ぼくたちと駐在さんの700日戦争

 

  
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「もうプールもそろそろ終わりだな・・・」

久保くんと孝昭くんがプールサイドで話しています。

「うん。でも、ミカちゃんの絵日記、増やしてやるとか言って、結局プールばっか。こないだあの子の絵日記見せられたんだけどさ。”今日もけらいとプールにいきました” 。ずっと」

「う~ん。夕子ちゃんが来る、って言うと、必ずプールになっちゃうんだよなぁ・・・」

「どうしてだろう?」
「なんでだろうな?」

いや・・・なんでって・・・・
お前らがスケベだからじゃないでしょうか?

「おーい。ジェミ~。アイス買って来いよ!」

「先輩、なんだっていっつも僕なんです?たまには自分で行ってくださいよ。同じケライなんですから」

「んー。だってお前、ケライ20号じゃん。どんじりだろ?どんじり!」

「ふっふっふ。それが違うんですよ~」

「なにが違うんだよ」。

「ケライ21号がいるんです!」

「はぁ?どこに?」


「遠い未来に!」




6章『小さな太陽』


<おことわり>
さきほどのケライ21号がどこにいるかわからないかたは、ここへ行って資格証明とってきてください。

では6章。はじまりはじまり!


第1話 ノッポさん部隊(1)

夏休みが終わり、僕たちの学年は講堂に集められていました。

僕たちグループにとって最大の難関「修学旅行」の説明です。

普通、修学旅行と言えば、高校生活の中でもメイン中のメイン。楽しみ中の楽しみなわけですが、僕たちにとっては、ちょっと違っていました。
いえ。修学旅行そのものは、他の生徒同様、楽しみなのですが・・・・。

「いいか。10月の旅行までの間にちょっとでも問題起こしたヤツは、修学旅行にはつれていかんからな!わかったな?」
生活指導の工藤先生。

これです。
自慢じゃありませんが、僕たちが2年生になってからというもの、生活指導を受けなかった月は「ひと月」としてありません。
夏休みは、1ヶ月もありましたので、さすがにこの月はないだろう、と思ったら、となりの市の消防署からの呼び出しで、結局指導を受けてしまいました・・・・。

西条くんの質問。
「先生~〜。”ちょっとでも”って、どれくらいですかぁ?」

「あ?西条? お前、行くつもりでいたのか?お前のバスの席、予約とってないぞ」

むろん冗談なのでしょうが、あまりにリアリティが高かったため、集まった生徒は誰ひとり笑わないのでした・・・・・。



放課後、僕たちは憂鬱な顔でアジト教室に集まりました。

「まったくよー。問題起こしたらってよ〜。問題起こす生徒の立場も考えてほしいよな!」
理不尽な言い分です。

「う〜〜〜〜〜〜~ん」
腕を組む僕たち。

なぜ腕を組んでいるか?と、言いますと、実はこの前日、すでに問題を起こしていたからなのでした・・・。しかも、またしても駐在がらみ。
それもハンパじゃありません。警察官に怪我させたんですから。
そんな高校生、めったにいません。

駐在所からひとこと連絡が入れば、修学旅行行きはおじゃん。深刻この上ない問題です。

「今さら、今日、あんなこと言われたってなぁ・・・」
「昨日にもどれるわけじゃなし・・・」
「駐在にあやまりにいく?」
「それもちょっとなぁ・・・」

「う〜〜〜〜〜〜~ん」
腕を組む僕たち。

話は西条くんが退院した日。夏休み終盤まで遡ります。

僕たちは、夏休みの間で、2度も町内の掃除をさせられておりました。
どんなに花火大会で親睦を深めようが、それはまるでダイエットのリバウンドのごとく、元にもどってしまうのです。まぁ、別れ際がよくありませんでした。

それにしても町内掃除。
もう、ここまで来るとこの街の美化は、我々グループが担っていると言っても過言ではありません。

問題は2度目でした。
僕は、この日、母と買い物などをしていたため、一行には加わっていなかったのですが、スーパーから外に出たとたんに、炎天下、掃除をしている感心な若者たちがいるわけです。

