ぼくたちと駐在さんの700日戦争

特訓につぐ特訓。激戦につぐ激戦。

2週間ほどたった頃、ようやく、わたしも、キンタの息を上がらせるくらいにはなった。

そのすさまじさを最初に物語ったのは道具だった。

わたしのナギナタが折れたのだ。


そいじゃぁ、ってんで新しい物を買い求めにきたのだが、

「キンタ先生。つきおうてもらわなくってええて」

「いやいや。今日は私もついでがありますから。見立ててさしあげますよ」

「ふ～～～ん。そやったらもっと離れてあるきはって！わたしには・・・」

「はいはい。許嫁がいるんでしょ？」

わかってはるやん。

ああ・・・それにしても許嫁。
ずいぶんと会うてないけど、わたしのこと覚えているんだろうか？

いやいや。あのときお互いにかた～～～くかた～～～く誓った。

　「ちゃんとお嫁にもろてくれはる？」

　「うん！もちろん！早く18歳になれるといいね」。

そう。約束の日は18歳。

あと2年。

わたしは彼の成長した写真を幾度か手にしていた。
高校生になった彼は、わたしの想像よりはるかに大人っぽくなっていて、そして

　かっこえ～～～～～～

これがねぇ。アブドーラザブッチャーみたいになってりゃ考え直しもするけど。

とにかく

　かっこええ～～～～～～

だから、というワケでもないんやけど、

わたしもずいぶんと女に磨きをかけたつもりや。
自分で言うのもなんだけど、そらもうピッカピカやし！
難点は胸が中学校からまったく成長しなかったことくらい。
これだって毎日牛乳でものんで、マッサージ続けてりゃ、いずれはドド～～～ンと・・・。

　だいじょぶやろか・・・。

あと2年しかあらへんのに・・・。

なんとか、こう、女センセみたいにバ～～～ンと。ド～～～ンと

「花さん。公衆の面前で、なに胸もんでるんです？」

「あああああああ！」

し、しもうた・・・。つい・・・。

「こ、こっち見んなー！スケベ！」

あ～あ。胸よ胸。
早くおっきくな～れ。
打ち出の小槌みたいなの、あらへんかなぁ・・・。
騙されたと思って、友達が通販で買ったという吸引機借りてみよか・・・？



「あれ？女センセ？」

武具屋について驚いた。

「あら。花ちゃん」。

「ど、ど、どどど、どーも」。
キンタ、アンタは挨拶しなくってええの。
なに顔赤くしとる？

「女センセ。なんでここにおるん？合気道は道具つかわへんよね？」

「ああ。今日はね。新しく入る子の道着をね」

なるほど。そゆことか。

「あの、あの、あの～～～～～」。

あれ？キンタの様子がおかしい。
いやぁ。ムリムリ。女センセとあんたじゃ、釣り合わへん。

が、どうも2人の間の空気がヘンや。
少なくとも初対面でないのはわかっとるけど。

「か、買い物終えたら、その～～～。一緒にお茶でもどうですか？花さんもいっしょに」。

なんや！そのいかにも「ついで」は！
メインはわたしやろ？こらぁ！

「いいですよ？」

女センセも。こないな陰部の言うことを・・・。


茶店を選んだのは女センセやった。
さすがにセンスがええわ。
シック言うか。とにかく大人な感じのお店。

「花さんも好きなもの頼んでいいですよ？」

あったりまえや！
そのツラで美女2人に囲まれよって！
も～～好き放題頼みまくってやるよって覚悟せい！

「じゃ～～～、バナナパフェとチョコパフェと苺パフェと・・・」

女センセ。
「フフフ。花ちゃん。食欲旺盛だね」

ふん。なによ。女センセまで。
乳脂肪分とれば胸でっかくなるかもって乙女ごころ、Cカップの先生にはわかるまい。

それにしても、なに？この大人なカップルみたいな空気！

って・・・。わたし。嫉妬しとる？女センセに？

いやいや。わたしにはちゃんと許嫁が。


それにほら。
こんなオシャレなお店でも、わたしったらすっかりフィット！


　ぐぇぷ。。。。。。。。


「ほら～。花さん、パフェばっかそんな頼むから～～～」。

「ほっといてんか」

陰部は黙っとき！


　映画公開！へ→
　マスカレード第7話へ→

▲目次へ

---

関連記事

• 番外編『マスカレード』第7話 飛べない翼(3)
• 番外編『マスカレード』第6話 飛べない翼(2)
• 番外編『マスカレード』第5話 飛べない翼(1)