ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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第9話 西条!武器をとれ!そして立て(4)

「ゆきー!テメェ、覚えてろよ!」

青柳たちが、捨て台詞を言いながら逃げて行きます。

「おー。いつでも来い!まがりチ○ポ!」

「え!?ちっ!ちっくしょう!な、なんで知ってやがる?」

なんで知ってるんでしょう?

「ゆきねえ・・・」

涙と泥で顔をグシャグシャにした西条くんが、ゆき姉に掴まっています。

「だいじょぶだったか?西条」

西条くんは、コクコクとうなづきました。
が、実際は、あちこちに打撲と擦り傷があり、とうてい大丈夫という状態ではありません。

「どこやられたんだ?見せてみろ」

ゆき姉は、カットバンを1枚とりだすと、西条くんの顔の傷に貼ってくれました。
もう、何度めのことでしょう?

「西条。お前もさー。少しは強くなんないとな」

「ウン。ウン」

泣きながらうなづくものの、小学1年生が、5年生それも複数に勝てるわけなどないのであって。
それは、ゆき姉も、もちろん分かっていることでした。

青柳たちの下級生イジメは、執拗で、ずいぶんと長いこと続いていました。
先生に言いつけようが、ゆき姉がコテンパンにこらしめようが、改心する気配がありません。

西条くんは1年生ですから、ゆき姉や青柳より下校時間が早いのですが、土曜日だけは違いました。
全学年が一斉に午前授業で終わります。
西条くんは、青柳と出くわす可能性の高い土曜日が大嫌いでした。
このため、いつも、ゆき姉が出て来るのを隠れて待って、一緒に下校していたのです。

ゆき姉に手をつながれた西条くん、
「ゆき姉。練習すれば、ゆき姉みたいなキック、できるようになるのかな?」

「ああ。できるぞ。西条、才能あるもん。がんばればアタシ以上のキックできるよ」

「ホント?」

実際、ゆき姉のキックは絶品でした。それは鳥が舞うように美しく、しかも正確です。
この強烈なキックに青柳たちはすこぶる手をやいていました。


「・・・・でな。2学期も終わるかってときに、ゆき姉、とうとう爆発しちゃってな。青柳たちを立ち上がれないとこまでうちのめしたんだ。アイツらのパンツまでとりあげてな。おかげで、アイツら、すっかり大人しくなってさ。それからしばらく安泰な日が続いたんだ。思えば、あの期間だけだったよ。小学生らしい、楽しい生活送れたの」

西条くんの話は続きます。


やがて西条くんは2年生になり、ゆき姉は最上級生の6年生に。当然青柳も6年です。
西条くんも、道場に通って2年目。1年の時よりは、ちょっとだけ強くなっていました。

────そんなある日のことです。

「おい。西条。待てよ」

青柳が3人の仲間を連れて、西条くんの前に立ちふさがりました。

「な、なんだよ!やるのかよ!」

西条くん。習いたての空手の構えをしました。

「なんだ?今日は”ゆきね~”はないのか?」
「こいつ、構えしながらふるえてやんの」
「あははははは」
青柳たちがはやしたてます。

「もうなぁ。俺たちも柔道習ってっからよ。ゆきにやられっぱなしじゃないぞ」
「ウソだっ!ゆきねえ、強いもん!オマエらになんか負けないもん!」
反発する西条くん。

「いくら強くても、所詮女は女だからな。今日決着つけてやるからよ」

確かに、青柳たちは半年前と比べてずいぶんと大きくなっていました。
いわゆる「育ち盛り」で、この時期に女子と男子の体格差はたいてい逆転します。

「4人もなんてずるいぞ!」

「うっせーなー。ケンカにずるいはねーんだよ。いいからゆき、呼んで来い!いつもみたいに”ゆきね~”ってな!」

「イヤだっ!」

「なんだと?このガキ。さからうのか?」

「まぁいいや。いずれにせよ、ゆきがここ通るのは確実だからな。こいつこづいて待ってりゃ来るだろ」

西条くんは、すぐ道路沿いの家の新築現場にひきずりこまれました。


「・・・・青柳はさぁ。よその学校のヤツ応援につれてきてたんだ。同じ道場のダチらしかったが。こいつもろくなヤツじゃなかった。鹿目(かなめ)って呼ばれてたな」
「ゆき姉は来たのか?」
「まぁ。通学路だからな。もう俺は、その頃、チキンっていうやつをやられててな・・・・。こうさ、こづきまわして倒れたり座ったりする前につかまえてな。まぁ、バスケットのパスみたいなやつを人間でやるんだよ」
「・・・・ヒデェな。そりゃ」
「ああ。2年生相手だからな。最低だな。やられるほうはそのうち疲れちゃうんだよ。泣いてるから呼吸も荒いしな」