「お!いいとこに!手伝え、お前」

「お、お前らナニやってん、のって掃除か・・・・また捕まったわけ?」

久保くん、
「それがなー。聞いてくれよ。西条がよー。3人乗りしよーとか言いやがってな」

「3人乗り?自転車で?」

「うん。俺ら部活の帰りなんだけどさ。今日は電車組が4人で、自転車組は2人だったんだよな」

「ふむふむ」

「で。コイツら駅までつれていくのに、乗り切れないだろ?2人乗りじゃ」

そもそも、なにゆえ、そこまでして自転車に乗らなくてはならないのかがわかりません。

「それで3人乗り?」

「ああ。西条の馬鹿が、2人乗りは道交法違反だけど3人乗りの記述はねー、とかテキトーなこと言いやがってよー」

「え!お前もそりゃーおもしれーとか言ってたろーが!」
反論する西条くん。


「それでまた駐在さんに?」

「他に掃除させるやつなんかいねぇだろ?」

「ふーん。それはご苦労さん」

「え!お前、手伝えよ!」

「やなこった。だいたい今日は、母ちゃんと買い物なんだよ」

「薄情だなー!お母さんなんとか言ってやってください」
僕の母にすがる西条くん。

すると母、
「お前、友情はたいせつにしないといけないよ」

え!

お母様。大切にすべき友情と、そうじゃないものってあると思うんですけど?

「さすがタカさんだなー。天才少女!」

いや。昔はそうだったかも知れないが、少女って歳じゃないぞ。
ここに高校生の息子いるもん。

しかし、この「少女」に気をよくした母君、

「もー、好きなように使ってやって!」

いやぁ〜。少女で喜ぶか? 40過ぎて?

「まぁ、今日は2丁目までだからよ!」

「え?えらく狭くないか?それって」

ここは1丁目。
今までのパターンから比較すると、極めて狭い範囲です=楽勝。

「んー。じゃーしょうがない」

そもそも、これが間違いのもとだったのですが、

スーパーからほうきを借り、予定通り瞬く間に掃除終了!

「終わったな。じゃー僕は帰るからな」

「いやぁ・・・・それがですね〜」

「なんだよ。終わったろ?」

「駅の便所掃除が残ってるんですよ〜。これが」

「はぁあ?」

駅の・・・。便所・・・・?

「そ、そんなの聞いてないぞ!」

「言ってねーもん」

いや。そういう問答じゃなくって。なにを自信満々なんだ?コイツ。

しかし、多勢に無勢。
僕は、西条くんたち6人にひきずられるようにして、駅まで連れていかれたのでした(悔)

それにしても便所掃除?

駐在・・・考えられん。


駅につくと、駐在さんはそっちに待機しておられました。

「おや?ママチャリ。なんでお前も?」

「まぁ・・・・いろいろとありまして・・・・」

「まぁ、人数多いに越したことないからな。じゃ、お前ら便所掃除始めろ」

しかし、ここに駅長さんがいらっしゃいまして。
この方、たいへん温厚で「ホトケの駅長」とまで呼ばれている方でした。

「いやいや、おまわりさん。夏の盛りに便所掃除はかわいそうですよ。いいですいいです。業者さんが来ますから」

う〜ん、涙出て来ます。駅長さん!大好きっ!

「いや、駅長さん、ご存知ないようですが、こないだ盆のUターンラッシュで車両占拠したのいたでしょう。コイツらなんですよ?」

「・・・・・・」

駅長さん。しばらく無言になりました。


「・・・じゃぁ、君たち。がんばりたまえよ」

え!

ホトケの・・・・・・・・


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第2話 ノッポさん部隊(2)


駅にかぎらず、当時の公衆トイレというのは、現代の奇麗なトイレとは似て非なるものです。
しかも真夏。その臭いたるやすさまじいもので、用をたすのもたいへん。まして掃除。
でも、それを毎日やっていた人たちもいたわけです。むろん、この時はそんなとこまで頭まわりませんでしたが。

駅にはゴム手袋が4つしかなく、僕たちは4人の実行部隊と、3人の草むしり部隊に別れることになりました。

  運命のジャンケン!


