ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「あーーー。やらかしたなぁ？駐在い」。
西条くん。さっきとうってかわってうれしそうです。

「や、やらかした？」

「だからさぁ。あの本の通りやっちゃダメだって。初心者には初心者のやりかたってのが・・・」
言うまでもなく、西条くんのS○ファンのことです。
はい。この話、最終話までS○ファン、出て来ます。
それにしても上級者なのでしょうか？西条くん。

「バカヤローーー！！！」

怒鳴りちらす駐在さんに、なぜか安堵する僕たち。

「なんの話ですか？先輩」。
今まで沈黙を守っていた五十嵐巡査長がたずねました。

僕たち。口を合わせて
「駐在さんの持っているS○本の話ですっ！」

「え～～～～～～！」
驚く五十嵐巡査長。


「ちがうわっ！」


「あ？ところで麻生（チャーリー）と、久保がいないな。そう言えば」。
「ああああああ。彼らはちょっと・・・学校に忘れ物したとかでーーー。もうすぐ来ます」。

実は、チャーリーと久保くんは、ザリガニ池で千葉くんの見つけた「いいもの」を回収していました。

ウワサをすれば影、で、そこにチャーリーたちが到着。

駐在さんがお茶の用意をしているのをいいことに、僕たちはこそこそと打ち合わせをしていました。

「首尾はどうだ？」
「いやー。苦労したぞ」。
「で？」
「ん。ばっちり！オマケもつけといた」。
「自転車の仇うてそうかな」。
「まかせとけって」。
「今日、奥さんいないんだって」。
「ほんとかよ？神様は俺らの味方だな！少しわけなきゃ」。

どこの神様が悪戯に加担しているかはよくわかりません。
でも八百万もいるんですから、一人くらい、そういう神様がいても不思議ではありません。

と、このあたりまでヒソヒソと話したところで

「おお。麻生も久保も来たか。また悪そうなのが集まってるよなぁ。今日は」。

お茶を入れながら駐在さん。
まったく余計なお世話です。

「ところで、駐在さん。僕の自転車のペンキ・・・定着しちゃったんですけど・・」。

「あ？そうか？わはははははぁ。今日からお前のこと、赤チャリってよばなきゃな。わははは」。
駐在さんと五十嵐巡査長。
手をとりあわんばかりに喜んでいます。

くっそー。器物破損だぞ。警察官のくせに。

「白バイに悪戯なぞするからだ。少し肝に銘じておけ！」

「くっ・・・・」。


やがて五十嵐巡査長は、白バイに乗って帰り、僕たちも駐在所を後にしました。

「あれ～？」
「おかしいな」。
「なんで五十嵐さん、無事なんだ？」

久保くんたちは不思議でなりません。
なぜなら、五十嵐巡査長のヘルメットに、仕掛けをしこんでいたからです。

「ま。いいや。いつか気づくだろ。それより駐在所だな」。

僕たちは、帰るふりをして、駐在所脇に身を潜めました。

「ほら。これ」。

そこには、ついこの前、パトカーを洗車したときのバケツが2つ。
そこにめいっぱいにうごめくものがありました。

千葉くんが見つけたいいもの。

それは「ウシガエル」です。

合計13匹。

「よく10月にいたなー」。
「今年夏、暑かったからな。少しずれてるんだろ」。

僕たちは、4匹をバケツに残し、9匹をそっと駐在所の扉から中にはなしてあげました。

ご存じないかもしれませんが、ウシガエルは15cmもの体の大きさの割合に、実に俊敏で、ジャンプ力は6m！
かんたんに捕まえられるものではありません。

扉をそっと閉じ、僕たちは少し離れて様子をうかがっていました。


やがて・・・

　　どええええええええええええええええええ！

駐在さんの叫び声が聴こえてきたのは、放牧からわずか数分後のことでした。


なぜ4匹を残したか？

それはですねぇ。夜鳴いてくれるからです。その声の大きさは社会問題にもなったほど！
まぁ、本物の牛より声がでかいんですから。　今夜はきっと大合唱。

眠れるかなぁ。駐在さん。

ウシガエル、見たい方はこちら



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　　　　7章-第14話へつづく


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