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第4話 伏兵(1)

逃げる逃げる僕たち。
追いかける追いかける駐在さん。
思えば、警察官が走っている横、次から次へ車は通り過ぎるわけですが、そりゃ警官が走っていれば飛ばしません。
シンバルよりずっと邪魔になっているのでは?
そんなことはおかまいなしに、とにかく怒りで全速力の駐在さん!
考えてみると、シンバル以外のやつは未遂ですから、逃げる必要などまったくないのですが、人間、追って来るものがあると逃げます。不思議だね。
しかし、逃げる、と言ってもスーザホンを首からまいた僕はたいへんでした。
音楽部副部長をだまして持ち出した時も「それ、100万近くするらしいよ。気をつけて扱えよ」と、釘をさされておりました。
てなわけで、一番最初に追いつかれたのは、シンバル野郎ではなく、僕でした。
駐在さんが言いました。
「このヤロー!元陸上部をなめるなよ!」
いや‥‥‥、陸上部じゃなくても、幼稚園児でもスーザホン持ってるやつには追いつけますから。
「おまえ、そこに待機!」
と言い捨てるなり、駐在さんはさらにダッシュ!
あっという間に鎧兜、シンバル、タライ、トロンボーンと捕まえまして、またしても5人。
残りは逃亡に成功しました。
いやぁ。初めて見ました。『太陽にほえろ』ばりの逮捕劇。
捕まってるヤツがみんな奇妙ないでたちでしたけど。
駐在さんは、僕たちをひとつところに集めまして、またしても尋問。
捕まったうちの3名までが前回と同メンバーってのもやんなりましたが、それはたぶん駐在さんも同じでしょう。
「はぁはぁ。おまえらぁ。そろってなにやってんだ? あ?」
顔を見合わせる僕たち。
とにかく、尋問やら説教やらは、もう馴れきっている僕たちでしたから、駐在さんよりは一枚上でした。
「いや・・・今、友人の葬儀に参列するところです」
「ほぉ。シンバル持ってか?」
「宗教上のことですから」
「じゃ、このタライはなんだ?」
「ご遺体を洗うんです」
「なんでお前こんな格好してる?」
鎧兜少年に、あまりに当然な質問です。
「いや・・・葬儀の正装ってよくわかんなくて。 それで家で一番立派な服を・・・」
ああ。そりゃ立派ですとも。これ以上はありません。
この画期的な受け答えに、僕たちも思わず吹き出してしまいました。
「ほぉ。 誰が死んだんだ?言ってみろ!」
というか、いいかげんここまでつきあっていただかなくてもよかったんですが
「西条くん(仮名16歳)です。おしいかたを亡くしました」
西条はバイクで停学になったこの争いの超本人(ちょうが違うとつっこまないでください。意味として超なんです)。
「だいたいなぁ。お前らは停学とけたばっかりだろ?」
「ええ。人の生き死にはわからんものです」。
ここまで聞いて駐在さん。
「おまえら。警察にうらみでもあるのか?」
あるに決まってるでしょう。すでに停学くらってるのに。まぁ、しかけたのは僕たちですけどね。
逮捕までしといて、抜けた質問としか言いようがありません。
しかし、鎧兜にスーザホン。尋問する警察官。
まわりからは、どう映っているのでしょう?不思議です。
「おまわりさん!」
「なんだ?」
「こいつ(シンバル男)はともかく、僕たちは、なんにもしていませんけど。スーザホン持って歩いてちゃいけませんか?」
「ぐ・・・」
逆襲開始です。
「やろうとしてただろう?」
「それはおまわりさんの憶測というもんです。想像で人を捕まえないでください」。
「ぐ・・・・」
「こいつ(シンバル男)にしたって、たまたまあそこでああしてみたくなっただけで、ただの歩行者じゃないですか」。
普通 ああしてみたく なりませんけどね。
「ぐ・・・・」
快心の一撃。おまわりさんHP -100ポイント。
ところが!
ここで思わぬ伏兵が現れてしまいました。
それは通行人Aです。
通行人Aは、ちょっと目立っていた僕たちをじろじろと見るなり、突如、思い出したように声をかけてまいりました。
「お。孝昭(仮名16歳)じゃないか?なにやってんだ、お前」
「え?」
それはシンバル男の叔父さんでした。
親族が現れるという想定外の展開に我々はとまどいました。
ああ・・・。これだから小さい町はいやなんだ。
第5話へ続く・・・・・
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第4話 伏兵(1)

逃げる逃げる僕たち。
追いかける追いかける駐在さん。
思えば、警察官が走っている横、次から次へ車は通り過ぎるわけですが、そりゃ警官が走っていれば飛ばしません。
シンバルよりずっと邪魔になっているのでは?
