ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「き、北女に登校したぁ？」

「はい～」。
登校って・・・なんておもいきったやつ・・・。

「他所の学校登校したの初めてでした」。

いや。それ以前に女装で女子校に登校したってのがすごすぎる・・・。

「いや。放課後ですよ。放課後」。
「なんでまた？」
「えっとー。お欄さんに呼ばれて」。

「早苗さんに？」
名前がふたつあると、どうもややこしくていけません。

「みんな先輩が悪いんですよっ！」
「え？悪いってなにが？」

「だって和美先輩の下着もらって来なかったでしょ！」

いや。なんで人通りの多い廊下でそういうことを言うわけ？
しかも大声で。

「先輩がちゃんと和美先輩の下着さえもらってくれればー・・・」
僕はあわててジェミーの口をふさぐと
「いや！ジェミー！悪かった。悪かったからこっちこい」

階段下にジェミーを誘い込みます。
これ以上、固有名詞付きで「下着下着」言われてはかないません。

「だからって、お欄さんとこにもらいにいったのか？お前」。

「いえ。ちょっと頼まれ事があったからですけどね。その交換条件に」。

お欄さんに交換条件つきつけたわけ？

「いやー、なんか部下の子からはめてたブラとりあげてよこしてくれたんですよ～」。

なんつーことをするんだ？スケ番・・・。

「あれですね！先輩！ブラのぬくもりってたまりませんね！ね！」

ね、とか言われても経験ないからわかんないってば。
だいたい声がでかい・・・こいつ・・・。

「お前声が・・・」

「あ？聴こえませんでした？ブラのぬくもりがですねぇぇぇぇ」

ばかっ！
そんなとこ復唱してほしいわけじゃねーって！
階段の上でざわつきが聴こえます。

「そ、それで？」

「はい。交換条件で敵の潜入調査してきたんですが・・・」

「どこの？」。

「北女ってミッション系でしょ？で、すぐそばに学校と同じとこが運営する教会あるんですよ」。

ここにも・・・。教会・・・

「で、どうやら北女の子もひっかかったらしくって、それに激怒したお欄さんが・・・」
「右京を探してる？」

「近いですねー。ニアピン賞」。
「近い？」

「それが右京じゃないんですよー。あいつ下っ端です」。

右京が・・・下っ端？

「はい。思ったより手強そうですよー。先輩」。

そうか。こいつの情報源はお欄さんだったのか・・・。

「そいでねー。あいつらのまわってる教会の一覧ゲットしましたっ！」

「ほ、ほんとか？でかしたぞ！ジェミー！」

「で？それどこにあるんだ？」

「内ポケットに入れてあります」。

「よし。見せろよ」。
「やです」。

「はぁ？」

「和美さんのブラ、手に入れてくれるまで渡しません」。
「なに言ってんだ！ばか！」

こうなったら強硬手段しかありません。なにしろ相手がジェミー。
僕はジェミーの学生服のボタンに手をかけました。

「や、やめてください～、先輩～」

「いいから！」

「あーーーー！だめーーーーー！」

「お前後輩だろ！？言うこと聞け！」

「な、なにするんです～、いくら先輩後輩だからってダメです～」

「うるさい！おとなしくしろっ！」

「あ！そ、そんなことをしたらーーー・・・・」。

「やかましい！さわぐんじゃない！」

「だめ、だめ、だめですってばーーー。せ、先輩ーん」。

ヘンな声で騒ぎたてるジェミー。
ようやく学生服の第二ボタンをはずし、そこに無理矢理手をつっこんで内ポケットにたどりついた時

「先輩。みんな見てますぅ」

えっ？

ふと振り返ると、階段下のまわりには、たくさんの人垣。なにごとかと集まって来ているのでした・・・。
先生・・・まで・・・。


「ごむたいな」。

バカヤローーーーー！！！




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　　　　　8章-第19話へつづく


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