ぼくたちと駐在さんの700日戦争

しかし、僕は少し久保くんに気遣いが足りなかったかも知れません。

久保くん。
「う・・・・なんか腹が祭り囃子だ・・・」。

「はぁ？」

極度の緊張状態が続いたせいか、例によってハウドゥ・・・いや。この場合はピ～ヒャラドンドンになったようです。

「仮設トイレは階段下だぞ。久保」。

「そ、そこまでは・・・。祭り囃子、今、サビ部分だから・・・」。

祭り囃子にサビなんてあったか？

「じゃ。社務所の借りろよ」。

「そ、そうする・・・う・・・・」。

走り出す久保くん。
大丈夫でしょうか？サビに入っちゃってるのに。

しかし、久保くんにすれば、それほどのことを言っていた、とも言えるわけで・・・。
思えば和美ちゃんにも「告白」したわけですから無理もないのかも知れません。


さて。問題は、

残された竹内さんと、僕と和美ちゃん、という変わったシチュエーション。

気まずいことこの上なく、共通の話題もこれといってありません。

「えっと～・・・」。

が、

竹内さんも察してか、すかさず

「あの・・・あの～和美先輩は～～～」

「なぁに？」

「やっぱり・・・そのぉ、オッパイとか先輩に？」

「はああああ？」

こらこらこら！どっから引きずり出して来た！そんな話っ！

「いや・・・先輩ってオッパイ好きみたいだから」。

いや。キライじゃないけど、誰が好きって言った？
言うにことかいてこいつ～～～～！

そんなことを女子の後輩に知られてるって、どう考えてもおかしいわけで・・・。

「えっと・・・」。

和美ちゃんだって困ります。

「た、たいへんですね。和美先輩も」。

同情すんなーーーーーーっ！
元はお前の勘違いだろうがぁあっ！

「そのぉ・・・・。そういう場合って・・・」。

どういう場合だ!?

「やっぱり・・・その・・・与えたほうがよいのでしょうか？」

育児相談みたいな質問すんじゃねーよっ！
ばかやろーーーーーー！

「あのねぇ。竹内さん！」

と、僕がせっかく「大誤解」を解こうとしたところに


「よ～～～～～！」

やってきたのがチャーリーと千葉くん。

またややこしいのが・・・。


「なんでここってわかった？」

「いやぁ。階段で久保とすれちがってさぁ。聞いたらここにお前らいるって言うからさ」。

そうか・・・。久保、社務所のトイレ借りられなかったのか・・・。
階段下まで間に合うのでしょうか？ピ～ヒャラドンドン。

しかし、チャーリーたちのおかげで、とりあえず竹内さんの「オッパイほしいでちゅ」攻撃は避けられるわけで。

と、安堵しましたら千葉くん。

「人数ひとり多いなぁ」。
「いいじゃん。和美とお前、ふたりでひとつな」。

「なんのことだよ？」

「これだよ、これ。そこの出店で売ってたんだ！なつかしいだろ？」

と、出したのが




タマゴアイス。

ゴムの水ヨーヨーみたいなやつに、バニラアイスが丸くつめられたもので、先っぽをやぶってチューチュー吸うのですが

その行為は、まさしく「オッパイ欲しいでちゅ」状態であり、このシチュエーションでこれ以下はない、というおみやげです。


＜タマゴアイス=ゴム製の袋にバニラアイスが詰められたアイスクリーム。当時の子供たちに絶大な人気があった。現在も井村屋などから販売されている＞


「お前、好きだったろ？タマゴアイス」。

「・・・・・」。

「やっぱり～～～～～」。
と、竹内さん。

やっぱりじゃねぇよっ！

「ぼ、僕はいらない！」

「え？なんで？お前、大好きじゃん？」

「い、いや。別に好きってわけじゃ・・・」。

小学校の頃は大好きだったのですが。
この雰囲気でその質問は御法度。

「あ！わかった！お前、和美ので間に合ってた？」

「ば、ばか言えっ！」

「うらやましいなぁ。彼女いるやつは～～～」。
「そうかぁ。和美のチューチューかぁ」。

この「チューチュー」に、和美ちゃん真っ赤。

「やっぱり～～～～」。
繰り返す竹内さん。

ああ・・・・最悪・・・・。


和美ちゃんもタマゴアイスを受け取ったものの、手をつけられずにいます。

対して竹内さんは、平然と
「お、おいし～～～～～～～～」。

タマゴアイスをチューチュー音をたてて吸い始めました。

「あたし、初めて食べました！」

そうか・・・。竹内さんって、ずっと施設だったから・・・。

「だろ？手であっためて溶かすのがコツなんだよ」。
と、チャーリー。
タマゴアイス博士。

続けて、
「和美もそろそろ食べたほうがいいぞ？溶けすぎると手に負えなくなるから」。

「あ・・・ありがと・・・」。

しかたなく、和美ちゃんもタマゴアイスを口に含みました。

その口元が可愛くって、つい見とれていると、

今度は千葉くん。
「でも、これってどう考えてもコン○ームだよなっ！」

吹き出す和美ちゃん。

「あ～～～、もったいねぇなぁ。和美ぃ」。

「色っぽかったのに」。

それが目的かっ!?



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