  ポン!


・・・・・なぜ、こういう時には負けてしまうのでしょう?僕。
しかも、3人乗り、やってないのに。

結局、中を掃除することになったのは、西条くん、久保くん、僕、と、そして新キャラの麻生くん。
新キャラ「麻生」くんの名前は覚える必要がありません。
なぜなら、彼には駐在さんが画期的ニックネームをつけ、生涯そう呼ばれることになったからです。

ゴム手をはめたものの、トイレの前で呆然とたたずむ4名。

「うーん。勇気いるなぁ」
「なんか、こうバリアはってあるよな。夏のトイレ」
「千尋の谷だよなぁ・・・」

4人は口々に、夏のトイレのおそろしさを語りました。

と、躊躇していると

そこにホームから出て来た若い女性がトイレに入って行きました。
しかもこれが半端じゃなく美人でしたので

「・・・・・」「・・・・・」「・・・・・」
これを目で追う西条くんたち。

「よし!ぐだぐだ言ってもはじまんねー!やろう!」
「うん!やろう!すぐやろう!」


トイレへとかけていきます。

しかし、駐在さん。
「こらこらこらこらこらこら!」

「はい?なんでしょうか。僕たちトイレ掃除してきま~す」

「とか言って、お前ら、となりで聞耳たてるつもりじゃぁないだろうな?」
「えっ!」
どうやら図星。

「そ、そんな!駐在さん、き、聞耳たてるだなんて!ちゃんと掃除しますよ」

なんだ、その「掃除って。バレバレ。って言うか、どう聞いても「掃除」がついでで聞耳メイン。千尋の谷が聞いてあきれます。

「あのなぁ。それ犯罪だから。職業柄、見過ごせないから」

「え?駐在さんも聴きたいってことですか?」

「バ、バカヤロー!!!!どういう耳だとそう聴こえるんだ?」

そうこう言っているうちに、女性はトイレを後に。よかったですね。ご無事で。

「あーあ。駐在ぃ。千載一遇のチャンスを・・・」

「馬鹿か!西条。なにが千載一遇だ!なんでこう男子高生ってのは・・・」



こうして、ぶつぶつ言いながらも、僕たちはトイレ掃除開始。
が、少しして、そこへ駐在さんが入って来ました。

「お!こら!駐在ぃ!まさか、掃除してる横で用足そうってイヤガラセじゃぁねーだろーな!”細腕繁盛記”か!てめー!」

「そうだそうだ。てめー、ちょっとチン○、デカいからって自慢しに来たのか?」
これは麻生くん。
繰り返しますが、彼にはこの後画期的ニックネームがつくので、名前を覚える必要はありません。
麻生くんは、小柄でせわしい「口から入るタイプ」で、僕たちの中では、普段は森田くんと同じ「工作班」にいます。
これだけの人数いると、いろいろ役割分担があるわけですね。
僕たちは、この工作班のことを「のっぽさん部隊」と名付けていました。そうです。『できるかな?』の、のっぽさん。

