<本日、15章フィナーレ。4話連続です>
「母ちゃん!なんでおこしてくれなかったんだよ!」
「え?だって、お前、今日は旗日よ?噴火の日だよ?」
キラウエア?
「噴火じゃねーよ!文化の日だよ!」
「そうそれ。とにかくフラッグデイでしょ?フラッグデイ」。
英語もにわかかじりしやがったな?
奇妙な方向に進化する元神童。
「そんなにあわてて。また駐在さんとこに悪戯しかけるのかい?」
「ちがうよ!」
「休みの日までご苦労なことね。そこまで行くと、お前達の悪戯も公務だね、公務」。
「ちがうっつってるだろ!?」
とにかく急がなきゃ。
「朝ご飯いらないから!」
「また出島?」
「ちがうっ!」
「出島は長崎だからね。今度はまちがっちゃダメよ~~~~」
「ちがうってば!」
出島か・・・・。あの日から早2ヶ月。
バイクをとばしましたが、ついたのは、僕が最後でした。
プラットホーム。
「おせーぞ。コラ!」
河野くんが怒鳴っています。
「悪い。原付だからさ」。
「久保のタカギ貸りてくりゃよかったのによ」。
「豚は、いいよ・・・豚は・・・・」。
今日は、竹内さんが長岡へと旅たつ日でした。
その久保くんは、ベンチに座っていました。
「久保・・・茶木さんは?」
「あっち」。
見ると、泉巡査につきそわれ、ホームの隅っこに茶木。
僕を見つけると、いかにも面倒そうに、片手を上げました。
僕も面倒そうに片手を上げて返します。
泉巡査は・・・
なぜかウィンク・・・。
これは返しませんでした。
「あ~~~~!無視したわね~~~~~!」
なんか騒いでますが、再び無視。
みんなから囲まれた竹内さん。
目の前には西条くんがいます。
その後ろにかけよる僕。
「竹内さん!」
「あ!先輩!」
「竹内さん・・・・。ホントに行っちゃうんだね・・・」。
「はい・・・。やっぱり、たったひとりの肉親だし・・・」。
彼女は、長岡から帰って来てから間もなく、父親の家へ移り住むことを決めたのです。
目も足も不自由なお父さんですから、その覚悟は並大抵なものではありません。
それでも彼女は、今の平穏な生活を捨て、父親の面倒を見ることにしたのです。
その決断に異論を唱えられる者はいませんでした。
西条くんも。久保くんも。そして茶木も。
「転校先、決まったの?」
「ええ。長岡市内の学校はダメだったけど、隣の栃尾市の高校に」。
栃尾市・・・?
「それって・・・地理にはめっぽう弱くて、天文に強い学校?」
「さぁ?」
にっこり微笑む竹内さんの表情に、迷いはありません。
遅くついた僕でしたが、それでも列車の時間までは、まだずいぶんとありました。
僕は、販売機でジュースを買って、久保くんの隣に座りました。
「話してこなくていいのか?久保」。
「ああ・・・。どってことねーや」。
「嘘つけ」。
「まぁ・・・西条には勝てたことねぇからなぁ。ケンカも・・・運動会もよ」。
「まぁ、そう言うなよ・・・」。
「けどよ。よかったよ。ゆかりの親父見つかって」。
「そうだな・・・」。
どこかふっきれたような久保くんです。
「お前。このクソ寒いのにファンタかよ。ゴールデングレープ?」
「え?ああ・・・。うん。ちょっとね・・・」
僕は、久保くんと、ちょっとだけ同じ寂しさを分かち合っていました。
もちろん、久保くんは知るすべもないわけですが。
西条くんは、ジェミーといっしょにふざけながら、竹内さんを笑わせていました。
一番つらいのは、実は彼であるはずなのに。
西条・・・。
やがて約束された最後の別れの時間がやってきました。
電車の窓から、竹内さん。
「みなさんも新潟来たら寄ってくださいーーー」。
「あー!必ず行くぞーーー」。
みんなが手をふって答えます。
「西条さん、久保さん! 大好きでした!」
「あ・・・」。
「おお・・・・」。
そして、列車が出る間際、
「おにいちゃん!どうもありがとうーーーーー。楽しかったーーーーー!」
「うん!元気で・・・・・」。
僕は手をふりながら応えましたが、となりで茶木も手をふっていて、お互いに顔を見合わせました。
そっか。こいつも兄ちゃんだった・・・。
やがて走り出した列車を、西条くんが追いかけました。
窓にはりつくように走り、駅員さんの制止をふりきりながら
「竹内ーーーーーーー!竹内ーーーーーーー!」
「西条さーーーん!ぜったい忘れませんからーーーーー!」
「竹内ーーーーーーーー!大好きだったぜーーーーーー!」
西条くんのお父さんが、竹内くんを見送ったホーム。
それとまったく同じ列車、同じ駅で、20年以上の時を経て、同じことが目の前で繰り返されています。
西条くんは、全速力でホームを走りました。
「竹内ーーーーーーーーー!」
その声を、列車の警笛が打ち消します・・・。
「久保・・・。お前はよかったのか?」
「あ?豚でもいなきゃかなわねぇよ。西条にはよ。はは・・・・」。
笑いながら泣くなよ・・・。久保・・・・。
<本日4話連続です>
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「母ちゃん!なんでおこしてくれなかったんだよ!」
「え?だって、お前、今日は旗日よ?噴火の日だよ?」
キラウエア?