そんなことはおかまいなしに、とにかく怒りで全速力の駐在さん!
考えてみると、シンバル以外のやつは未遂ですから、逃げる必要などまったくないのですが、人間、追って来るものがあると逃げます。不思議だね。
しかし、逃げる、と言ってもスーザホンを首からまいた僕はたいへんでした。
音楽部副部長をだまして持ち出した時も「それ、100万近くするらしいよ。気をつけて扱えよ」と、釘をさされておりました。
てなわけで、一番最初に追いつかれたのは、シンバル野郎ではなく、僕でした。
駐在さんが言いました。
「このヤロー!元陸上部をなめるなよ!」
いや‥‥‥、陸上部じゃなくても、幼稚園児でもスーザホン持ってるやつには追いつけますから。
「おまえ、そこに待機!」
と言い捨てるなり、駐在さんはさらにダッシュ!
あっという間に鎧兜、シンバル、タライ、トロンボーンと捕まえまして、またしても5人。
残りは逃亡に成功しました。
いやぁ。初めて見ました。『太陽にほえろ』ばりの逮捕劇。
捕まってるヤツがみんな奇妙ないでたちでしたけど。
駐在さんは、僕たちをひとつところに集めまして、またしても尋問。
捕まったうちの3名までが前回と同メンバーってのもやんなりましたが、それはたぶん駐在さんも同じでしょう。
「はぁはぁ。おまえらぁ。そろってなにやってんだ? あ?」
顔を見合わせる僕たち。
とにかく、尋問やら説教やらは、もう馴れきっている僕たちでしたから、駐在さんよりは一枚上でした。
「いや・・・今、友人の葬儀に参列するところです」
「ほぉ。シンバル持ってか?」
「宗教上のことですから」
「じゃ、このタライはなんだ?」
「ご遺体を洗うんです」
「なんでお前こんな格好してる?」
鎧兜少年に、あまりに当然な質問です。
「いや・・・葬儀の正装ってよくわかんなくて。 それで家で一番立派な服を・・・」
ああ。そりゃ立派ですとも。これ以上はありません。
この画期的な受け答えに、僕たちも思わず吹き出してしまいました。
「ほぉ。 誰が死んだんだ?言ってみろ!」
というか、いいかげんここまでつきあっていただかなくてもよかったんですが
「西条くん(仮名16歳)です。おしいかたを亡くしました」
西条はバイクで停学になったこの争いの超本人(ちょうが違うとつっこまないでください。意味として超なんです)。
「だいたいなぁ。お前らは停学とけたばっかりだろ?」
「ええ。人の生き死にはわからんものです」。
ここまで聞いて駐在さん。
「おまえら。警察にうらみでもあるのか?」
あるに決まってるでしょう。すでに停学くらってるのに。まぁ、しかけたのは僕たちですけどね。
逮捕までしといて、抜けた質問としか言いようがありません。
しかし、鎧兜にスーザホン。尋問する警察官。
まわりからは、どう映っているのでしょう?不思議です。
「おまわりさん!」
「なんだ?」
「こいつ(シンバル男)はともかく、僕たちは、なんにもしていませんけど。スーザホン持って歩いてちゃいけませんか?」
「ぐ・・・」
逆襲開始です。
「やろうとしてただろう?」
「それはおまわりさんの憶測というもんです。想像で人を捕まえないでください」。
「ぐ・・・・」
「こいつ(シンバル男)にしたって、たまたまあそこでああしてみたくなっただけで、ただの歩行者じゃないですか」。
普通 ああしてみたく なりませんけどね。
「ぐ・・・・」
快心の一撃。おまわりさんHP -100ポイント。
ところが!
ここで思わぬ伏兵が現れてしまいました。
それは通行人Aです。
通行人Aは、ちょっと目立っていた僕たちをじろじろと見るなり、突如、思い出したように声をかけてまいりました。
「お。孝昭(仮名16歳)じゃないか?なにやってんだ、お前」
「え?」
それはシンバル男の叔父さんでした。
親族が現れるという想定外の展開に我々はとまどいました。
ああ・・・。これだから小さい町はいやなんだ。
第5話へ続く・・・・・
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「捕まってるやつがみんな奇妙ないでたち」
・・・見てみたいものです。
何度読んでもわらっちゃうよ!
コメいれはじめた記念と最近駐在さんがご無沙汰で寂しいので半年ぶりくらいに読み返してみたけど、何度読んでも笑えますね。鎧の画像なんてあったっけか…
やっぱり駐在さんとのやり取りがサイコーっすね!
>月澤さん
>nobukoちゃん
>じゅんぢさん
な。ここまでもどってきていたか!!!!
うーん。フェイント!
