ぼくたちと駐在さんの700日戦争

決戦の朝はやってきました。

僕はあらゆるプログラムに対するイタズラを綿密に考案し（そんな暇あるなら勉強しろよ・・・）
県警ふれあい祭りのある市営グランドへと向かいました。

開会は10時から。
空は曇天ではありましたが、雨は降りそうになく、順延はありえません。

早朝の風はさわやかです。


ほぼ予定通りの時間に会場到着。

　よし！
　覚えてろ～～～。駐在～～～。

が、会場にはすでに人の気配がありました。

響いているのは低いオートバイ音。
聞き覚えがあります。

おそらく白バイ部隊が、アトラクションの最終練習かなにかをしているのでしょう。

そこには五十嵐さんもいるはずです。

市営グランドの入口は8つ。
いわゆる八卦の陣というやつです（そんなオーバーなもんでもありませんが）。

勢いをつけて入口に立つと、なにやらスピーカーから駐在さんらしき声が聴こえます。

”ただいま～～～マイクのテスト中～～～～”

”テスト中～～～～”

それに混じって、ザザザっというマイクを吹いたノイズ。

　マイクは吹いてテストしちゃダメなんだよ。バカだな駐在さんは。（←本当）

”あ～、あ～・・・・こんなもんでいいですかね？ボリュームは～～～”

”聴こえますか～～～？”

”西条のバカヤロ～～～～～!!”

はぁ？

”おーーー！調子いいい～～～～。スッキリするな～～～”

なんちゅう台詞でマイクテストしてんだ・・・？

　本部席は西側中央か・・・。

このテスト放送のおかげで場所はわかりましたが、あいにくと入口で開いているのはひとつだけで、他はまだ鍵がかかっていました。
とりたてて盗られるものなどなさそうなものですが、車やバイクが侵入されては困るからでしょう。

駐車場には、すでに複数のパトカーが停まっていて、いやおうなしに緊迫感が盛り上がります。
なにしろ警察にイタズラしようってんですから。無謀です。
って、いつもやってますが。

　そ～～～っと
　そ～～～っと

”ママチャリのあほ～～～～～～！”

　びくぅっ！

さすがに足が止まります。

誰も聴いていないのを幸いに、一般市民の悪口でマイクテストをする警察官。
とんでもねぇやつだ・・・。

しかしついに会場侵入！

やった！

すると、

”業務連絡～～～～、業務連絡～～～～”

”五十嵐巡査長～～～、五十嵐巡査長～～～～”

”北口～～～、フォーメーションナンバー7です～～～。よろしく～～～～”

フォーメーションナンバーセブン？

なんだそれ？

その放送が流れたとたんに、とつぜん賑やかになる白バイのエキゾーストノート。

　あ。白バイのアトラクションのフォーメーションかぁ。

すると

なんと4台くらいの白バイがこっちに向かって来ます！

　んんんん～～～～？

そこには五十嵐さんのピンクバイも！

　あ！

　やばい！めっかった!?

僕は入口へと急ぎました。

　うそ!?

しかし時すでに遅く

なんと白バイ4台に囲まれる一般市民の僕・・・・。

　し、信じられん・・・・。

「おはよー。早いな～。ママチャリ～」
と、にこやかに五十嵐さん。

「お、おはようございます」。

”わはははは～～～～。ママチャリ～～～～。来やがったな～～～～”

　く、くそっ！見破られてた？

フォーメーションまで決めてたって？
信じがたいやつ～～～～～～。


なにもしていないのに、いきなり本部席に連行される僕です。

「お早う。ママチャリくん！さわやかな朝だな」。

「ええ・・・素敵な曇天です・・・」。

「お前だけか？」

「ええ・・・まぁ・・・」。

すると駐在さん。
「五十嵐巡査長。こいつ身動きとれないようにつないどけ」。

えええええええええ！

なんと本部テントの足に手錠でつながれてしまいました！

「な、な、なにするんですか！五十嵐さん！」

「ん～～～。どうせろくなことしないからな。しばらくそこで大人しくしてろ」。

「うそ？僕は善良な市民ですよ？」

「うん。そこで善良にしてろよ」。

こんな暴挙が許されるのか？？？

もののみごとに、駐在さんの術中に落ちた僕。
その身震いするばかりの悔しさ！

本部テントに高校生が手錠でつながれていれば、そりゃあ目立ちます。
次から次に駐在さんに挨拶に来る警察官たちが

「お！こいつ、パトカーにエログラビアしこんだやつじゃないか？」
「・・・・」。

「あ！こいつ、銀行襲った高校生だ！なつかしーなー。元気だったか？」
「・・・・」。

「あ！交通安全コンクールの放送、ぶちこわしにした高校生！」
「・・・・」。

もういいよ・・・。
とんださらし者です。
しかも警察官の。

「もう捕まってんのか？県警の検挙率をあまくみるなよ」。
「・・・・」。

検挙だったのか・・・。まだなんにもしてないのに。
するつもりでしたが。

「わはははは～～～。ママチャリぃ。有名人だなぁ。お前」。

「ほっといてください」。

やがて、突然、駐在さんがあらたまりまして

「お！君は！」

署長さんのお出ましでした。

「また捕まってんのか。ここならサンマ焼いてもいいぞ。あっはっはっは」。

　くそ～～～～～～～～

結局、開会までの全作業を本部から呆然と見守る僕でした。

「ところで駐在さん。フォーメーション7ってなんです？」

「わはは。お前らが来たときの緊急配備態勢だ」。

く・・・。さすが警察！

「7ってことは・・・ナンバー1はなんだったんですか？」

「ん～～～、なんか、セブンってかっこいいだろ？」

　え！それだけ？？？？

そんなもんに捕まったかと思うと、悔しさに拍車がかかります。

しかしまぁ、それも開会までの辛抱。
さすがに開会まで本部に繋いでおくってのはありえません。




　ありえました・・・。




開会式が始まり、署長さんの挨拶を本部席で聴いている僕です。
まぁ、VIPと言えばVIPです。手錠つけられてますが。
僕は手錠が見えないように、ほとんどポールと一緒になって立って、署長さんのありがたいご挨拶を聴いていました。

まさかこんな形で県警とふれあうとは・・・。

駐在さん。
「次のラジオ体操が終わったら離してやる。少しは懲りたか？わはははは」。

「そりゃありがたいですね・・・」。


そしてラジオ体操が始まりました。

　”ラジオ体操第一～～～～～～～～～！”

　”腕を前から上げて背伸びの運動～～～～～～！”

でしたが

　「ありゃあ？」
　「あれれ？」

あちこちで首を傾げる声、声、声。

そりゃそうです。

実はこのラジオ体操。僕が編集した2倍バージョン。題して『ラジオ体操第4』。
それぞれの運動の音楽が編集されていて、普通のラジオ体操の2倍ずつあります。
僕はそのテープを、本部席にいるのをいいことに、普通のラジオ体操のカセットと入れ替えておいたのです。

とどめが

　”大きく息をすって～～～～～”

　”すって～～～～～”

　”すって～～～～～”

　”すって～～～～～”

吸うばっかり。
吐きません。

「マ、マ、ママチャリ～～～～～！やりやがったなぁ!?」

秋の曇天はさわやかです。


※今日のクリキャラは～～～。リクエストにお応えして和美ちゃん!!

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