ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「よー。ひさしぶりだなー」。

「千葉兄!?」

そうです。警察官になった千葉くんのお兄さん。
彼は、千葉くんの兄というばかりでなく、我が高校の先輩でもありました。
我々よりは、4歳年上で、同時に在学したことはありませんが、たいへんな「暴れん坊」で、いくつもの伝説が残っているほどの人物でした。
言ってみれば「ケーキ屋ケンちゃんの類い」で、けして警察官に向くような人物ではないのです。

「なな、なんでここに？」

「バカヤロー。オレがここにいんのは不思議ねーんだ」。

「あ。そうか。警察官・・・・ですもんね」。

「そういうこった。アッハッハッハッハッハ」。

「警察の採用基準ってどうなってんでしょうねぇ・・・・」。

「まーたそういうこと言うかぁ。あいかわらずだなぁ。アッハッハッハッハッハ」

トレノの窓から無理矢理手をつっこんで片手で首根っこを持ち上げる怪力兄！

そうです。千葉くんは単に「陽気」なだけですが、千葉兄は「陽気に乱暴」なのです。

「く・・・くる・・・くるし・・・・」

役職でも年齢でも上の五十嵐さんが
「こらこら！千葉！ママチャリ病人だから！」

「いえ、コイツはちょっとやそっとの病気じゃ死にません。アッハッハッハッハッハ」

でも首しめられれば死にます・・・。
この豪快な兄と、ずっと兄弟喧嘩をしながら生き残っている千葉くんもたいしたものです。

「ケホケホ・・・・まったくぅ・・・・。あいかわらず乱暴ですねー」。

「お？お前がそういうこと言うか？アハハハハハ」

「く・・・くる・・・・・・・」

「お前の顔見ると、尻の古傷が痛むぜ～～～。アッハッハッハッハ」

小学校頃までは、千葉くんと、この「難攻不落の兄」を陥れるために、ありとあらゆる手段を使った僕。
僕と千葉くんは、この兄のおかげで、ずいぶんと鍛えられました。

「・・・え？まだ残ってんですか？」

「おー。おかげで高校まで、アダ名が蒙古だった。アハハハハ」。

「プッ・・・蒙古・・・！」

「お前は笑うな！アッハッハッハ！」

五十嵐さん
「なんだ？蒙古って？」

「いやぁ・・・小学校んときこいつと弟がですねー・・・・」。

なにをしてもかなわなかった「頑丈な千葉兄」。
ある日、僕と千葉くんは、カンシャク玉を千葉兄の尻ポケットにしこたましかけたことがありました。
ところが、千葉兄が、コンクリートの堤防に、おもいっきり座ったものですから、これが大爆発！

　しかもズボン、炎上。

まさかカンシャク玉が「燃える」とは、まったく想定外だった僕と千葉くんは、助けるのも忘れ泡をくって逃げたのです。

「その火傷の跡がずっと残ってー。修学旅行で蒙古斑って言われましてね？アハハハ」。

「あー、それで蒙古？」

「そういうこってす。アッハッハッハッハ」

「古い話ですよ」
と、僕。

「やかまし～～～～！アハハハハ」

「く・・・くるし・・・・」

美奈子さんも、さすがにあきれまして
「そんな小っちゃい時から・・・」

五十嵐さん。
「なんか小っちゃい時のほうがすごいって言うか・・・」

「だから古い話ですってば」。

確かに、小さい時の僕は「分別がない」分、すさまじいガキでした。

「そ・・・それで事情聴取って？」

「あー、そうそう。そうだそうだ。お前が見た車ってこれか？」

1枚の写真を見せました。
それは目撃した車種、ライトエースの写真でした。

「あ・・・。そうですけど、ナンバーが違います」。

「当たり前だ。これは同車種の写真ってだけだから」。

「でも・・・これなら別に病室でも・・・」。

「弟によ。お前を病院からひきずり出すよう、たのまれてんだよ」。
こっそり耳打ちする千葉兄。

「千葉から？」

「オレも千葉だから。呼び捨てすんな！アッハッハッハ！」

「く・・・・くる・・・くる・・・・」。

「弟のヤツ、急激に悪化しやがってなー。アハハハハハハハハハハハハハ」。

笑ってる場合か？

「で、お前らの仲間がカケオチすっかも知れないから止めろって伝言だ」。

「え・・・・・・・！」

孝昭だ！

そうか・・・落ち込んでたんじゃなくって「覚悟」決めてたんだ！
しまった！

「若いってのはいいなぁ。アハハハハ」


「村山！もどってくれ！すぐ！」




人気ブログランキング｜ブログ村ランキング

俺たちは風邪　第50話へ→

▲俺たちは風邪 目次へ

→めおとチャットはこちら。

関連記事

• 番外編『俺たちは風邪』第50話 ヒタチ2号(2)
• 番外編『俺たちは風邪』第49話 ヒタチ2号(1)
• 俺たちは風邪　ここまでのあらすじ