ぼくたちと駐在さんの700日戦争

さて。僕が謹慎の呪縛から解かれてようやく動けるようになるのが夜中。
まるでドラキュラです。

僕たちは村山くんを呼び、トレノでバナナちゃんの所へ向かうことにしました。
メンバーは僕と西条くんとチャーリーです。

が

「村山ぁ～～～～！乗れねぇじゃん！」

「あ。そうだった」。

そうです。村山くんのトレノには、薬屋さんから受け取ったブツ

コルゲンのケロちゃん
佐藤製薬のサトちゃん
SS製薬のピョンちゃん

が、座席せましと乗っていたのでした。

なにしろ3体。想像したよりずっとデカイ。
村山くん、助手席がケロちゃんというのは、やはりセオリーなのでしょうか。

「おろせよ。村山ぁ！」

「おろせって言われても・・・。家にこんなの置いてたら不審だし・・・」。

車に乗っててもじゅうぶん不審ですが。

村山くん。
「お前んち、置かせてくれよ」。
僕に言いましたが
「いやぁ～～～。僕んちもちょっと・・・」。

こんなものがあったら母がどう騒ぐか想像がつきません。

そいじゃしょうがない、ってんで、今夜のところは、人形をかかえて乗り込むことに。

助手席の西条くん。
「いいなぁ。チャーリーは。ピョンちゃんで」。

なにがうらやましいかわかりませんが。

「なんなら換わってやってもいいぞ」。
言い返すチャーリー。

しかもこれ。かなり重い。
考えてみりゃ、店頭で風雨に耐えるくらいですから当然と言えば当然です。

運転席の村山くんは安泰か？というと
「ケロちゃん！サイドミラー見えないぞ。もっとひっこめ！」

「ケロちゃんじゃねーよっ！もう下がれねぇって！」

「目玉じゃま！」

「じゃまっつっても・・・」。

「ひっこめろよ。カエルだろ？」

目玉ひっこめられるのはカタツムリだと思うのですが・・・。
村山くん。可愛い人形たちに囲まれ、相当イラついています。

「せめてその上げてる手だけでも下げろ！」

「む、無茶言うな！」

確かに。無茶です。村山くん。

「こんなことならサトちゃんを助手席にするんだった」。

サトちゃんも手上げてますけどね。
鼻もあるし。


バイパスに出ると、時おりとなりに並ぶ車もいて、西条くん、いちいちとなりの車にケロちゃんで挨拶します。

「わははは。驚いてる驚いてる」。

まんざらでもなさそうです。

しかし笑っていられた時間はわずかでした。
目前に車の渋滞が見えて、

「あ！また検問だ！」
村山くんが叫びました。

当時は検挙率を上げる手段が多くないためか、現在よりずっと頻繁に交通検問がありました。
特に夜のバイパスは、まったく気が抜けなかったものです。

当然それる横道はありません。
とたんにトレノも検問の縦列の中に。

「まいったな～。こんなもん積んでて職質は必至だぞ」。
（職質＝職務質問）

が。わずかして西条くんが気づきました。

「あ！あれ五十嵐さんじゃん！」
「ほんとか？」

見るとヘッドライトにうかぶ白バイのメット姿は、確かに五十嵐さん！

「ってことは交機か」。
「だね」。
「免許証の検問かな？」
「さぁ。酔っぱらいかもな」。

「そいじゃぁさぁ」。

村山くん。車を路側帯によせると、ハザードをつけてその場に停車。

検問の中でこれはかなり目立ちます。

コソコソと西条くんたちが車を降ります。
こんな不審な行動を警察が見逃してくれるはずはありません。

ところが。走ってやってきたのは五十嵐さんではない若い警察官でした。
これは予定外。

　うわ～～～。まいったな～～～

後部座席下にはチャーリーが潜んでいますが、当然彼はこのことに気づいていません。

おまわりさん。手にしていた懐中電灯で車を照らすと
「あー！こんなとこで車停めちゃ困るねぇ！」

そりゃそうです。

まったく音沙汰のない車の運転席側にまわると、開いている窓から運転席を照らしました。

「う・・・う・・・・うわぁ！」

おまわりさんビックリ！
なぜって運転席にケロちゃん！


「"ゴメンナサイ オマワリサン　ボク　メンキョナイノ"」


「うぉ、うぉわーーーーーーー！」

そんなに驚かなくってもいいだろ、ってくらい、期待以上に驚くおまわりさんです。

この声に他の車に当たっていた五十嵐さん。反応。
「どうした!?」

「ケケ、ケロちゃんが・・・しゃ、しゃべった！」

「なにをバカなことを。って。あれ？このトレノ・・・・・」。

→ → → → →

「お前らのバカさかげんはほんっとイヤんなるよ」。

「はぁ。すんません・・・」。
「いやぁ。僕はてっきり五十嵐さんが職質来るものだと」。

「それで？運転席にケロちゃん乗せて待ってたのか？」

「はい。五十嵐さんも単調な仕事じゃ飽きるでしょうから」。

「なぁるほどー。君たちは夜勤の本官のことを考えて！」

「そうですそうです」。
「泣かせますよね」。
「市民と警察官のふれあい」。
「ゴメンナサイ オマワリサン　ボク　メンキョナイノ」

五十嵐さん。
「あははは。うまいうまい」。

「でしょ？」

「って言うとでも思ってんのか！バカヤローーーーーー！」

激怒。

「はい・・・」。
「でも市民と警察官の・・・」。

「お前らは二度とふれあわなくっていいっ！」

→ → → → →

結局僕たちは、ケロちゃんとサトちゃんとピョンちゃんの「窃盗容疑」がかけられ、疑いが晴れるまで延々2時間の尋問。

こんなもんに時間をくわれる五十嵐さんもたまりませんが、僕たちにしても午後11時をまわり、予定を大幅にオーバー。

「くそ～～～。あんなに尋問しなくってもいいのに」

まぁ。ケロちゃんと、サトちゃんと、ピョンちゃんですから。
尋問は避けられないところですが

「覚えてろよ～～～～～」。

しっかり交機への復讐を胸に刻む僕たちなのでした。


※最近ランクリ少なくなってめげてます。よろ

人気ブログランキング
ブログ村ランキング

　　　13章-第59話へ→

mixiに「ぼくちゅうコミュ」2000名突破！。mixiやってる方、ぜひどうぞ！
mixi招待状ご希望のかたはこちらから!

携帯でコメント欄が見えない方→こちら
携帯でコメントを入れられない方→こちら
メルヘンポイントが溜まったら～リクエス特権の部屋へ！

関連記事

• 13章-第59話 地蔵泥棒(13)
• 13章-第58話 地蔵泥棒(12)
• 13章-第57話 地蔵泥棒(11)