「ん?デカいって?デカいのか駐在?」
西条くんが聞きかえします。

「え!その・・・・こないだ病院でトイレとなりに来た時・・ちょっと見えたんだよ!」

「はぁ?お前、なにのぞいてんだ?」
駐在さん。

「ほ、ほら。隣の芝生は、き、気になるだろうがよっ!」

「あー。お前ら若いからなー。気になるんだよなー。うんうん。覚えあるぞ。俺も」

「そ、そうか。駐在、デカいのか・・・」
西条くん。かなりショックなようです。なんでショックなのかはわかりません。

「うん、でも大丈夫だぞ。麻生。大きさ、たいして関係ないから。お前くらいちっちゃくとも支障ないぞ」

「げ!てめーも見てんじゃん!」
しかも「チ○ポちっちゃい」って公言されてます。麻生くん。

「いや・・偶然目に入ったっていうか。まぁ、そういうコンプレックスって、あるもんだよな。若い時は」

「コ、コンプレックス・・・・」
この言葉で小ささ確定。

「だがな。麻生。チャーリーチャップリンって人を知ってるだろ?」

「ちゃ、ちゃっぷりん・・・・・?」

「うん。チャップリンはな。ちっちゃくて帽子かぶってたけど、世界的人物になったぞ」

いやいや・・・・駐在さん。
チャップリンが小さくて帽子かぶってるのは外見の話であって、そのまま○ンポにあてはめてどーする!?
さらに帽子かぶってることまで公言された麻生くん。たまりません。5章で説明しましたように包○は、男子高生最大の屈辱です。
ひとつとして例えになってません。チャップリン。

僕たちはこの暴挙とも言える引用に一瞬無言になりましたが、言うまでもなく、その後

 大爆笑。

「そうかー。あはははははは。麻生、帽子もかぶってたのかぁ?」
「ち、ちっちゃくって・・・帽子・・・ひぃ~」
「わはははははははははは。ちゃ、ちゃっぷりん。さ、酸素足りねー、ケホケホ」
「うっ、呼吸したくねーのに!わははは。トイレで笑わすな!駐在!」

そうです。この日から麻生くんのあだ名は「チャーリー」になったのでした。
当然本人は不満たらたら。屈辱のあだ名です。

「な、なぐさめになってねーよっ!ていうか、なぐさめんな!バカ駐在!」
チャーリーくん。もっともなご立腹でした。



駐在さんは、別にチン○の大きさを自慢しにきたわけではありませんでした。そんな警察官いたら困ります。

駐在さんは、駐在所からゴム手を持って来ていたのです。

「なにもお前らだけにやらせるとは言わん。俺も手伝うぞ」

「え!」

と、感動するかと思いきや
「じゃぁ・・・駐在さん。男便所お願いしま~す。僕たち女子便所行くんで~」

と、逃げようとする僕たちを

「待て待て」

ゴム手で捕まえる駐在さん。

「うっ!うわーーーーー!駐在!ゴ、ゴム手ゴム手!く、口に当たってる!口に!」

あえなく御用。

チャップリン



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第3話 ノッポさん部隊(3)


さんざんな苦労で便所掃除を終えた僕たち。
「ホトケの駅長さん」は、僕たちに「熱いお茶」で、労をねぎらってくれました。
ねぎらってくれるのはいいけど、どうして自分だけ冷たい麦茶飲んでるわけ?

やがて駅を後にしようとしたときに、駐在さん。
「もう、3人乗りとか、馬鹿やるんじゃないぞ!」

「ハイ。大丈夫です。駐在さん。こいつが来たんで自転車3台になりましたから・・・」

「んあ?」

「2人乗りで帰れま〜〜〜〜す」

僕たちは2人ずつ3台に分乗して、猛ダッシュ!

「バ、バカヤローー!2人乗りもダメに決まってるだろうがぁ!」

駐在さんの罵声を背にうけながら、大笑いで立ち去る僕たちでした。
(あ。あまり1ですか?電車で帰宅しました)


僕たちは、その足でグレート井上くんの家へと向かいました。

なぜグレート井上くんの家か?と申しますと、お母さんの出されるデザート類が、とにかく豪華なのです。
僕たちは、駅では「熱いお茶」だけでしたので、せめてシャービックくらいは口に入れようという魂胆でした。

