「200万円かぁ」。
「すげーなぁ」。
「200万っていえばお前・・・」
「ん?なんだ?西条」。
「地球征服できるよな」。
「ああ。お前ならな。きっとできるよ・・・」。
「で。どうする?みんな苦労したし。等分に分けようか?」
その日、僕たちは、夕涼みの名所でもある神社に集まり、頭をひねっていました。
それは数日前のこと。
残り100万の手形の決済日が迫る中で、僕は、坂本家を訪れていました。
「権利を売る?」
「ええ。ジェットストリームはうまくいった商売ですから。やりたいかたはたくさんいます。だから電話番号ごと権利を売るんです」。
現在はこういう「既得権」の売買はめずらしくありませんが、こういう取引はまだ日本にはなじまぬ頃のことです。
それでも電話の権利自体、今よりずっと価値が高く、それだけで15万円くらいの価値はありました。
僕たちは、夏休みが終えれば、この商売は不可能になるので、まとめて売ることを思いついたのです。
が、坂本くんのお父さん。
「ありがとう。高校生の君らにそこまで考えてもらって。でも、もう大丈夫だ」。
「え?」
「わたしのとこも、その間ただ手をこまねいていたわけじゃないからね。ちゃんと仕事してたし」。
「あ。そうでしょうね」。
とは言うものの、実はまったく頭からはふっとんでいました。
「だからね。100万円くらいはちゃんと落とせるよ」。
「あ、そっか!よかったです」。
「それでね・・・これ・・・・」。
坂本くんのお父さんは、デスクにもどって引き出しを開け、なにやら小さなふろしき包みを持ってくると
「これね。君らが買い戻してくれた手形分。足りないかも知れないが。受け取ってくれ」。
「え!」
テーブルに200万円の現金。
「え!いえ、こんな。受け取れません!」
「いいんだ。君たちには私もたいへんなファイトをもらった。本当にありがとう」。
「え?で、でもこれは」。
しかしとなりに座っていた坂本くんも
「先輩。受け取ってください。父ももう大丈夫って言ってますし」。
「しかし・・・・」。
「もう抵当権もはずれたしね。これからは商売に邁進するよ」。
そうか。早乙女さん・・・。抵当権、はずしてくれたんだ・・・。
神社。
「にしても。あと少しでまたお祭りなんだな」。
「ああ。去年は暴れたっけな」。
「というか。姫沼の騒ぎでそれどこじゃなかった」。
「ああ。確かにな」。
わずか1年前の出来事でありながら、はてしなく時がすぎた気がしました。
「あ。そうだ。チャーリーのスティングレイな。もう走るんだってよ」。
「え?すごいなそりゃ!」
「見に行こうか?」
「おお!」
みんなは、様々なものに分乗してチャーリーの小屋へ。
みんながここに集まること自体、本当にひさしぶりのことでした。
それほどに、いろいろな役割で忙しかったのです。
夏の小屋は、前回見た時とは比較にならないほどにうっそうと生いしげった茂みにつつまれていました。
「チャーリー!」「チャーリー、いるかぁ?」「先輩~~~」。
「おーーーー。みんな来たのかぁ」。
そしてそこには・・・
「うわ!すげ!」
大きなゴーカートというか、見た事もない形の、大きな大きなスティングレイ2号の勇姿が!
