ぼくたちと駐在さんの700日戦争

茶木の気性からすればチャンスは何度もありません。

今まで、茶木と出会ったのはすべて5時過ぎ。
茶木はなにかしら職についている、ということです。

竹内さんがらみですから、西条くんと久保くんは使えません。
茶木をにくんでいる孝昭くんもダメ。
駐在さんは管轄外。泉巡査は今度こそ補導するでしょう。


　そうなると・・・。


竹内さんの下宿先前。
たそがれにひとりたたずむ僕です。


腕時計が5時半をまわりました。

はたして茶木は現れるのでしょうか？


いや・・・茶木は今、僕の行動を見張ってる。それなら・・・・。


　ブロオオオォォ…

直6独特の低いエキゾーストノート。

　来た！ジャガーだ！

　間違いない！

ヘッドライトのまぶしさに手をかざした向こう側に。

大きな大きな影。

茶木です！


「お前・・・・・」。

「アンタを待ってた」。

膝！ガクガクするな！

「今日は・・・・ひとりか・・・いい度胸・・・だな」。

「ああ・・・」。

僕だって、無策でノコノコやってきたわけじゃありません。

が、

「あれ？」

おかしいな？

「あれほど嗅ぎ回るな・・・つってたのによ・・・死ねや・・・。お前」。

「い、いや。ちょ・・・ちょっと待って！」

あれれ？

「なにが待てだ・・・・ふざけんな・・・・」。

「い、いや。ちょっ、ちょっとだけ！」

あれれれ？

「あーーーーーーーーっ!!!」

「どうした？いちいち・・・うるさいぞ・・・」。

「ちょ、ちょい待ち！」

大慌てで横道を走って、バス停前。

「い、五十嵐さん！ちょ、ちょっと待って！なにしてんですか!?」

「おお。ママチャリ、暇だれしてたけど、おかげで駐禁一件つかまえられたわ～～～」。

「いや・・・その車は捕まえちゃダメですって！」

その車とは・・・

「やい！セイガクぅ!!テメェのせいで駐禁とられたじゃねぇかっ!!」

「す、すいません。早乙女さん・・・」。

必死に五十嵐さんに事情説明。

「あ？お前が呼んだのか？このヤクザ」。

「え～～っと。そうなんですよ。だから見逃してください・・・」。

どうりで現れないと思ったら・・・こんなところで駐禁とられてたとは・・・。
しかも五十嵐さんに。

「ダメだ。バス停前にこんなに露骨に停めてちゃなぁ。しかもこんなデカい車」。

確かにキャデラック、デカいけど・・・。

「そこをなんとか・・・・」。

が、根が真面目な五十嵐さん。こういう妥協をしてくれる人じゃありません。

早乙女さんは、さらに不機嫌。

「てめぇ！なんでマッポと一緒に呼びつけるううううううう!?」

「いやぁ・・・まさか両方来るとは・・・・」。

「んば、ばっきゃろーーーーーー！」

五十嵐さんは、
「こら！いいからサインしろ！バス停は5m以内駐停車禁止だ！」

「ヘ・・・ヘイ・・・」。

着実に任務をこなしています・・・。

「30分も停めてやがって！」

「すいやせん・・・」。

うそ？早乙女さん、30分も前から待機してくれてたの？

なんていい人なんでしょう・・・。なのになのに・・・。

あ～～～～～～・・・・。

早乙女さん・・・サインしちゃったよ・・・。

目尻に涙うかべて・・・。


もっと驚いているのは茶木です。
なにしろ本物ヤクザと本物警察官ですから。

「き・・・きさま・・・・俺を売るつもりだったのか・・・・」。

「いや～～～～～。そういうわけじゃ～～～～」。

「ころ・・・す・・・・」。

ああ・・・最悪・・・・。

が、五十嵐さん。
「お！そっちのジャガーも駐禁だな？」

「え・・・・？」

ご機嫌です・・・。交通課呼ぶんじゃなかった・・・。

「いやぁ。ママチャリぃ。よく呼んでくれた♪」

「てめ・・・・ェ・・・・」。

まいったなぁ・・・3すくみとかの状態じゃないよ。こりゃ・・・。

警察官と本物ヤクザと少年院仮退院。

「すごいとりあわせですね～～～～～」。

「てめーが悪いんだよっ!!!」

「す・・・すいません・・・」。


だって茶木、怖かったんだもん。


結局、早乙女さんは、ただ駐禁とられて帰所・・・。

なにしに来たんでしょう・・・？



※クリッキンぐ～～～


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