ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「え！姉ちゃんと血がつながってなかったら？」

「うん。孝昭ならどうする？」

「ナプキンおつかいに行かされないで済む」。

「いや・・・・そういう話じゃなくって・・・・」。

そういうことに弟使うか？

「とりあえず逃げる」。

参考にならない・・・。


「え？夕子と血がつながっていなかったら？なんだよ。それ？」

「いや・・・例えだよ、例え。井上ならどうする？」

「とりあえず、お前らから遠ざけるよ」。

やっぱり参考にならない・・・。

というか、グレート井上くんの場合、おんなじ。


「ところで、メダルの持ち主は、見つかってるか？」

「いや。あれっきりだ」。

「そうか・・・やっぱりむずかしいもんだな」。

「うん。特に女子ね。神社の名簿じゃとうていわからないよ。同姓同名とかやたら多くって」。

「うーーーん・・・」。

メダルの持ち主も、竹内さんについての手がかりも、ここでついえたかに思えました。


が・・・


グレート井上くんの部屋の窓から、外を眺めていた孝昭くんが、
「あ・・・。夕子ちゃん、喪服・・・なんで？」

「ああ。今日、午前中、法要があったんだよ」。

さすがご良家。普通なら、学校の制服でもいいところを、娘の夕子ちゃんもきっちり黒いドレス。

当然、

「夕子ちゃん、喪服姿もかーいーなぁ～～～～」。
「うんうん。未亡人だな。未亡人」。

いや。夕子ちゃん、まだ高校生ですけど？

「なに考えてんだ？お前ら」。

「え？喪服と言ったら未亡人だろ～～～～～～～」。

「バカ！不謹慎だぞ！」

不謹慎などという言葉の通じるメンバーではありませんが、

「あ！」
「そうだ！」

僕とグレート井上くんが、ほぼ同時に気づきました。

そして

「だよな！」
と西条くんも。

ん？

「西条はなにに気づいたんだ？」

「いや。夕子ちゃん、今日は下着も黒なんだな、って・・・」。
「おおおおおおお……」

「ばかやろーーーーーー!!」

「そうかぁ・・・。あの下に黒いブラ・・・」
「黒いパンティ・・・」

喪服にギャラリーいっぱい。

「見るな！バカ！」

「井上はなぁー。いいよなー。黒も白も見放題だから」。

「だから、妹の下着に興味はない！」

「そういうもんなのか？」
「そういうものだ」。

「もったいないな」。
「もったいなくない」。

「わけろ」。
「わけない」。

今回ばかりは興味を持って聴いていた僕でしたが、

「そっちじゃなくってさぁ」。

「ご記帳だろ？」
と、グレート井上くん。

「そう。記帳があるじゃないか！」


那智先生なら職業柄、告知が掲載されたはず。
だとすれば・・・・。


さっそく、仏事に強い森田くんを連れ立って、那智先生の奥様宅。

「え？那智の葬儀のときのご記帳？」

「はい。残ってますでしょうか？奥さん」

「ええ。もちろんですよ？」

「見せていただけませんか？」

「はいはい。かまいませんことよ」。

数百名に上る記帳。
それは那智先生の生前の人望を物語るものでした。

僕と森田くんは、メモを片手に、かたっぱしから列席者と、届いた弔電を当たりました。

「あった！」
「こっちもだ！」

弔電と合わせて、今までわかっていなかった3名の住所が判明。

そしてついに

「見つけた・・・・・！竹内勇三さん・・・列席してる・・・！」



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