「噴火じゃねーよ!文化の日だよ!」
「そうそれ。とにかくフラッグデイでしょ?フラッグデイ」。
英語もにわかかじりしやがったな?
奇妙な方向に進化する元神童。
「そんなにあわてて。また駐在さんとこに悪戯しかけるのかい?」
「ちがうよ!」
「休みの日までご苦労なことね。そこまで行くと、お前達の悪戯も公務だね、公務」。
「ちがうっつってるだろ!?」
とにかく急がなきゃ。
「朝ご飯いらないから!」
「また出島?」
「ちがうっ!」
「出島は長崎だからね。今度はまちがっちゃダメよ~~~~」
「ちがうってば!」
出島か・・・・。あの日から早2ヶ月。
バイクをとばしましたが、ついたのは、僕が最後でした。
プラットホーム。
「おせーぞ。コラ!」
河野くんが怒鳴っています。
「悪い。原付だからさ」。
「久保のタカギ貸りてくりゃよかったのによ」。
「豚は、いいよ・・・豚は・・・・」。
今日は、竹内さんが長岡へと旅たつ日でした。
その久保くんは、ベンチに座っていました。
「久保・・・茶木さんは?」
「あっち」。
見ると、泉巡査につきそわれ、ホームの隅っこに茶木。
僕を見つけると、いかにも面倒そうに、片手を上げました。
僕も面倒そうに片手を上げて返します。
泉巡査は・・・
なぜかウィンク・・・。
これは返しませんでした。
「あ~~~~!無視したわね~~~~~!」
なんか騒いでますが、再び無視。
みんなから囲まれた竹内さん。
目の前には西条くんがいます。
その後ろにかけよる僕。
「竹内さん!」
「あ!先輩!」
「竹内さん・・・・。ホントに行っちゃうんだね・・・」。
「はい・・・。やっぱり、たったひとりの肉親だし・・・」。
彼女は、長岡から帰って来てから間もなく、父親の家へ移り住むことを決めたのです。
目も足も不自由なお父さんですから、その覚悟は並大抵なものではありません。
それでも彼女は、今の平穏な生活を捨て、父親の面倒を見ることにしたのです。
その決断に異論を唱えられる者はいませんでした。
西条くんも。久保くんも。そして茶木も。
「転校先、決まったの?」
「ええ。長岡市内の学校はダメだったけど、隣の栃尾市の高校に」。
栃尾市・・・?
