ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「え～～～っと・・・・」。

和美ちゃんと2人きり、残された僕ですが、

ちょっとフォローのしようがありません。
たとえば僕が「アルパチーノを上回る男前」であったとしても、もはや手のうちようがない、というほどに威力があります。『ビー玉作戦』。

まさかまさか4歳の頃の悪戯が、こんなところまで尾を引こうとは・・・。

「あ・・・あのさぁ・・・和美・・・・」。

「え？」

「そのぉ・・・・」。

「で？ビー玉は発射できたの？あははははは」。

くぅ・・・・。

ところが、和美ちゃん。
「でも、なんか安心した」。

「え？」

「だって。昔っから変わってないんだな、って・・・」。

「和美・・・・」。

見つめ合う瞳。

絡み合う指と指。

一瞬、二人の間の時間が止まって・・・


「あっははははは！ビー玉～～～～～～～～」

だめか・・・・(泣)

そりゃそうだ・・・。


「そう言えば、みんなは大丈夫なのかな？」

なんとか話をそらす僕です。

「さぁ・・・・？千葉くんとジェミーくんは早退させられてたみたいだけど」

「千葉とジェミー？」

お。仲間増えるか？

「和美は？」

「あたしは小学校のときかかってるから」。

「そうなんだ？」

和美ちゃんが、誰からうつされたか気になってしまう僕でしたが

　クシュン！

外からクシャミの音が聴こえて

　あ・・・忘れてた・・・・。お蝶婦人・・・・！

　なんとかしないと・・・・。

「あ！そ、そうだ！和美、たのみあるんだけど・・・？」

「え？なぁに？」

「あのさ・・・その・・・読みたい本があるんだけど・・・本屋さん行って買って来てくれない？」

騙しっぱなし。心が痛みます。

「なんの本？」

「えっと・・・。あの・・・そう！『がきデカ』の6巻が出てるはずなんだけど・・・」。

「じゃ、明日来るとき買ってきてあげる」。

「い・・・いや。それがどうしても今日読みたいんだよ」。

「そうなの？」

「そう！絶対、今日読まなきゃいけないんだ」。

「どうして？」

「えっと～～～。明日まで生きられない気がして～～～～～」

死に際に『がきデカ』って、考えてみたらなさけない・・・。

「ヘンなの！でも、いいよ。わかった」。


＜がきデカ=山上たつひこ著。ギャグ漫画の歴史を変えた名作＞

和美ちゃんが出て行った直後に


ドタタタタ…！

「さ、さ、さ、さぶぅ～～～～～～！こここ、凍え死ぬ～～～～～！」

外から戻って来たお蝶婦人。

僕がベッドから出ているのをいいことに、さくっと布団に入り込みました。

「こ、こらこら！」

「少しあったまってから出てく～～～～～」。

毛布をかぶったまま身体を縮め、ガタガタ震えるお蝶婦人。

毛布が彼女の身体の形そのままに盛り上がっていて、それが奇妙に色っぽく見えて・・・

「花、ちゃん・・・？」

こんなに小ちゃいんだ・・・。

なんかかわいい・・・

「なぁに？ビー玉野郎」。

前言撤回。

くそ～～～～～～～

腹たつ～～～～～～！

そこへドヤドヤと、

「見舞いに来てやったぞ～～～～～～」。
「風疹だって～～～～？わははははは」。



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