ぼくたちと駐在さんの700日戦争

※スタンプラリー


ミニ知識：駐在さんには実は年の離れた兄がいます。ぼくちゅうに登場するとすれば最後のほう。
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第10話 夏まつりの夜(2)

僕たちの「お掃除事情」に、めちゃくちゃウケまくる駐在さん。

これに腹を立てた僕たちは、急遽、杉木立の暗がりに移動し、復讐策を練りました。

そして作戦決定！

階段を降りると、出店のソフトクリーム屋へ。


僕たちは、ソフトクリーム2つ購入し、ひたすら待機しました。

すると案の定、期待した人物たちが現れました。
それは見回りのおまわりさんたちです。もちろん駐在さんとは別の人。

見回りのおまわりさんは、駐在さんよりは上のかたのようでした。
年功序列の組織ですから、こういうのを見分けるのは簡単です。

僕たちは、これを確認すると、人ごみに紛れながら階段をこっそりと昇り、駐在さんが見える位置にもどりました。

作戦開始！

「おまわりさん。西条たち見かけませんでした？」

「なんだママチャリ。はぐれたのか？わははは。高校生にもなって！？わははは」

くっそ～。いちいち癇にさわる言い方をするヤツです。

「見かけなかったぞ。ワタアメの店にでも行けば指くわえているんじゃないか？わはは」

そんな案内ありか？

すかさず
「うっ、は、腹が、腹がいたいっ」

「？」

「お、おまわりさん。す、すいません、トイレ行って来るんで、これ持っててください」

と、手渡したのは2つのソフトクリーム。

「す、すぐもどりますから！」

と言って、あっけにとられる駐在さんを残して大急ぎで人ごみに消える僕。

残ったのは、両手に1コずつソフトクリームを持った駐在さん。

まぁ〜、目立つ目立つ。

祭りを行き来する人たちが「なにこのおまわり、勤務中に」という目で見ていくわけです。

しかしソフトクリーム。水平を保たなくてはなりませんから、他に持ちようがありません。
ソフトクリームを両手に持ったまま仁王立ちの駐在さん。
へんな警備。

が、ソフトクリームが武器として恐ろしいのは、その後です。

夜はいくぶん涼しいとは言え、そこは夏。やがてソフトクリームは溶け出し、ドロドロと手にかかり始めました。
困った駐在さんは、ときおり知らぬふりをして、手にかかったクリームを舐めます。
他に対処方法がありません。

この頃になりますと、すでに何度もやられている駐在さん。これが謀略であることに気づきます。

「くそぉ～。覚えてろ、ママチャリ～」
と、恨み言を言いながらも、とうとうソフト本体も舐め出す駐在さん。

「ああー。あいつらを射撃訓練で使えたらスカっとするだろうなぁ・・・」
なに、おっかねーこと平然と言ってやがる！？

が、
やがてそこへ目的の方、つまり見回りのおまわりさんが昇って来ました。

「ご苦労さん！」
「はっ！おつかれさまです！こちら異常ありませんっ」
と、ソフトクリームを持ったまま敬礼する駐在さん（笑）
これが上司の目に止まらぬわけもなく、

「なにを持ってるんだ？君は」
「こ、これは市民に頼まれまして・・・・」
「そんなものを引き受けたら仕事にならんだろう！」
こっぴどく怒られる駐在さん。

しかし、これが予想以上の怒られ方だったので、さすがに申し訳なくなりまして、僕たちはのこのこと駐在さんたちのところへ。

「おまわりさん！ありがとうございました！」
と、ソフトクリームを引き取りに行きました。
そしてさらに
「ああ。こんなやさしいおまわりさんがいてよかった。みんなに断られて困り果てていたんです」
と、わざとくさく上司に向かって言いました。

「おかげで助かりました！おまわりさんは恩人です！ほんっとにありがとうございました！」
と、必要以上に褒め、さらに

「このかた○○駐在所の駐在さんですよねぇ。こんな素晴らしい方を配置してもらえる町はホント幸せです！」
とまで加えました。

さすがに市民に絶賛されまくった部下を責めるわけにもいかず
「いやいや・・・困ったときはなんでもおまわりさんに相談しなさい・・・・」
上司はそこを立ち去りました。

まぁ。あれだけフォローしておけば大丈夫でしょう。
駐在さんは、まだ怒りの表情でしたが・・・。

そして・・・



やがて人がまばらになり、祭りも終わりに近くなった頃、その出来事がおきたのです。




「あ、やっと、やっと見つけた！」

「・・・あれ？」「・・・夕子ちゃん？」

息も切れ切れにかけよってきたのは、グレート井上くんの妹・夕子ちゃんでした。

西条くん、
「いかんなぁ。夕子ちゃん。祭りは浴衣って言ってあるでしょ？」

　いつ言った？
　そりゃお前の勝手な願望だろうが！

夕子ちゃんは、ニコリとする余裕さえなくって、

「それどころじゃないの！お兄ちゃんが・・・・お兄ちゃんがたいへんなの！」

夕子ちゃんの家、つまりグレート井上くんの家は、とにかく厳格な家で、とてもこんな時間に女の子を外に出したりしません。
それは、「よほどのことが起きた」ことを物語っていました。


「井上がどうしたんだ!?」



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