「で、でかくなったな。スティングレイ」。
「ああ」。
「なんか刺激したのか?」
「いや。刺激で車でっかくなんないから」。
「いや。チャーリーはでかくなんないけど、俺らのはデカくなるぞ?」
「どういうたとえだぁ?ぁあ?西条ぉ!」
「まぁまぁまぁまぁ」。
なだめる僕たち。
そうです。作り始めた時には、ゴーカート並みだったはずのスティングレイ2号。
それがなんと軽自動車ほどの大きさ、いえ、あるいはそれ以上の大きさになっていました。
チャーリーが説明します。
「エンジンがよ。力強すぎて、ちっちゃいボディじゃ吸収しきれねぇんだ」。
「あ。パワーでかくて?」
「うん。ちっちゃいとすぐウイリーしちまうんだ」。
(ウイリー=後輪の勢いで押されて前輪が上がること)
「すげぇな。CB750」。
「うん。だからへんに間延びした車になっちゃった」。
確かに。それは運転席、エンジンまでは普通の配置でありながら、そこから後輪までずいぶんと距離がありました。
「へんなカッコになっちゃったなぁ。スティングレイ」。
「ま。しかたないよ。普通のゴーカートって100ccくらいだからな。7倍以上あればなぁ」。
とは言うものの、チャーリーもいささか気にしているようでしたが。
孝昭くん。
「で?走るのか?」
「ああ。走るんだけどな・・・・」。
「けど?」
「でかいんで、ここのコースじゃ無理なんだ。コーナリングさえできない」。
予定外に大きくなったスティングレイにとって、小屋についた広場は、どう見ても不足。
「じゃ。まだ試走してないのか?」
「いや。したけど。こっからあそこまでだけ」。
僕たちはまた唸っていました。
「うーん」。
「公道使うしかないかぁ」。
「いや。これ公道走ったら違反だろ?」。
「なにに当たるのかな」。
「やっぱ軽車両じゃないか?」
「750で?」
「ああ。耕耘機も軽車両だからな」。
それでも田舎のことです。いくらでもそんな道路はありました。
「でもスティングレイには、もっと華々しいデビューをさせてやりたいな」。
「しかし軽車両となるとなぁ」。
「うん。道路交通法、ビシバシだな」。
ここで森田くんが
「だって道路交通法は馬まで適用されてるんだぜ?」
「馬?」
「ああ。今でも馬は左側通行だし、きちんと法律の適用があるんだ」。
「え~~~。馬もかよ」。
「猪は?」
「い、いのししはどうかな・・・」。
そんな質問、森田くんだって困ります。
「カピバラは?」
「赤カンガルーは?」
「コアラ・・・」。
「うるさいなぁ。コアラ走らせてレーダーにつかまるかやってみればいいだろ?」
「レーダー?」
森田くんが思わず吐いたこの一言に、みんなの目が輝きました。
※本日2話連続アップ。続けて第97話へどうぞ→
「すげーなぁ」。
「200万っていえばお前・・・」
「ん?なんだ?西条」。
「地球征服できるよな」。
「ああ。お前ならな。きっとできるよ・・・」。
「で。どうする?みんな苦労したし。等分に分けようか?」
その日、僕たちは、夕涼みの名所でもある神社に集まり、頭をひねっていました。
それは数日前のこと。
残り100万の手形の決済日が迫る中で、僕は、坂本家を訪れていました。
「権利を売る?」
「ええ。ジェットストリームはうまくいった商売ですから。やりたいかたはたくさんいます。だから電話番号ごと権利を売るんです」。
現在はこういう「既得権」の売買はめずらしくありませんが、こういう取引はまだ日本にはなじまぬ頃のことです。
それでも電話の権利自体、今よりずっと価値が高く、それだけで15万円くらいの価値はありました。
僕たちは、夏休みが終えれば、この商売は不可能になるので、まとめて売ることを思いついたのです。
が、坂本くんのお父さん。
「ありがとう。高校生の君らにそこまで考えてもらって。でも、もう大丈夫だ」。
「え?」
「わたしのとこも、その間ただ手をこまねいていたわけじゃないからね。ちゃんと仕事してたし」。
「あ。そうでしょうね」。
とは言うものの、実はまったく頭からはふっとんでいました。
「だからね。100万円くらいはちゃんと落とせるよ」。
「あ、そっか!よかったです」。
「それでね・・・これ・・・・」。
坂本くんのお父さんは、デスクにもどって引き出しを開け、なにやら小さなふろしき包みを持ってくると
「これね。君らが買い戻してくれた手形分。足りないかも知れないが。受け取ってくれ」。
「え!」
テーブルに200万円の現金。
「え!いえ、こんな。受け取れません!」
「いいんだ。君たちには私もたいへんなファイトをもらった。本当にありがとう」。
「え?で、でもこれは」。
しかしとなりに座っていた坂本くんも
「先輩。受け取ってください。父ももう大丈夫って言ってますし」。
「しかし・・・・」。
「もう抵当権もはずれたしね。これからは商売に邁進するよ」。
そうか。早乙女さん・・・。抵当権、はずしてくれたんだ・・・。
神社。
「にしても。あと少しでまたお祭りなんだな」。
「ああ。去年は暴れたっけな」。
「というか。姫沼の騒ぎでそれどこじゃなかった」。
「ああ。確かにな」。
わずか1年前の出来事でありながら、はてしなく時がすぎた気がしました。
「あ。そうだ。チャーリーのスティングレイな。もう走るんだってよ」。
「え?すごいなそりゃ!」
「見に行こうか?」
「おお!」
みんなは、様々なものに分乗してチャーリーの小屋へ。
みんながここに集まること自体、本当にひさしぶりのことでした。
それほどに、いろいろな役割で忙しかったのです。
夏の小屋は、前回見た時とは比較にならないほどにうっそうと生いしげった茂みにつつまれていました。
「チャーリー!」「チャーリー、いるかぁ?」「先輩~~~」。
「おーーーー。みんな来たのかぁ」。
そしてそこには・・・
「うわ!すげ!」
大きなゴーカートというか、見た事もない形の、大きな大きなスティングレイ2号の勇姿が!