ハウスシャービック
<ハウスシャービック=昭和43年、冷蔵庫の普及とともに発売された当時の夏の氷菓子の代表格。製氷皿を使ってつくる。現在も発売されている>

道すがら、さんざんなめにあったチャーリーくん、

「なんだよ。チャップリンはちっちゃくて帽子かぶってても世界的人物って・・・。そいじゃなにか?俺のチ○ポは世界的になるのか?」

確かに。そんな有名なチン○、持ちたくありません。

英語好きの久保くん。
「うーん。○ンポ・オブ・ザ・ワールドだな」

「うん。なんかカレン・カーペンターが歌ってそうだよな!」

歌わねーよ。そんなへんな歌

「まぁ。チャーリー。いいじゃねぇか。多少、人よりちっちゃくても」

西条くんがなぐさめます。
どこもなぐさめになってませんが。

「チャーリーって言うなっ!バカ!」

「え?っと、でも、君、本名、なんだったっけ?あんまりチャップリンの印象強くて忘れた」

「な、なんだとぉ!」

しかし、彼の言い分が我々に通るわけもなく、彼は卒業以降まで、ずっとチャーリーと呼ばれるのでした・・・。


やがて井上宅到着。

グレート井上家では、夕子ちゃんも出迎えてくれました。
あいかわらずかわゆい♪

一方兄のグレート井上くんは、

「ん?」

会った早々に、しかめっ面です。

「なんか・・・トイレくさい・・・」

「そうなんだよー。実はさー・・・・・」

西条くんが成り行きを説明。

「・・・・けど、そんなに染み込んでる?俺ら」

「うん。臭い。すっごく臭い!お前ら、今日は家に入るな

え~~~~。

「せめてシャービック・・・・・」


この「家に入るな」も、運命を変えたひとつの要因でした。

なぜなら、僕はこの時、納屋においてある、とある物を発見してしまったからです。

「井上、あれは・・・」

「ん?ああ。あれ、夕子がちっちゃいとき乗ってた自転車だけど。それがどうかしたか?」

「いや・・・あれ、もらえるか?」

「ああ。別にいいよ。もう使うことないから。何に使うんだ?」

「うん。ちょっとな。・・・・チャーリー、お前、駐在さんに復讐したい?」

「おお!もちろんだとも!なーにがチャップリンだっ!」

事情を知らないグレート井上くん、

「チャーリーって・・・誰?」

再び成り行きを説明する西条くん。

グレート井上くん。言うまでもなく


大爆笑



「・・・・でも、それと夕子の自転車とどういう関係あるわけ?」

「うん。これでさぁ・・・・・」

作戦説明。


「お、おもしれ~!」

西条くん、
「なんでお前の頭脳ってそんなに悪徳なわけ?」

明晰って言えっ!明晰って!め・い・せ・きっ!

「ノッポさん部隊、集められるかな?」

チャーリー、
「そんなもん2人もいればじゅうぶんだ!」

「よしっ!やろう!」

チャーリーは、さっそく夕子ちゃんの自転車から部品をはずしました。

「じゃぁ井上、これもらうぞ」

「ああ・・・いいけど・・・・」

「ん?どうしたんだ?」

「あのさ・・・。西条・・・」

「ん?俺?」

「舐めないのか?今日は」

「ナメるかっ!!!!鉄分っ!!!」

しかし、西条くん、少し考えると

「井上!」

「な、なんだよ。深刻な顔して」

「サドルくれ」




そして問題の「修学旅行説明会の前日」

のっぽさん部隊が加工した「夕子ちゃんの自転車の補助輪」を持って、僕たちは駐在所前。

小声で話し合う僕たち。

「チャーリー。何分で終われる?」

「大丈夫。練習して来たからな。2分あればじゅうぶんだ」

「よし!決行!」

そうして僕たちは、駐在さんの自慢の秘密兵器『自転車2号』に、補助輪をとりつけ、フレームに大きな大きな看板をぶらさげました。



  仮免許練習中。



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ミニ知識:駐在さんの自転車は1台は壊れてしまい、実際に自転車2号が存在した。
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第4話 チェイサー(1)


細工はカンペキでした。
『仮免許練習中』は、実際の教習車についているものよりは、ひとまわりほども大きく、かなり目立ちます。
書体もバッチリ! さすがノッポさん部隊!

自転車2号は、もともと駐在所前にありましたので、かなり目立ちます。

僕たちは、通りを歩く人たちがどんな反応をしめすか興味がわき、しばらくそれを観察することにしました。
これこそ「悪戯の醍醐味」です!

