ぼくたちと駐在さんの700日戦争

＜おことわり＞本日シリアスモードです。笑えませんm(_ _)m

アジト教室にもどると、グレート井上くんは、例の夕子ちゃんの「白い本」を取り出しました。

「これさ・・・」。

「あ？井上ぇ、まだお前が持ってたのか？」
「夕子ちゃんに返さないの？」

「うん。この白い本には、まだ役割があるから」。

← ← ← ← ←

西条くん。
「井上ぇ。お前・・・変わったなぁ」。

「そうか？」

「うん。なんちゅーか。すっげー人間として成長したっつーか」。

「西条に言われてもうれしくない」。

ごもっとも。

「4ミリバールはでかくなったな！」

ほらね。

「いや。4カサブタだろー」。

「千葉もだまってろ！」

しかし。僕もグレート井上くんが、こんなことを言うのは意外でした。

「井上、なんかあったのか？」

「僕は・・・」。

夕子ちゃんの白い本の折れ曲がったた部分を直しながら

「夕子に昨日の夜、泣かれた」。

「夕子ちゃんに？」

「お兄ちゃんは、いっつも邪魔するってさ」。

「え」。
「まぁ」。
「邪魔だけど」。
「ものすごく」。

こらこら・・・。

「僕は夕子に火傷負わせてからね。一生夕子守るって誓ってて。けど、結果は夕子を泣かせ続けてたんだって」。

「だから夕子ちゃんの熊くれよ？」
「シッ！」
「あ・・・わりぃ・・・」。

「はは。熊かぁ。そうなんだ。いっつも僕はひとりよがりで。夕子の火傷がバレるのがイヤで・・・」。

「井上・・・」。

「知ってたよ。夕子とお前が好き合ってた時期もあったのにさ。僕が・・・ずっと邪魔してたんだ・・・」。

「いや、井上。夕子ちゃん、小学生だろ？その頃。気にするなよ」。

僕のなぐさめに、グレート井上くんは、コクコクと無言でうなづきましたが、

「けど、そのせいで、夕子の片思いの長さは、和美より長くなったんだ・・・」。

「ん・・・・」。

「妹は。僕の見えないとこでずっと泣いてた・・・」。

井上くんは割り切ったように一呼吸すると、

「この日記な？」

「うん」。

「柳の勘違いだ」。

「え？」
「どういうこと？」

「さっき折れたページ直しててわかったんだ。僕も長い事、夕子の兄やってるからな」。

「？」「？」「？」

「ここに書かれてる”先輩”は、お前のことじゃない」。

「え？」

「あれは柳の勝手な思い違いだ。お前、スパイクなんかできないだろ？」

「ああ。自慢じゃないけど」。

「途中から書いてる”先輩”は・・・村山。君のことだよ」。

村山くんはもちろんのこと、みんなが驚きました。




「白いページは、村山宛だったんだよ」。



→ → → → →

アジト教室。

グレート井上くんは、しばらく白い本に目を落としていましたが、
「村山」。

「ん？」

「これ。夕子に渡してやってくれ」。

「え・・・・？」

「お前から渡してくれよ」。

努めて明るく言うグレート井上くんでしたが

「けど・・・これ・・・」。

村山くんは、やはり受け取るのを躊躇しました。

井上くんは村山くんの手に、白い本を持たせると
「その白いページは・・・君が書いてうめてやってくれ・・・」。

「いや・・・井上・・・でも・・・」。

「夕子のこと。好きなんだろ？村山」。

「ああ」。
村山くんは、この日初めて、胸をはって答えました。


「けどさ・・・」。
村山くんは、今度は僕の方を向いて、バツの悪そうな顔をしました。

グレート井上くん。
「いいんだ。僕らは中学んときからずっとさ、夕子も認めてる親友だろ？」

「ああ」「うん。もちろん」。
僕と村山くんが応えます。

「壊れない自信があるなら・・・」

「うん」。

「結婚式で。また笑顔で会おう」。


まさか数年後に。この言葉が現実になろうなどとは、
僕も村山くんも。いいえ。おそらくグレート井上くんも。
この時は想像さえできないことでした。



人気ブログランキング｜ブログ村ランキング

　14章-第50話へ→

　▲14章後編-目次へ｜△14章前編-目次へ

関連記事

• 14章-第50話 井上くん革命(4)
• 14章-第49話 井上くん革命(3)
• 14章-第48話 井上くん革命(2)