ぼくたちと駐在さんの700日戦争

え～。京本政樹さんです。
コメントに「そんなやつ知らん」という、ジェネレーションギャップがあったので写真掲載。
実は、京本政樹さんは、1979年の俳優デビューなんで、この物語の時代にはまだアマチュアシンガーソングライターでした。
最初は、仲雅美って書いてたんですが、そんなやつ誰もわからんだろーなー、と思いまして。
ということで、少し現代に近づいたつもりだったのですが。まあいいや。とにかく美形。



『マスカレード』第18話 幸福の残骸(4)

借りて来ました！

なにって吸引機。商品名『バストキュート』。

怪しい通販で買うのは、どうにもはばかられたので、ともだちに恥を忍んで貸してもらった。
ともだちは、そこそこの胸をしていたが、元は姉のもので、その姉に関して言うなら、それなりの効果があったらしい。

うん。これでわたしもナイスバディの仲間入り？
まぁ。お尻もちっちゃいけど。そっちはいいや。
待っててね！井上クン！

まずこの箱がいいね。箱が。
たぶんアメリカ人なのだろうが、いきなりビキニで、どか～～～ん、だ。
この人は、絶対これででかくなったんじゃないな、ってわかっていながら、どうしても惹かれてしまう。

で。わくわくと蓋を開けた。

　おお！これか！

なんか便所キュッポンの先っぽみたいなプラスチック製のカップ2種類と、それにつながる本体。実に簡潔明瞭。

どれどれ。説明書。

「効果には個人差があります」

お約束だね。お約束。
いいんだ。1cmでもおっきくなれば立派なもの。

で。使用方法だ。

1.カップを胸にかぶせる
2.強弱を選ぶ
3.スイッチを入れる

それだけ？それだけ？

いや、

4.使用後マッサージすると効果的です

よかった。これが「マッサージしてもらうと」だったらどうしようかと思った。
そんなこととても人に頼めない。

わくわくわくわく。

この姿。とてもバースデーギャラリーには載りたくないっていうか、リクエストすんなよ、っていうか。

スイッチ～～～オン！

　ブ～～～～～～～～～ン

すると。

おおおおおおお！あの弱々しい放物線が！

スイッチオフ！

もとどおり(泣)

あたりまえか。始めたばっかだし。

再度スイッチオン！

　ブ～～～～～～～～～ン

その間、暇なので、説明書のすみずみまで目を通す。

「30分以上、連続使用はしないでください」。

30分かぁ。長いなぁ。

「1ヶ月ほどの連続使用で、効果がみられない場合・・・」。

い、一ヶ月も？こんなのを？

定格出力120W/100V
強/120W/h　弱/60W/h

まぁ、電球みたいなもんか。

120W/h。ワットというのは仕事量の単位なのだから・・・。

まてよ？

わたしは、かわいらしい胸にけなげに吸い付いている透明のカップを見る。
そこからビニールパイプで本体へと繋がっているわけだが、120Wというのは、いまウンウンうなっているあの機械本体の仕事量だ。

そうだ。この本体が1時間で120Wぶんの仕事しかしないから悪いのであって、もっと仕事量を増やしてくれればいいことだ。
それならもっと短時間で高い効果が得られるはず。

あったまい～～～～～～。

ということで、わたしが連れてきたのは、なんとこいつの5倍もの仕事量を誇る「掃除機」。その名も『風神』。
なんと600Wだ！
この弱っちぃ機械の5倍だよ！5倍！
名前がいいよね。「風神」。神様だもの。

というわけで、わたしはカップのパイプをはずすと、その上から掃除機のホースをかぶせた。
太さは合わないが、隙間がなければそこは真空となり、自然、カップの中の空気を吸い始めるはず。
念のためにガムテープで目張り。と。

うん。カンペキ！

これで準備はオッケー！あとは風の神様にわたしの胸はまかせた！

スイッチ～～～オン！
たのむぞ「風神」！

　ズオオオオオオオオオ

ほらね。音からしてちがう。いかにも「仕事してる！」って感じ？

だったのだが
カップをかぶせたとたん

「いでええええええええええええええええ!!!」

それはもはや吸ってるとかいう感覚じゃない。
確かに胸はカップいっぱいになってるのだが、なんか血管がういてきてる！
こりゃやばい！

とにかくはずさないと！って、わ～～～、はずれない！
ピッタリ吸いついてはずれない！
ひっぱるとなお痛い！

あ。そうか、スイッチ、神様のスイッチ切ればいいんだ。

というところで

ドンドンドン！

「ねーちゃん！どないした？」

げ。弟！

「な、な、なんでもない！来るな！」

「そやかて・・・・」。

「いーから！だいじょうぶだから・・・！って、いでえええええええ！」

「ほんまにだいじょうぶ？」

「だだだだ。だいじょぶ、だいじょぶ・・・いててててえ」。

その間も

　ズボボボボオオオオオオ

これ以上に吸引不可能となっている掃除機は、すでに音質を変えている。
わたしのかわいい胸は、なんか紫っぽく変色・・・おわぁぁぁぁあ

「な、なんの音？」

「いーから！」

プチ。

　フュイイィィィィ・・・・ン

ポンッ！

ようやくスイッチを切って、おおあわてで上着をはおる。

「どないしはったん？」

ふう・・・ギリギリセーフ。

「え？お掃除してたのよ。お掃除」。

風の神様のホースを持って、さかんに掃除のフリをするわたし。

「ふうん。けど、ねーちゃん、痛いって・・・」。

「え？画鋲ふんづけたのよ～～～」。

「そか。ほならええけど・・・。ところでねーちゃん」。

「ん？なぁに？」

「その掃除機。変わったブラシだね」。

気づかれた・・・(泣)。



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