ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「だから嗅ぎ回んなつったろーが！」
孝昭くんは、ご機嫌ナナメです。

「いや・・・竹内さんのほうだってば」。

「同じことだ！」

孝昭くんは、やはり竹内さんともども、茶木を信用していません。
むろん、その判断は正しかったわけですが。

西条くん、
「そうそう。カタイカタイはひとりでするもんだ」。

「いや。2人だろ？」

「あっ！てめぇはーーー！和美といるからってーーー！」

しまった・・・！大失言。

「和美とカタイカタイしてやがんな!?」

目つきが茶木より怖いのはなぜ？

「し、してない・・・ってば」。

チョッピリだけ嘘。

「固い固い約束」。

え？そんな奇麗なオチ？？？
西条なのに？？？


「茶木は見境いねぇから。だから俺も逃げてたわけだからな」。

孝昭くん、
「け。西条もなさけねぇぜ！」

「そう言うな。俺がやりあえば、確実に年少もどりなんだからよー」。

「だからお前はあまいっつーんだよ！」
茶木と出会ってしまった僕は、孝昭くんのほうが、ちょっと正しく思えました。

「西条が聴きゃいいだろが？」

「え・・・竹内にか？」

「ああ。もとは竹内でカタイカタイしてたんだろ？」

あの・・・どうでもいいけど「カタイカタイ」から離れませんか？

「そ、そんなことねぇぞ！俺はたいていの女でカタイカタイ・・・」。

「やめぃ！」

しかし、西条くんが直接行ったら、もっと事態は深刻だったわけで。
むずかしいところです。

「もっと安全なとこに呼び出すしかない」。

「だって学校休みだし」。
「ポプラじゃマスターに迷惑かかるしな」。

「あ。あるじゃん！安全なとこ」。

→ → → → →

というわけで、竹内さんを呼び出した僕ですが、

「ママチャリぃ・・・。なんで駐在所で待ち合わせする？」

「いえ。ここなら安全だなぁ、って」。

「安全だが・・・。普通、駐在所はデートに使わんぞ？」

「やだなぁ。デートだなんて～。ちがいますよ～」。

「照れんなっ！そういう意味じゃねーからっ！」

「はい・・・」。

「で？席をはずせってのは、どういうことだ？」

「いやぁ。女の子来るんで。駐在さんいると怖がるでしょ？」

「ふむ・・・」。

「わかって・・・いただけました？」


「ママチャリ。なんで駐在所が駐在所って言うか知ってるか？」

「警察官が駐在してるから・・・・」。

「よくわかったな～～～～」。
「はい～～～～～」。

「バカヤロウ！駐在所は喫茶店じゃねぇっ！」

というわけで、あえなく追い出されてしまいました・・・。

が、竹内さんは、ここを目指して来るので、遠くへは行けません。
残暑の日差しはまだまだ強く、とても外に長時間いられそうもなく、

そこで、ようやっと抜群に涼しい居場所を見つけました。

なのに。

安住の地は長くありませんでした。

「・・・なんだって俺のスミレちゃんに乗ってる？」

「いや。この車ならクーラーついてるなぁ、って・・・」。

「どうやって開けた？」

「カギで開けました」。

「カギはどっから持って来た？」

「えーっと。駐在所の机のひきだしから」。

「なぁるほどぉ。よく知ってるなぁ」。

「はい～～～。我が家のように知ってます」。

「バカヤローーー！カギ返せーーーーー！とっとと降りろーーー！」

「鬼っ！」

「なんとでも言えっ！」

「パンク婆さんに祟られますよ？」

「さっさと降りろーーーーーーーー!!!」


しかし。

なぜか駐在さんといっしょに氷あずきを食べている僕です。

すでに待ち合わせ時間から、3時間が経過し、ヒグラシの声が聞こえ始めていました。

「フラれたようだなぁ？ママチャリぃ。わっはっはっはっは」。

「いえ・・・そういう相手じゃないんですよ」。

「あの施設の子か？」

「ええ。のぶくんと同じ」。

何度か下宿先にも電話をかけましたが、留守でした。

考えられることはひとつだけ。茶木が足止めした、ということ。

こうなると、おいそれと駐在所を出るわけにはいきません。
どこで待ち伏せされているかわからないからです。

しかたないので、駐在所で氷あずきを食べているわけですが・・・。

しかし、このまま駐在所にいるわけにもいかず、

「僕。帰りますね」。

「もういいのか？」

「ええ。もし来たら、帰ったって伝えておいてください」。

僕はそこから、自分の家ではなく、孝昭くんの家の方向に向かいました。
孝昭くんの家なら、大通り沿いですし、そこで孝昭くんと合流できればなんとかなります。


しかし・・・。

ジャガーだ・・・・。

ゆっくりとドアが開いて、降りてきた大男。
茶木です・・・。

　しまった・・・

眼光は前回より、さらに鋭く、常軌を逸している、と言ってもいいほどでした。

自転車を止めて、Uターンしようか悩みましたが、相手は車。

どうする？

が

「茶木。てめぇの相手はそっちじゃねぇぞ」。

孝昭！
心配して来てくれたのか・・・。


やおら振り向く茶木に孝昭くん。

「へへ・・・。茶木ぃ。テメェとは一度やりあいたかったんだ」


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