ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「えーい！おくれをとるな！いけ～～～～」

阿部殿×4、南川殿×1、相田殿×2、高松殿×1、井本殿×2、園田殿×1、討ち死に。

「淀殿！家康の軍勢が本丸に～～～～～～」

康恵姫×2、はるな姫×2、真央姫×1、あや姫×3、まさ子姫×2、れい子姫×3、ご自害～～～～

「おお・・・・なんということ・・・みなの者！秀吉様の城だけは守るのじゃ！」

「はは～～～～～！」

遠藤殿×3、田中殿×2、立石殿×1、石田殿×1、後藤殿×3、討ち死に。

『大阪冬の陣』つづく・・・



「その人はね～～～」。

夕子先生。もったいをつけたのか、言いづらかったのか。
なかなか続きを話し出さない。

でも、女子たちの「わくわく」な目を見てようやく

「兄の友達だったの」。

「おお～～～～～～～」
「めばえる～～～～～」

なにが芽生える？
あ・・・恋か。

「初めておうちに遊びに来た友達だった」。

「へ～～～」
「で、かっこよかったんですか？」

「ん～～～。微妙。でも・・・・」

「でも～？」

「私には世界一素敵だったわよ？恋ってそういうものでしょ？」

「そーですよねー」。
「じゃ、オレも誰かには世界一なのかな？」
「心配しなくてもアンタにゃいないわよ。松本」

「そいでそいで？」

「彼は覚えてなかったみたいだけど、もっともっと小さい時に一度会ってたのね」。

「その時から？」

「そう。でね。小学校かなぁ。私が熱出したことがあってね。その時、彼がおぶって病院運んでくれたの」。

「へ～～～～～～」
「恩人ってことですか？」

「他にもあるのよ。不良の中学生にからまれたときも助けてくれたし」。

「強かったんですね？」
「かっけ～～～～～」。

「ううん。弱かったわよ。自慢できるくらい」。

そう言って夕子先生は少し笑った。
笑顔がまぶしい。

「なのに先生を守ったんですか？」
「あ！わかった。身を挺して守ったんですね？」
「かっけ～～～～～」


「ううん・・・。彼がまだ中1の時だったし。相手は上級生で、それも2人組だったから」。

「うわ。絶対絶命じゃん」。

「でも勝ったの」。

それは奇想天外な勝ち方だった。

「彼ったらねー。いきなりそのあたりに落ちてた犬のウンコ素手で拾って。それをにぎりつぶしてかかっていったのよ」

「え～～～～～～！」
「そりゃ逃げるわ～～～～」
「きったな～～～～～い！」
「かっこわる～～～～～～」

「そうね・・・。でもね。私を守るためにそこまでしてくれた人って初めてだったから・・・」。

遠い目をする夕子先生。
その目が、とても澄んでる。

わたしは。
きっと先生は、まだママチャリに思いが残っているんだな、って。
なんとなく思った。
自分も恋なんかしたことないのに。
なんとなく。

「それで。告白したんですか？先生」。

「したわ」。

「おおおおおおおお！」

「バレンタインのね。何日も前から、彼が帰る交差点で。毎日毎日待ってた。お誕生日が近かったのよ」

「へ～～～～～」
「やる～～～～！先生」。

「寒い日ばかりだったけど。でも平気だった」。

ヒュ～～～～。

男子たちが不完全な口笛を鳴らす。

「それで・・・手編みのマフラーを渡したの。その瞬間はね、心臓止まるかと思ったわ。まじめに」。

「おおおお」
「オレも欲しい」
「小島うるさい！」

「それで・・・・・・・・・」


「結局。フラれたの。彼には好きな人がいて・・・」

「ふてー野郎だ！」
「今すぐここにつれて来い！」
「小島！うるさいよ！」

「それからしばらくして。今の彼から告白されたのね」。

「ライバル出現～～～～」
「小島、うるさいってば！」

「私。悩んじゃって・・・・」。

「ふうん・・・・」。

「でね。最後にお願いしてみたの」。

「なにをですか？」


「もう一度だけ。私をオンブして・・・って・・・」。


「おおおおお！」
「お、オレ、おんぶしますよ！」
「小島～、うるさい！永久に黙らすよ？」


「彼。笑って。おぶってくれた・・・・」。



「私ね。このまま時間が止まればいいのにって・・・」。



夕子先生の目。少しうるんでる。
気づくんじゃなかったかな・・・。


「それで・・・おしまい・・・」。


「ええ～～～～。それでフラれたんですか～～～？」
「やっぱゆるせね～～～～～」
「先生、こんないい女なのに～～～～」。

「ううん。それは違うわ」。

「なにが、です？」



「いい女っていうのはね～」


「いい女って言うのは。せいいっぱい生きてる女のことよ」。




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