「で、でかくなったな。スティングレイ」。
「ああ」。
「なんか刺激したのか?」
「いや。刺激で車でっかくなんないから」。
「いや。チャーリーはでかくなんないけど、俺らのはデカくなるぞ?」
「どういうたとえだぁ?ぁあ?西条ぉ!」
「まぁまぁまぁまぁ」。
なだめる僕たち。
そうです。作り始めた時には、ゴーカート並みだったはずのスティングレイ2号。
それがなんと軽自動車ほどの大きさ、いえ、あるいはそれ以上の大きさになっていました。
チャーリーが説明します。
「エンジンがよ。力強すぎて、ちっちゃいボディじゃ吸収しきれねぇんだ」。
「あ。パワーでかくて?」
「うん。ちっちゃいとすぐウイリーしちまうんだ」。
(ウイリー=後輪の勢いで押されて前輪が上がること)
「すげぇな。CB750」。
「うん。だからへんに間延びした車になっちゃった」。
確かに。それは運転席、エンジンまでは普通の配置でありながら、そこから後輪までずいぶんと距離がありました。
「へんなカッコになっちゃったなぁ。スティングレイ」。
「ま。しかたないよ。普通のゴーカートって100ccくらいだからな。7倍以上あればなぁ」。
とは言うものの、チャーリーもいささか気にしているようでしたが。
孝昭くん。
「で?走るのか?」
「ああ。走るんだけどな・・・・」。
「けど?」
「でかいんで、ここのコースじゃ無理なんだ。コーナリングさえできない」。
予定外に大きくなったスティングレイにとって、小屋についた広場は、どう見ても不足。
「じゃ。まだ試走してないのか?」
「いや。したけど。こっからあそこまでだけ」。
僕たちはまた唸っていました。
「うーん」。
「公道使うしかないかぁ」。
「いや。これ公道走ったら違反だろ?」。
「なにに当たるのかな」。
「やっぱ軽車両じゃないか?」
「750で?」
「ああ。耕耘機も軽車両だからな」。
それでも田舎のことです。いくらでもそんな道路はありました。
「でもスティングレイには、もっと華々しいデビューをさせてやりたいな」。
「しかし軽車両となるとなぁ」。
「うん。道路交通法、ビシバシだな」。
ここで森田くんが
「だって道路交通法は馬まで適用されてるんだぜ?」
「馬?」
「ああ。今でも馬は左側通行だし、きちんと法律の適用があるんだ」。
「え~~~。馬もかよ」。
「猪は?」
「い、いのししはどうかな・・・」。
そんな質問、森田くんだって困ります。
「カピバラは?」
「赤カンガルーは?」
「コアラ・・・」。
「うるさいなぁ。コアラ走らせてレーダーにつかまるかやってみればいいだろ?」
「レーダー?」
森田くんが思わず吐いたこの一言に、みんなの目が輝きました。
※本日2話連続アップ。続けて第97話へどうぞ→
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- 12章-第97話 走れチャーリー号!(2)
- 12章-第96話 走れチャーリー号!
- 12章-第95話 覚醒
初登校です(^U^*)
毎日ぼくちゅうに元気をもらいながら大学受験に向けて頑張ってます
いよいよチャーリー大活躍ですねー!!
続きが気になる♪
レーダー!!!???
もしや・・・・
まさか~~
ついに走るんですね~。
待ってました~。
刺激で大きくなる意味最初わかりませんでした(*^^*)
レーダー!!!
また捕まるのかな?
歴史は繰り返す?(笑)
レーダー?
と聞いて思いだすのは、やっぱり駐在さんとの因縁のはじまりのシーンですけど……???
つ、つづき!!!
意味ありげな「レーダー?」
またアレじゃないだろうな?
スティングレイ見てみたいです
スティングレイ完成したんですか。
やっぱり道路で走ったら駐在さん来ますねえ~
レーダーですか。楽しみです。
レーダー・・・まさかまたあんな事をするなんてこと・・・
これは次が楽しみww
もしかして??
