー」

うーん。まるであいつらこそ泥棒そのもの。

駐在さんは大丈夫でしょうか？

が、やがて地球がぐわんぐわん言い出して

「うわ～～～～自転してる～～～～～～やばい～～～～～」

　ブルッ！

襲い来る激しい悪寒。
悪寒と僕とときどきオトン。言ってる場合じゃないや・・・。

それでもまだナースコールをにぎれない僕です。

「和美・・・・。もうダメかも・・・・」

僕は和美ちゃんを思い浮かべようとしましたが

なぜか浮かんでくるのがジェミー。それもバイオニック版。

　なんで？

　ダイワハウス？

「か・・・和美・・・・」

でも浮かんでくるのはジェミー。

　？？？

う～～～～～ん・・・・・・・・

こらぁ！ウィンクすんなーーーー・・・・・

・・・・・

その後も和美ちゃんを思い浮かべようとするのに

・・・花ちゃん？え？なんで？

次から次に

・・・・・あ。澪ちゃんだ・・・・ひさしぶり・・・。

・・・・バナナちゃん・・・・おかえりー・・・。

次から次へと

・・・・竹内さん・・・・泉巡査？・・・・やっぱり大人だな・・・・

・・・早苗さんだぁ・・・・なぜかキャロライン・・・

・・・相模コーチ・・・酔っぱらってるし・・・

・・・・美奈子さん・・・

・・・・・・夕子・・・ちゃん？

・・・瑞穂。お前は出て来るな・・・

・・・・サチコ。お前、犬だろ？・・・しかも雄。

とうとう・・・


「お、奥さん！」



「なーに手ぇ握ってんだい！気持ち悪い」。

「え？あれ？カババァ？」

「朝っからカバはないでしょ!?　ほら！検温だよ！」

「あ・・・朝なんだ・・・・いつの間に・・・・」。

「ずいぶんと寝汗かいてるね。熱あがったみたいだね」

「え・・・ええ。ちょっと悪い夢見てて・・・・」。

「わかったから手ぇ離してよ。ホントに見境いないんだね。アンタは」。

「え・・・・・・！いや・・・・・！」

「照れるわ～～～～～♪」

うわ～～～～～～～～～～～
奥さんがちがう～～～～～～



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