「それって・・・地理にはめっぽう弱くて、天文に強い学校?」
「さぁ?」
にっこり微笑む竹内さんの表情に、迷いはありません。
遅くついた僕でしたが、それでも列車の時間までは、まだずいぶんとありました。
僕は、販売機でジュースを買って、久保くんの隣に座りました。
「話してこなくていいのか?久保」。
「ああ・・・。どってことねーや」。
「嘘つけ」。
「まぁ・・・西条には勝てたことねぇからなぁ。ケンカも・・・運動会もよ」。
「まぁ、そう言うなよ・・・」。
「けどよ。よかったよ。ゆかりの親父見つかって」。
「そうだな・・・」。
どこかふっきれたような久保くんです。
「お前。このクソ寒いのにファンタかよ。ゴールデングレープ?」
「え?ああ・・・。うん。ちょっとね・・・」
僕は、久保くんと、ちょっとだけ同じ寂しさを分かち合っていました。
もちろん、久保くんは知るすべもないわけですが。
西条くんは、ジェミーといっしょにふざけながら、竹内さんを笑わせていました。
一番つらいのは、実は彼であるはずなのに。
西条・・・。
やがて約束された最後の別れの時間がやってきました。
電車の窓から、竹内さん。
「みなさんも新潟来たら寄ってくださいーーー」。
「あー!必ず行くぞーーー」。
みんなが手をふって答えます。
「西条さん、久保さん! 大好きでした!」
「あ・・・」。
「おお・・・・」。
そして、列車が出る間際、
「おにいちゃん!どうもありがとうーーーーー。楽しかったーーーーー!」
「うん!元気で・・・・・」。
僕は手をふりながら応えましたが、となりで茶木も手をふっていて、お互いに顔を見合わせました。
そっか。こいつも兄ちゃんだった・・・。
やがて走り出した列車を、西条くんが追いかけました。
窓にはりつくように走り、駅員さんの制止をふりきりながら
「竹内ーーーーーーー!竹内ーーーーーーー!」
「西条さーーーん!ぜったい忘れませんからーーーーー!」
「竹内ーーーーーーーー!大好きだったぜーーーーーー!」
西条くんのお父さんが、竹内くんを見送ったホーム。
それとまったく同じ列車、同じ駅で、20年以上の時を経て、同じことが目の前で繰り返されています。
西条くんは、全速力でホームを走りました。
「竹内ーーーーーーーーー!」
その声を、列車の警笛が打ち消します・・・。
「久保・・・。お前はよかったのか?」
「あ?豚でもいなきゃかなわねぇよ。西条にはよ。はは・・・・」。
笑いながら泣くなよ・・・。久保・・・・。
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- 15章 第86話 枯れる花咲く花(2)
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ドキドキしながら展開見守ってます。
映画から始まり、いつの間にやら毎日の更新を楽しみにしているオヤジです。
今日なんですね。何年前になるんでしょうか。
感慨深いですね。
一番乗り?
そうか・・・長岡に住むんですね。幸せになってね竹内さん。
いやー、せつない。。
幸せに暮らせるといいですね、竹内さんとおとうさん。
西条くん かっこいい 全員かっこいい 感動しました。
なんだか、温かくも甘酸っぱい駅のホームの別れでしたね…。
今日の文化の日に合わすなんて、憎いね
もう、30年近く前になるんじゃぁ
やっぱり、お父さんと一緒がいいよね 竹内さん ガンバレ
栃尾市の高校って村山君を引き回していた、あの女学生の集団をしっかり入れるとこなんざ、くろわっさん 憎いね
みんなステキです。
竹内さん、ガンバレ!
泣ける~竹内さんお父さんと幸せになって下さい。
転校先なんで富山なの(栃尾市)
そんなこと、竹内さんに聴かなきゃわかりません。
竹内さん、よく決断しましたね。
今までとはまた違う苦労があるかもしれないけど、今度は独りじゃないもの・・・。
お父さんもいるし、何かあったらどんな手を使ってでも駆けつけてくれる「お兄ちゃん」達がこんなにたくさんいるんだもの・・・・。
ホームを走る西条くんの姿を思い浮かべて、鼻の奥がちょっとつうん、と痛くなりました。
竹内さんの新しい暮らしに幸多かれと祈っています。
竹内さんすごい。
茶木の心境はどうなんだろう?
自由になったら、きっと長岡に行くんでしょうね。
寒いのにファンタゴールデングレープ…
切ないなぁ…
いよいよファイナル!
仕事しながら読みます。
切ない別れですね…。
いつかまた会えるといいな。
みんなに見送られて、竹内さん嬉しかったでしょうね。
やっぱり 西条 竹内様のこと好きだったんですね。
やっぱり長岡行きを決意しましたか。
苦労するからって反対の声もあっただろうに…
でも、これで西条くんの一番の願いの「不良から足を洗わないと」が叶ういいきっかけになりますね。
苦労は天涯孤独でもあるんだけど、肉親のいる生活の苦労を選んだ竹内さんは、きっと幸福になれる。
竹内さん、お父さんと仲良く頑張って!!