この頃、駐在さんは、駐在所の奥にいて、このことには気づいていませんでした。
もちろん、僕たちが気づかれるようなドジは踏みません。場数が違います。

商店街にある駐在所は、なかなか人通りも多く、たくさんの人たちが行き交います。
やがて
「クスクス」
「なに?これぇ?やだぁ」
通る人たちが気づき始めました。

駐在さんは、すでに事務机に座り、なにやら書類の整理などをしておられましたが、この騒ぎには気づいていませんでした。
しかし、女子中高生の下校の時刻ともなってきますと、騒ぎはかなり大きくなります。

「え?え?なになに?これぇ?」
「きゃははははは。おもしろ~い」
「なんで?ねぇ?なんで?」


女子中高生は、現代もそうですが、こういうことに遠慮がありません。
おもいっきりせいいっぱいの大声で騒ぎ立てます。

さすがに駐在さん、通りの「異常事態」に気づかれました。
まぁ、いかに「正義の駐在所」とは言え、そんなにそんなに通る人通る人、笑顔なわけはありません
そろそろ僕たちも引き上げ時です。

僕たちは、また自転車に分乗すると、静かにそこを立ち去りました。

「あー。気づいた時の駐在の顔見て~な~」

が。それからちょっとして


はるか後方から、ガラガラガラガラという聞き覚えのない音が近づいて来ます。


「きっさまらぁ~!」

げっ!なんとすぐ後ろに駐在!
補助輪つけたままで、おもいっきり全速力で追っかけてきているではありませんか!

見ることできました。駐在さんの顔。すっげー顔です。ヤベェ~!

ガラガラガラガラ。ものすごい音です。補助輪!

「バレた!逃げろ!」
「アホ!お前が駐在の顔見たいなんて言うから・・・!」
「そのせいじゃねーだろっ!」

もう、すっかりトムとジェリー。

しかし、駐在さん。よほど腹が立っているのでしょう。尋常な速度ではありません。
おそらく、世界中で補助輪つけた自転車の最高速度をマークしているのではないでしょうか?

僕たちは、こういう時の逃亡方法をよく心得ておりました。
とにかく曲がりに、曲がりに、曲がる事。交差点では分かれる事。これがコツです。

「まてーーーーー!!!」

待ちませんって。
なんで警察官って、追っかけるのに「待て」って言うんでしょう?
当然ながら待つくらいなら逃げません

ガラガラガラガラガラガラガラガラ

補助輪付けた自転車で、爆走の駐在さん。
もう道行く人、みーんなビックリふりかえります。そらーそうだ。


「なんで僕たちって決めてかかるんですかぁ~!」
後ろ向きで声をかける僕。

「じゃーなんで逃げるーー!?」

げ!するどい。

「追っかけてくるからでしょーがー?」

ガラガラガラガラ

「そこで待ったら追っかけないでやるぅー」

「やなこってすぅー!」

「ほらみろぉー!お前ら以外にいねーんだよー!」

ガラガラガラガラ
駐在さん。いい推理だ。ってわかりますけどね。誰でも。

そうこうしていると、ようやく左に曲がる小道がありました。かなりの急カーブ。
僕たちはそこを急左折。

そして駐在さんも・・・・


と、思ったら。


「のわ~~~~〜〜!!」

叫んだかと思ったら

グワッシャーン

駐在さん。補助輪が邪魔してコーナーで転んでしまいました。
初めて見ました。転んだ警察官。
まったくこのおまわりさんには「はじめて見る」ものばっかりです。

そうなんです。補助輪ついてると、自転車乗れる人には、えらく扱いにくくなるんですよね〜。


が。


駐在さん。起き上がりません。
倒れたまま。

あ、あれ?

「ちゅ、駐在・・・さん?」

動きません。


僕たちは、ちょっと心配になり、自転車をUターンさせて、少し駐在さんに近づきました。

「だ、だいじょうぶですか?駐在さん・・・・」

--- へんじがない。ただのしかばねのようだ ▼---(A)



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