ぼくたちと駐在さんの700日戦争

美奈子さんと雷雨の女の子がどこか似てる？

「ええ。雰囲気だけですが」

「あ、あんな美人だったわけ？」

「いえ。そうじゃなくって。雰囲気ですよ、雰囲気」

「美奈子さんの雰囲気っていうと・・・・・・」

「ブラがダブルホック」
「それは雰囲気じゃないぞ？西条」

「下着がベージュ」
「なんだって？見たのか？西条！」
「ウソ！いつの間に！」

「いや。見てないが美奈子さんはベージュだ！」

「なんでわかんだよ！」

「フッフッフ。君らおこちゃまには備わっていないだろうが、わたしには、そういう能力があるのだよ」
と、豪語すると目をつぶりました。

「ただの妄想じゃん！」
「なにが能力だ。このバカが！」

「題して”ひと目見たら誰でもオカズ”機能！」

「だから妄想じゃん」
「それくらい俺にもあるぞ」
「うん。ある。たいていの男子が持ってる気がする」

なのに西条くん

「ほら！ほら！ベージュ！」

ほら、とか言われても見えません。

「え？今、見なかったのか？バカだなぁ」

バカはお前だ。

「井上は見たのかな？」

「さぁ。西条とは観点が違うから、見てないと思うぞ」

「バカな井上」

だからバカはお前だ。西条。


ここで孝昭くん。
「そう言えば、井上の行く予定だったNSPのコンサートチケットあんだけど。お前行かない？好きだろ？」

僕をつかまえて言いました。

＜NSP=72年、ヤマハのポピュラーソングコンテストからデビューした岩手県出身の3人組みのフォークグループ。『夕暮れ時はさびしそう』が大ヒットし、当時の女子高生に圧倒的人気があった＞


「え？NSPのコンサート？Y市に来るやつか？」

「ああ。あいつが頼むから、ダフ屋の兄ちゃん脅して仕入れてやったのによ。星の観測すっから行けないって、断って来たんだよな」

「ふーん。行ってもいいけど。お前も行くのか？」

「まさか。俺は行かねぇよ」

「なんだぁ。ひとりじゃやだな」

「ひとりじゃねぇから。2枚仕入れてっからよ。必ず行けよ」

「いいけど・・・。いつ？」

「明後日。金曜の夜だ。必ず行けよ」

必ず？？？

→ → → → → →

僕は、もう1枚は、てっきり妹の夕子ちゃんだろう、と、踏んでいたのですが・・・。

「え！お姉さんなんですか!?」

現れたのは、孝昭くんのお姉さん。

「おー。悪いか！スケ番がNSP好きじゃ悪いかよっ！」

そうか・・・。孝昭のやつ、井上のためとか言いつつ、実はお姉さんに脅されて・・・。
しまった・・・。

「いえ・・・。そんなことはありませんが・・・。他に誰か好きな子いなかったんですか？女子校なんだし・・・」

「バカヤローーー!!!」

どうでもいいけど、駅で大声出さないで・・・。

「あたしゃ今年から番はってんだよっ！NSPが好きなんて言えるか？」

さっき自分で「悪いか」って・・・。

「スケ番は永ちゃん好きって相場が決まってんだよ！」

「そういう・・・もの・・・ですか・・・」

「それを”呼び出したりしてゴメンゴメン”なんてーの聴いてたら威厳が保てないだろうが！」

じゃぁ聴かなきゃいいのに・・・。

「ァア〜〜ン？今、なら聴かなきゃいいのに、って思ったろ！お前！」

「いえ・・・けしてそんな・・・」

スルドイ！

「好きなもんは好きなんだ。しょうがねぇだろ！」

「はい・・・僕も好きですから。わかります・・・」

「え？ホント？だよな～～～～。いいよな～～～～。NSP！特にベースの平賀さんが！」

突然ごきげんになるお姉さん。

「そう・・・ですね・・・僕はギターの中村くんがいいと思ってま・・・」
「いいよなっ！ベースの平賀さんがっ！」
「ええ・・・。だから僕はギターの中村・・・」
「いいよなーーーーーっっ！ベースの平賀さんがぁあああああ！」

「はい・・・ベースの平賀さん・・・。最高です・・・」

今からベースの平賀さんファンになりました・・・。

こんなのとコンサートに行っても楽しいわけありませんので
「やっぱり、誰か他のかた誘われたほうが・・・」

「なんだとぉおお？あたしとコンサート行くのはいやだとでも？」

「いえ。そういうわけじゃありませんが・・・」。

「お前。女もんのパンツ欲しいっていうから買ってやっただろーがーーーー！」

「いや・・・。お姉さん・・・そんな大声で・・・」

待合室の高校生たちがいっせいにこっちを見ています。

「小股の切れ上がったセクシーパンツ、やったろ？こ～～～ブイってやつっ！」

ジェスチャーすんな～～～～！

「あああ・・・買って・・・買っていただきました・・・はい！ブイ・・・」

「お前、あれかぁああ？あれ毎晩自分で履いて鏡に～・・・」

「す、すいません！コンサート、行かせて！行かせていただきます！うれしいなぁ！NSP！」

すごい脅迫・・・。

「とにかくよ。学校のヤツと一緒ってワケにゃいかねぇんだ」
と、今度は小声でお姉さん。

「あー。はい。永ちゃん好きってことになってるんですよね？」

「おお。スケ番はやっぱロックだろ、ロック」

「じゃ、ひとりで行けば？」

「お前、女モンのパンティ毎晩～～～～」

「す、すいません！ご一緒させていただきますとも！」

「最初っからそう言えばいいんだよ！楽しみだよな。ベースの平賀さん」。

「あ～～～。楽しみですね。ギターの中村さんも・・
「平賀さんっっっ!!!!!」

「平賀さんが・・・」

泣きたいほど楽しみ・・・。



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