またやるんですか^^
ついにチャーリー号見参ですね。
以前のアレ使うんですか?
ついにスティングレイ完成!ひさびさのレーダー妨害か!?
神社のお祭りの回想シーンに、時の流れを感じますね。
それにしても、スティングレイ、ちょっと変わった格好がエイにはぴったりかも。
チャーリー天才
チャーリー号だ!!
いよいよ、走るのでしょうか?!ワクワク
200万で地球征服!?
今の相場でいくらですかっ?
西条君、一緒に世界をこの手に掴み取ろう!!
レーダー?????
なんだか俺たちは風をおもいだしますね・・・。
まさか!?!?!?
もう一回???
いよいよ走りますか~~♪
ふふふ・・・。
さいじょう・・お前に世界をやろう・・・。
坂本くんの家、良かったです。
200万円、何に使うのかな?
ママチャリくん達のことだから、面白い使い方考えそう(笑)
あとはスティングレーですね。
レーダーって聞くだけでワクワクしちゃいます♪
スティングレイとスーザホン!
あ~、にて・・る・・かな??
無事 坂本くん所もかたついてやれやれ。
当時の軽自動車って360ccだったっけ? 660ccも出てたかな?
追記:550ccが出始めた頃だったみたいですね。
CB750ccのエンジンはそれなりに大きく見えてたなぁ。
そりゃごつくもなります。
またレーダー??
「なんか刺激したのか?」
誰のセリフかすぐ分かった私。
もうすっかりぼくちゅうにはまってますね。
全てが上手く終わる感じ…
今回も長い戦いでした。
レーダ???何が起こるか楽しみです。
皆の目が輝いてます、ありがとうございます。
車に刺激…
でっかくなっちゃった!
なんてね(^_^;)
>みつきさん 初登校!初級長!
いらっしゃいませ!
受験、がんばってくださいねー!
一番載り認定!
リクエス特権授与!
>いよいよチャーリー大活躍ですねー!!
続きが気になる♪
はい。ここからずっとチャーリー、大活躍です!
乞うご期待ですね!
スティングレイ出来たんですね。次へ。
お父さんも意地を見せたね。
かっこいい。
また、レーダー。
懲りないですねぇ。
レーダー!
おお、なつかしい(笑)
レーダーですか!ぼく駐の原点に戻るんでしょうか?
すごい、うれしいことがいっぱい!!
坂本パパもがんばってくれたし、(カッコイイ!)
早乙女さんも抵当権、はずしてくれた(アリガト!)
なにより、チャーリー号が完成してる!!
チャーリー、がんばったんだねぇ!!
わたるくんにも見せてあげたいよ!
では、後編へGO~~~!!
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……刺激、か。
あ、鼻血www
(*´艸`)
若いってーのは素晴らしい、と感じつつ…
次いきまそかね♪
無事解決!!坂本家のみなさん、おめでとう
ございます。
法律の話は、難しかった・・・
へっ?私の出身学部?法学部です・・・
坂本君の手形問題は解決しましたね!
レーダーって。。
ま・さ・か!?
坂本くんオメデトウ!!
早乙女さんいい人で良かったです・・・。
あっ! 森田くん言っちゃった・・・・。
坂本家の手形問題も解決してくれてよかった
チャーリーすごいですね
自分も夢が整備士なので親近感が沸きます
レーダー♪レーダー♪
んぢゃ次!!
坂本くん、よかった~~(´▽`) ホッ
坂本パパも頑張ってくれてたんだね!
スティングレイもいつのまにか完成!?
すごいすごい!!
坂本家はみんなのおかげで救われたんですね(^O^)
よかったよかったぁ☆
んん?
レーダー?
続いて次読んできまぁす。
ジェットストリームとかの稼ぎだけで、世界征服できちゃうよ(笑)
虹色家族なんて目じゃないよ(爆)
レ、レーダー?
風?それとも、カメ?
さっ、次行こ、次
大大遅刻
レーダーかぁ。
やっちゃうの。
ぼくも早くバイクにのりたいです。
今さらですが・・・
レーダーって ほぼ一年がかりの伏線??
もうレーダーのシーンはないかと思ってました。
ゾクゾクしてきましたよ☆
坂本君のお父さん太っ腹、高校生に200万円もの現金渡しちゃうなんてぇ・・・。
チャーリーのスティングレイ2号も完成してるし、スゴイ、スゴイ!!!
それにしてもレーダーがどう係って来るのか、ちょぴり心配ですぅ。
また、駐在さん”怒る”んですかねぇ???