ぼくたちと駐在さんの700日戦争

打ち上げ会場であるポプラは、店外からわかるほどの盛り上がりようです。

僕は複雑なおももちで扉を開きました。

　ドッ

扉1枚とは言え、さすがに中の賑やかさは外の数倍。
僕は、少々そのやかましさに圧倒されました。

しかもそこには

「は、はな・・・お蝶夫人!?」

と。スケ番グループ。

「な、なんでここに？」

「はぁ？出演交渉に決まってるだろ？」
部下？
えらく化粧の濃い女が殴るような口調で言いました。

「いや・・・。出演交渉ったって・・・」。

裁縫の実習に行くって言ってなかったか？

「あのなぁ。こう見えてもお蝶夫人は文化祭の実行委員長さま・・・」

「よさねーか！」
花ちゃんが声を荒げて遮りました。

　いま・・・。実行委員長って・・・言ってなかったか？
　北女はスケ番が文化祭とりしきってんのか？


「とにかく、今日んとこは盛り上がろ～～～～～～！」

いや。盛り上がろうって・・・。花ちゃん・・・。人の宴会に来て・・・。

が

「お～～～～～～!!!」

メンバーはすっかりスケ番グループと意気投合しているのでした・・・。


「じゃ、ボーカルさんもやってきたとこで～～～！シャンパンあけましょ～～～！」

って、ほんととりしきってるし・・・。

「マスター、シャンパンって・・・アルコール・・・」。

するとマスター。
「いや。なんかそこの女の子たちが持ち込みしたんだよ。シャンメリーだから。大丈夫」。

「あ、シャンメリーか」。

女の子なんて立派なもんとちがいますけどね。こいつらは。

＜シャンメリー＝シャンメリーは、日本シャンメリー協会の共通商標で特定の会社のものではない。当初ノンアルコールシャンパンとして売り出したが『シャンパン』は、フランス・シャンパーニュ地方でとれたものしか名乗ってはいけないことになっており、苦情が入ったことから『シャンメリー』の名をつけ共通とした。アルコール分は0％～3％。ワインを含有するものは4％～5％のものもあった＞

　ポンッ！
　　ポンッ！
　ポンッ！

次々と開けられるシャンメリー。

　ポンッ！
　　ポンッ！
　ポンッ！
　　　ポンッ！

いったい何本もってきてるんだ？

「そんなとこ突っ立ってないでさっさと座れよっ！ボーカルッ！」

「はいはい・・・」。

どうでもいいけど、シャンメリー、こっち向けないでくれる？おっかないから。


僕の席は、仲間たちが和美ちゃんの横を空けていてくれました。
僕の前にグレート井上くん。そのとなりに・・・花ちゃん。当然か・・・。
井上くんはめちゃめちゃ迷惑そうにしてますが。

「な、なんかすごいことになってるな」。

「そうなの。でもおもしろいのよ？」
と、和美ちゃん。

僕は、スケ番グループの集まりと言えば、早苗さんたちの『カタリーナ』での陰湿な雰囲気しか知りません。

ところがお蝶夫人率いるスケ番グループの、明るいこと明るいこと！
やんなるくらいに明るい。
世代交代ってのは、こんなもんなのかも知れません。

「村山は？」
「さっき帰っちゃった」。

そうか・・・。
たぶん、夕子ちゃんに会ってるんだな・・・。

門限のきつい夕子ちゃん。
文化祭後は、貴重な時間なのでしょう。

あとは全員揃っているようです。

スケ番グループと、我が武闘派グループのおかげで際限なく盛り上がる宴会！
これにジェミーと楢崎が拍車をかけ、大人の花見顔負けです。

さわぐわ、唄うわ、踊るわ・・・。

雑踏の中、頃合いをみはからって、僕はグレート井上くんに話しかけました。
「あのさー、井上」。

「ん？」

「今、駐在所寄って来たんだけどね・・・」。

するとグレート井上くん。

「ああ。それより、今晩、泊まりに来ないか？」

「え？お前んちに？」

僕は、グレート井上くんの家に泊まったことはありませんでした。
少し不思議に思われるかも知れませんが、それほど厳しい家だったのです。

「ああ。明日代休だろ？」

「うん・・・そうだけど・・・」。

そっか・・・。グレート父さんが入院してるから・・・。

僕は、グレート井上くんが僕になにかしらの話があることを察知しました。
彼の中で、やはりたいへんなことがおきていることと同時に。

「わかった」。

しかし。

たいへんなことは、もっとそばでおきていることに、まったく気づいていない僕でした。

場があれほど盛り上がっているのに、グレート井上くんの隣りの花ちゃんが異様に静かなのです。

「ん～～～～～～～～？泊まり～～～～～～？」

と。様子のおかしい花ちゃん。
ゆらゆらしてます。

あれ？これって。

ひょっとして酔っぱらってる？

シャンメリーで？

し、信じられない酒の弱さ・・・・。


すると花ちゃん。

「泊まりって～～～～～？」

「な、なに？」


「ダメ～～～～～！井上くんはわたしのものよ～～～～っ！」

言うなり

いきなりグレート井上くんに覆いかぶさったかと思ったら


　CHUーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


濃厚なキッス!?!?!?!?!?


　ウソ？？？？？？？？？


僕も

和美ちゃんも

みんなも

もちろんスケ番グループも


　あんぐり・・・・。


グレート井上くん金縛り！


「は、は、花ちゃん・・・・！」。
「お、お蝶夫人・・・」
「あねご・・・」

みんなが呆然と見守る中

「ぷは～～～～～～～～♪」

ぷは～じゃないって・・・。

しかも花ちゃん。
そのまま気絶。




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