見つかってしまった。
よく見てますねぇ。敬服。
今日初めて読みました。
「家で一番立派な服を・・・」に笑いを抑えきれずお茶を吹き出しました。。。
毎日楽しみに読むことにします!
>annnaさん
ようこそぼくちゅうへ~。
すさまじく長いですからねー。
がんばってください。
TVでブログランキンで初めて知りました。面白いですね。ホントにねぇ。赤く燃える夕日をバックに(?)、金属が光り、駐在さんの汗が輝く・・・絵になると思いましたよ。
こんちわ^^!
はじめまして駐在という者です。
初めてこの小説を読んだ時は、爆笑していました。
4話まで読みましたが初めて読む方に特に
面白かった場面を紹介します。それは
人それぞれなので言いません
自分の好きな場面を探してみてください。
多分面白い所があるかもしれません。
>駐在さん~~
紹介します、って書いたら紹介しなきゃ~~~。
ま。いいけどね。
そう来たか!!面白すぎです!自分もこれくらいペラペラと言い訳をしてみたいです!久々の爆笑を、ありがとうですっ!
あ! 今、気づきました。
最新コメって、左に出てるんですね。
(゚д゚)!
くろわっさんって、戻ってチェックしてて、すごいと同時に大変だな~って思ってました。
それでも、大変すごい事ですね。( ゚Д゚ノノ"☆パチパチ
>アキプンさん
ええ。たいへんです。
けっこう見落としてますね。実は。
申し訳ないったらありゃしません。
今日映画みてきました!!
映画も原作?も面白い!!
1行1行追うごとに底なし沼にはまっていくこの感覚がいい。
とにかく、スーザホンをはじめ、何も壊さなかったことだけほめてあげたいですね。
葬儀ネタで耐え凌ごうとするのは、それはもうある意味大胆で。
ここでも思う存分楽しませていただきました。
「警察に何か恨みでもあるのか?」といわれたときに、「あなたの奥さんに嫉妬していたから」と言ったらどうなるか、と言う展開も個人的には見てみたかったですが。
超本人の西条くん(笑)
惜しい人を亡くしましたね(笑)
すみません。
私は台湾からの読者です。本当に面白い話です!
しかし私の日本語力がちょっと足りなくて、
わからないところもあります。
たとえばここ:
思えば、警察官が走っている横、次から次へ車は通り過ぎるわけですが、そりゃ警官が走っていれば飛ばしません。
シンバルよりずっと邪魔になっているのでは?
そんなことはおかまいなしに、とにかく怒りで全速力の駐在さん。
これって駐在さんが車に邪魔だから車が飛ばしませんですか?
それとも車がとおり過ぎるから駐在さんが走っても飛ばしません?
ありがとうございます!
友達に薦められて読み始めました。
面白いですね~
忙しいのに・・・ついつい止まりません。
8月だから台湾の方は、戻って読まれることはないかな?
それは、警官やパトカー見えたら、反射的に速度を落とすんですね。
ドライバーの心理ですね~。
速度違反は・・・・悪いこと・・・・捕まるかもしれないい・・・・?
ちょぴりは思ってるわけです。
犯人を追っかけてる警官には捕まらないんですけど
、いつもやってるとこですからね。
みんな知ってるわけです。ぷぷぷ
あ、ここネズミ捕りの場所だった!ってね^^
続き読みます~。
>うぃんさん
ありがとうございます。
たぶん、台湾のかたも、翻訳版が、すでに発売されているはずなので、そちらをいずれ読まれて理解されるのではないでしょうか。
台湾も速度取り締まりはあるようですし。
あとチョットなのに…怪しい雲行き…
でも、
「ぐ・・・」
とか言ってくれる大人って良いですね。(笑)人の話を聞いてくれてる。(*^_^*)
怒鳴りまくって、黙らせようとする大人いますから。(>_<)
失礼します。 琴
鎧の君、最高
いや~、これは是非とも生で見てみたかったね
テレビで見て「小説ないかなぁ」って探しててブログ!
今日読み始めました。
『家で一番立派な服・・・』
ここ!私も"o( ゜∀゜):;*.':;ギャノヽノヽノヽノヽ!! ノヽ゛ンノヽ゛ン!!!
ってなって、母親に不審者のような目で見られました。
はじめまして。何度も拝見させて頂いております。ムクと申します。お話がおもしろすぎてとうとう書き込みしてしまいました。お話から映像を想像してしまって笑いが止まりません!(映画も拝見しました) 家で一番立派な服のくだりがすっごく好きです。これからも楽しみに読ませてくださいね。応援しています。
鎧甲♪
Great~(★∀★)
僕の学校でこんなすごいことはありません。
2か月で10人くらい補導されたくらいです。
ボクも甲冑欲しい