ぼくたちと駐在さんの700日戦争

やがて駐在所が見えてくると、そこには数人の人影が見えました。

駐在さんと・・・。
なんとチャーリーと孝昭くん。考えることは同じなようです。

しかしペンキ塗りをしていたのは駐在さんでした。

「なんだ。ママチャリ、お前も来たのか」。

「あ？え、ええ。孝昭、チャーリーお前らも？」

すると、孝昭くん。
「い、い、いや。お、俺は偶然だ。偶然。なんかこのへんで伊賀者の気配がしたからよ」。

ほほぉ。伊賀ものの・・・。

「チャーリーは？エプロンまでかけて・・・」。

「え！い、いや。お、俺はほら。ペペペ、ペン、ペン・・・ペンギンでも探そうと思ってさ。裏山で・・・」。
一生見つからないと思うぞ。チャーリー。
ずいぶんな偶然で3人も集まったものです。

と、そこに後ろから

「ありゃ？先輩？」。

ジェミーと・・・。西条くん。

「あれ？お前らまで？」

西条くん。
「てててて、てめーらこそなにやってんだ！こここここここ、こんなとこで」。

「西条こそ」。

「え！いや。お、俺はぶぶぶ、ぶ、部活だ！部活！」

「へぇ。めずらしくまじめだな」。

「えーーーーっと。それがな。なな、なんか、メ、メキシコからミルマスカラスがコーチに来るってんでよー」。

ミルマスカラス・・・。陸上もやるんだ。覆面つけて。
しかもこんな田舎に。


と、なんだかんだで全員集合。


駐在さん。ローラーを動かす手を休めることなく

「お前らは・・・ったくなぁ」。

「偶然だっつってんだろ！！バカ駐在！」

しめしあわせたように一斉に口を合わせるメンバーたち。

にもかかわらず
「お、お前はなんなんだよ」。

孝昭くんがたずねましたので

「えっと・・・。ぼ、僕はポプラでバイトだよ」。

僕の理由だけは信憑性があったにもかかわらず

「こいつはなー。落書きさせるだけさせといてなぁ。消しにも来ないんだな」。
「うん。こいつ、人間じゃねぇな」。
「うん。人間失格だ」。
「先輩、人間じゃないです～」。

「お、お前ら！うらぎんのか！」

「あはははははははは」。


「でも、お前ら作業してないじゃん」。

すると、孝昭くんとチャーリー。

「うん。俺ら現場監督だから」。
「そうそう。監督」。

しかし、駐在さんが作業をしていた理由は別にありました。

僕たちの落書きが写っていた壁に、なにやら赤い文字が見えます。

　夜桜連合参上

「駐在ぃ。その落書き・・・・」。

西条くんの問いに駐在さん。
「ああ。夜中にやられたらしい。落書きあるとこはな、連鎖的に増えるもんだ」。

「す、すんません・・・」。

「あ？西条。お前らが気にすることはない。族に落書きされるなんてなぁ、警察もなめられたもんだ」。

孝昭くん。
「だから俺らが消すっつってんのになー」。

「お前らの書いたもんじゃないのに、お前らに頼めるか」。

「え！町掃除させたり、パトカー洗わせたりはするのにか？」

すると駐在さん。

「あ！」

「ん？」

ローラーとペンキを僕に渡すと

「西条もたまにはいいこと言うな。やっぱお前らがやれ」。


え～～～～～～～～～～～～。

駐在さん。そう言うと、さっさと奥へとひっこんでしまいました。


結局、ペンキ塗りはチャーリーがひとりでやることになりました。

僕たちは、まわりでそれを見ながら

「夜桜連合・・・。この町にもだいぶ来るようになったな」。

「ああ。こないだポプラにも来たんだ。かなり屋でも聴いただろ？」

西条くん。
「孝昭たちはこないだやったんだってな。夜桜と」。

「ああ。村山運転でからまれてな。酔ったいきおいで何人かやった」。

「となると全面対決間近かなぁ・・・・」。

「いや。今全面対決したら、こっちボロボロだぞ」。

西条くんはすでに戦った相手。彼の分析は間違いありません。

「なんかいい手思いついてんのか？」
孝昭くんが例によって僕にたずねます。

「うん・・・。まぁ。井上とも話し合ってるけどね。大丈夫だと思うよ」。

「たよりになるなー。極悪頭脳」。

「だからそれ褒め言葉じゃないってのになー」。

「ただ、まだ情報がイマイチ少ないんだよね。町違うから」。

「久保は？」

そうです。僕たちには情報通の久保くんという頼りになる存在がいました。

「あ。そうだな。久保ならなんか情報得られるかも知れない」。


ここで、ようやくペンキを塗り終わったチャーリーが

「これ2度塗りしないとダメだな。赤い字、消えないや」。
「そっか。じゃぁ乾くの待つか」。
「ひでぇもんだな」。
「ああ」。

チャーリーのエプロンは、すでにペンキで汚れていました。
これを見た孝昭くん。

「お前のエプロン。なんかみっともなくなったなぁ」。

「あ？いいんだよ。どうせ作業用だから」。

「そっか！」

と、孝昭くん。ローラーをペンキに入れると、いきなりチャーリーのエプロンにベロっとペンキを塗り付けました。

「げ！なにすんだ！孝昭ぃ！」
「いや。いっそ塗りつぶしたほうが奇麗だと思って」。

「や、やかましい！」

チャーリー。ハケを手にとると、これをおもいっきり振り回し孝昭くんに応戦！
しかし、ふりまわしたものですから、ペンキが全員に飛び散ります。

「げ！」
「バカか！チャーリー！」

僕たちは全員顔まで白いまだら模様。

「てめぇ！バカ野郎！」

西条くん、なんとペンキに手をつっこみ、ダイレクトにチャーリーの顔に襲いかかりました。
ハケで応戦するチャーリー。
しかし多勢に無勢と心得たか、またハケをおもいっきりふりまわしたから大変です。

飛び散るペンキは、人間ばかりでなく、道路や電柱、駐在所にもふりかかり、あっちもこっちもまだら模様。

争いは争いを呼び、すさまじい内戦に発展！

あたりはさながら雪景色です。


と、屋内にひっこんでいた駐在さんが

「おーい。ご苦労だったな。お前ら中で桜餅でお茶・・・・・あ？」

駐在さんの目にうつったのは、まだら模様の僕たちと・・・。そしてまだら模様の駐在所。まだら模様の道路と、まだら模様の電信柱。

「ばば、ばかやろーーーーーー！」

ようやく我に返る僕たち。

「す、すいません・・・」。

「これじゃ暴走族の落書きよりひどいだろうがっ！」

「えっと・・・そんなつもりでは・・・」。

「お前ら！全部復旧するまで帰さんからな！」

「はい・・・」。

「ああ・・・お前らにまかせた俺が馬鹿だった・・・・」。
泣き出しそうな駐在さん。

「えっと・・・駐在さん。桜餅は・・・・」。

「喰わすかっ！」

「そんな・・・」。

「お前ら冬景色好きみたいだからな。桜にゃまだ早い」。




人気ブログランキングにはプチ予告ついてます（予告が変わっていない場合は、後ほどアクセスしてください）

　　　　10章-第31話へつづく→


mixiに「ぼくちゅうコミュ」ついに800名突破で大賑わい！。mixiやってる方、ぜひどうぞ！
mixi招待状の欲しいかたは、トップページから!

関連記事

• 10章-第31話 禁じられた遊び(5)
• 10章-第30話 禁じられた遊び(4)
• 10章-第29話 禁じられた遊び(3)