やがて西条くんの声を聞きつけた下校途中のゆき姉が現れました。

「青柳ぃ!こりないやつだなオマエ!」

「お!待ってたぞ。ゆき。今日はお前にケリつけてやるからな」

「蹴られるの間違いだろ。バカ。西条、だいじょうぶか?」

西条くんはうなづきましたが、例によって「大丈夫」とは、ほど遠い状態でした。


青柳たち4人と、ゆき姉の壮絶な戦いが始まりました。
確かに柔道を習っていたというだけあって、いままでの青柳たちとは、少し違っていました。
体格もよくなっている上に、多人数です。
ゆき姉も、少しは苦戦しているようでしたが、やはりゆき姉のキックの前には、まだ彼らは敵ではないようでした。

しかし。

「ゆきぃ。足あげると、パンツ丸見えだぞ」

「なっ!?」

この言葉で、ゆき姉がひるみました。

そうです。ゆき姉も13歳。
5年の時とは違い、年頃になっていたのです。

その後のゆき姉のキックは精彩をかきました。
この瞬間を青柳たちは見のがさなかったのです。

2人がゆき姉の背後をとると、がんじがらめに押さえつけました。

「ゆき。ここまでだなぁ。お前も」

「くそっ!」

ゆき姉は3人がかりで押さえつけられました。こうなると体格の差は歴然。ゆき姉は身動きがとれません。

「ゆきー。今までは、ずいぶんとやってくれたよなぁー。2度と逆らえないようにしてやっからよ」

ゆき姉は観念したかのように黙りました。
時おり羽交い締めをとこうとしますが、無駄な抵抗でした。

「そうだな。まず、パンツ見せてもらおうかな。ずいぶんと気にしてたようだからな」

「くぅっ」

「パンツなんて言わねーで、脱がせちゃえばいいだろ。そんなもん」
おさえつけていた鹿目が言います。

これを聴いていた西条くんが初めて抵抗しました。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
叫ぶと、抑えつけていた鹿目に噛み付いたのです!

「イ、イテテテ!このガキィ!」

激昂した鹿目が西条くんをふきとばしました。

2年生でも小柄な西条くんは、思いっきりとばされ、新築の土台にしこたま頭を打ちつけました。


「ゆき。今日はさぁ。カメラも持って来てんだ。俺ら」

さすがに狼狽するゆき姉。

「西条、お前も見たいだろ?ゆきねえのアソコ」
「ぎゃははははは」

下品に笑う青柳たち。

幼い西条くんは、どうしていいかわからず、その場に倒れこんでいました。




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コメント

鹿目発見!
2007/03/06(火) 10:33:08 | URL | レインビー #-[ 編集]

>レインビー画伯
そうそう。こいつです。
2007/03/06(火) 10:56:15 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]

鹿目発見!!( ̄ー+ ̄)


っと大喜びしたのに……
スデにコメが……
この感情の起伏……表現不能……

っか違うし!!
私は6章復習しただけだし!!
目頭熱いのだって西条くんの過去に感動しただけだし!!



感動ぉ……した………だけですから……
2007/04/22(日) 18:32:44 | URL | ぷれっそ #-[ 編集]

おおー

2周目にして鹿目発見!&初カキコ

2007/04/24(火) 00:00:04 | URL | はぐれニダ #-[ 編集]

>ぷれっそさん

鹿目発見。
おめでとうございます。
2007/04/24(火) 00:24:00 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]

>はぐれニタさん こんなところで初登校。

目立ちませんよ?

鹿目発見、おめでとうございます。
2007/04/24(火) 00:25:02 | URL | くろわっ #NB/JWtcg[ 編集]

ヾ(*`Д´*)ノ゙行け-ッ怒れ-ッ!サイジョー!!
2007/10/11(木) 05:55:23 | URL | @て●。●つ #-[ 編集]

鹿目発見!!
2007/10/26(金) 21:22:22 | URL | asd #-[ 編集]

ううう・・・悔しいっ!




ヽ(≧Д≦)ノ ウワァァン!!
2008/02/21(木) 08:08:23 | URL | ねぎ #7LgpsTjw[ 編集]

ゆき姉はやっぱり乙女なんですネ。
私の昔の中学に青柳君と言う子がいましたが、その子も空手を小学校時代から、習っていましたが、決していじめっ子ではなかったですヨ。
ガンバレ西条!!!!
2008/05/15(木) 15:41:28 | URL | 経理のおばん #5uDVk7ho[ 編集]

 こうゆうことする鹿目とかを、許せなくなるのは俺がまだガキだからですかねぇ…けど、胸くそワルいっす
2008/05/23(金) 23:14:40 | URL | しょうた #QT1DJpJM[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008/07/29(火) 15:44:36 | | #[ 編集]

鹿目発見!!!!
2008/08/22(金) 14:30:40 | URL | 名もない読者 #31xwlTfM[ 編集]

鹿目発見!!!!!!
2008/09/06(土) 23:41:05 | URL | hora #.2F/.Abg[ 編集]

小6だったら13歳わありえなくないすか
2009/08/19(水) 15:18:46 | URL | おっち #a2H6GHBU[ 編集]

鹿目発見!・・・・だけど、何故「まがりチ○ポ」知ってるんでしょう?
2010/01/29(金) 22:45:16 | URL | 覚醒軍人 #72V9sLdo[ 編集]

青柳達、小学生のくせにえげつない。
2011/02/17(木) 16:15:09 | URL | P子 #-[ 編集]
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