久保君、どう思ってるんだろうか・・・。複雑だな・・・。
茶木とかの思いも複雑だろうな・・・。
とにかくよかった。
泉巡査のウィンク、何故無視するのでしょう。
『内縁の妻』のはずなのに・・・。
お父さんと暮らせるようになったのは良かったけど、西条くんと久保くんと茶木のこと考えると切ないなぁ。
長岡に行くんだ、すごい決意ですね
幸せになってほしいです!
ママチャリくんも、"魔性の女"にちょっとだけやられちゃったのかな('-^*)
肉親は1人かもしれないけど、西条くんや久保くん、ママチャリ、そして茶木お兄ちゃん…
竹内さんには心強い存在がたくさんいますね!
だから長岡に行ってもきっと大丈夫!
遅刻をするなんていかにもママチャリらしいですね~
竹内さん、おとうさんと暮らすことを決めたんですね。強い子だなぁ。
西条くんも久保くんも、茶木くんも、竹内さんの幸せを願ってやまないのでしょうけど、寂しいですよね。
大人になったら、会いにいくこともできるだろうし。
竹内さんは北極星なくても道に迷わない子になってほしいものです(笑)
竹内さんお父さんのところへ行ったんですね
よかったぁ
そして西条君はかっこいいですね…
惚れ直しました
映画ならセピア色の西条くんのお父さんが走るシーンが重なるんだろな~。
と勝手に想像してみました。
竹内さん、すごい決断ですね。
その年でなかなか出来る事じゃないよな。
もう泣いとるわぁ……。
西条……もっと早く言ってほしかったよ。
……続きはこれから読みます。このまま終わってほしくない。西条……いつか会えるといいね……続きに望みをかけて……。
栃尾の高校のOBです。
よもや母校がこんな所で出てくるとは・・・。
竹内さんもこっちの方言に驚いたでしょう。
「~~そいがーて」
とても感動しました。
あっという間に別れの日になっていて驚きましたが。
目と足が不自由な、初めて会ったお父さんとの生活を決心した竹内様は、とても高校生とは思えない決断力で感心しました。それとも、若さゆえの決断力なんでしょうか…。私なら、二の足を踏んでしまいそうです…。
そして、彼女を応援し温かく送り出してあげるみんなも、とても素敵ですね!
竹内さん、西条、おとうさん
三人の様子が気になってましたが、
二ヵ月後・・・。
西条、久保、茶木、ママリャリ、竹内さんがそれぞれ想い
旅立ちを見送るみんな、それぞれの竹内さんの想いを持って、涙や笑顔で、思い出の同じ列車に乗って
人の気持ちって素直だと、気持ちいいですね。
ママチャリ、確かのぶくんのときも遅刻してなかったっけ?
竹内さんの前途に幸あれ
竹内さん、お父さんと一緒に暮らすんですね~。
二人のぎこちないながらも支えあう姿が目に浮かびます。
愛されて生まれたことにはちがいないかもしれないけど、
この父と母の基に生まれたがゆえに、竹内さんは16年も悲しい思いを抱えてきたんですよね。
それでも、父と共に歩む道を選んだ―――
もしママチャリ目線のストーリーじゃなかったなら、その辺の心理描写をもっと掘り下げて欲しくはありましたがw
竹内さんがどんな決断をしても、
誰にも責める権限はないと思います。
竹内さんと似たような境遇で、竹内さんとは異なる決断に踏み切った方もいるはず。
そのどれもが、誤った選択じゃない。
たまたま竹内さんは、父と一緒に暮らすことを選んだけど、それ以外の選択肢を否定してるわけではない。
そうですよねw
久保……
漢らしすぎる…(ノД`)
竹内さんの幸せを願いたいですね。盲目の父の元へ行く決断なんてきっと僕には真似出来ないでしょうし。
久保君・・・・
切ないなぁ・・・
マジで切なすぎる
久保~~~~
西条くんのお父さんと竹内さんのお父さん。
西条くんと竹内さん。
ベーゼルドンファーが導いてくれた、出会いと別れ・・
お父さんと一緒に暮らすこと、とても大変だと思うけど・・
竹内さんの幸せにつながるといいな・・