ぼくたちと駐在さんの700日戦争

悪いトラックには実にバツの悪い電話です。

「あの～～～。すいませんが～～～。五十嵐さん、そちらにいらっしゃると思うんですが」。
おそるおそる僕。

「その前に言うことがあるだろう」。

「えっと・・・愛ちゃんかわいい？」

「え・・・」。

ここで使わずいつ使う？救世主！

が、
「毎度その手にのるかっ！」

今回は手強い。
それどころか駐在さん。
「まったく。キサマときたら。親の顔が見たいもんだな！」

「え？駐在さんは、母、見たことあるでしょ？」

「え？あ？えっとーーーーー。もう一度見たい」。

なんだそれ。意味が違って聴こえるぞ。

「それより五十嵐さん・・・・」。

「今日はもう帰った！明日また来るから会いにこい」。

「はぁ・・・」。


翌日、昼に集まった僕たち。

「え？それって罠じゃない？」
「そうだよ、駐在の罠に決まってるって」。

駐在所が罠をひいてるってこと自体が、普通の町じゃ考えられません。

「うーん。でも五十嵐さんだからなぁ。クイーンの引き取り手の話ってのもありえるわけで」。
「うーん・・・・」。
「そうだよなぁ・・・」。

かつ、素直に交番を訪ねることができない高校生たち。
いつの間にこんなふうに育ってしまったのでしょう？
ああ、やな町だ。

というわけで、この日は、めいっぱいの防御をして駐在所を訪れることにしました。

と、決定したところで

「ところでよ。ミス・マスカットって知ってるか？」

またしても、西条くん。今度はみんなに言いました。

「ああ。知ってるよ」。
「それがどうかしたか？」
「夕子はダメだぞ！」

「いや。ミスになるとな。賞金20万円とハワイ旅行なんだとよ」。

「ああ。それが？」
「夕子はダメだぞ！」

「うん。いくらになったかわかんねぇけど、クイーンの治療費ってすごくなってるだろ？」

「うん・・・・」。「確かに・・・」。

そうです。初診の時以来、BJから請求はありませんが、おそらく「法外な」治療費になっていることは間違いありません。

「それで？」

「もうジェットストリームの残りも少ねぇしよ。絶対足りないと思うんだ」。

「うん」。「ああ」。

「あのな・・・」。
と、西条くん。
顔をよせる僕たち。



「えええええ？ミスコンにジェミーを出すぅ???」

「ばっかじゃねぇの？お前！」

「っていうか絶対やです～～～～～～」。

だんぜん拒否のジェミー。
そりゃそうだ。男だし。

「だって20万だぞ！20万」。
西条くん。どうもこのミス・マスカットにこだわります。

「いや。それミスになったらだろ？」
「ってーか、男ってバレたときのこと、考えてるか？」

「そうですよー！だいたい膨らみどうすんですかーーー！水着ですよっ！」

「ああ？そうだなぁ。チャーリーならぜんぜんバレないんだけどな」。

「バレるってっ！」
チャーリー憤慨。

「そんなもんトクホン貼ってしまえ！」

いや。・・・トクホンって・・・。

そんなもんで騙せるか？

当然ジェミーは
「かんべんしてください～～～～。だいたい貼ったあと剥がすの、ものすごっ痛そうです～～～」。

言えてる。
それ以前の反論もありそうなもんですが。

西条くん。
「いや、Vゾーンは身だしなみだぞ？」

「え・・・・Vゾーン？」。

一瞬ひるむジェミー。

が、

「ぜっっったいヤです～～～～～～！」

そりゃそうだ。

ところがところが
「いや。それおもしろいかも」。

こういう話に即反応し始めるメンバー。

「だろだろ？」
「うん。おもしれー」。
「トクホンもおもしれー」。
「Vゾーンは身だしなみ」。
「涼しそうだ」。

「おもしろくありまっせんっっ！涼しくなくっていいんですっっ！」

ジェミー必死の攻防。
なにしろ言い出した限りは必ず実行してきた西条くん。悪い意味での定評があります。

「そっかぁ。ま、ジェミーがイヤって言うんなら・・・」。

「ふぅ・・・」

ホッと胸をなでおろしたジェミーでしたが

「トクホンじゃない手考えるか・・・・」。
「そうだな。サロンパスとかな」。

「ちがいがわかりませんっっっ！」

「アンメルツは？」
「いや、塗ってどうする」。
「え？凝りとれるだろ？」
「あー、そっかぁ」。

「なんの凝りですかーーーーっっ！」
まだまだ叫ぶジェミー。

「誰が塗る？」
「俺はやだな」。
「涼しそうだ」。
「わははははは」。

すでに具体策。


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