ぼくたちと駐在さんの700日戦争

朝がやってきました。
僕は、病院を抜け出す時間を1時～夕食前の5時と定めました。

まずは病室を抜け出すことです。
そうしないと、現状では、電話もなにもできません。

そこで

「看護婦さん。僕、午後、出かけていいですか？」

「いいわけ・・・ないでしょ・・・？」

この間合いタップリなしゃべりかた・・・苦手です。

「午後は・・・ヤマザワ先生の回診もあるのよ～～～～・・・・」。

「そのヤマザワ先生なんですが。僕、実は一昨日の夜も抜け出したんですけどね？」

「えっ！」

ただでさえ青白い定子が、さらに青ざめました。

「見た・・・・の・・・・？」

「はい。意外でした～～～。看護婦さんって、あんなにノリがいいんですね！ヤマザワ先生の前じゃ！」

「え～～～～～～～～・・・」。

そうです。僕が目撃した一部始終では、定子さんは、普段のドロ～～～っとした感じとはまるで別人。

「まさか看護婦さんがロックンロール歌うとは思いませんでした」。

「・・・・・・・・・・」。

言葉をなくす定子。お気の毒ですが、やむをえません。

「まだ・・・・誰にもしゃべって・・・・・ない？」

「ええ。僕は口は固いです」。

脅迫はしますが。

「わ・・・・わかったわ・・・・3時間だけよ？」

やりぃ！

「そのかわり・・・・誰にも黙っててね？」

「あ。ヤマザワ先生とのことですね？もちろんです」。

「そうじゃなくって・・・・・・」。

「あ。ひょっとしてロックンロール・・・のほうです・・・か？」

「そう・・・・わたしのイメージ・・・・くずれちゃうから・・・・」。

なんだって、このイメージを維持したいかが、わかりません。
不思議な人だ・・・・。

「わ、わかりました。約束は守ります」。

「・・・うらみます・・・・・・」。


次に脱出。
今度は「白昼どうどう」と、ですから、夜とは勝手が違います。

しかし、僕には、最初に風疹で運び込まれた時の荷物の中に「秘密兵器」がありました。
そう。「白衣」です。
これを着てしまえば、白衣だらけの病院内。遠目には医者。

廊下で2、3回、見たこともない患者さんに会釈などを頂戴しながら、みごとに脱出成功！


そして移動は・・・。

仲間たちは、まだ授業中ですので、使えません。

こういう場合、たよりになるのは、毎度のことながら

「で・・・・大場先生んとこまで行きたい・・・・と？」

「はい～」。

早乙女さん以外にいません。

「セイガクぅ！もうひとつ格言、覚えたいか？あ？」

「看護婦さん紹介します」。

「え・・・・」。

今度は自発的に覚えました。「いかなる格言も看護婦にはかなわない」。

早乙女さんにはカババァでも紹介してっと・・・。

そうとも知らずルンルンの早乙女さんに乗せられ、BJ宅。
ここからが勝負です。


BJ先生は、外の檻で、うわさのカモシカを診ている最中でした。

「こんにちは！先生」

「あ・・・・君は・・・・・」。

白衣の僕を見て、BJ、かなり驚いた様子でしたが、

「なにしにきた！ドクター・キリコ！」

「ちがいますよ・・・」。

あいかわらずだなぁ・・・・。

「これですか・・・。カモシカ」。

ほんとだ。大きい。
思ったよりずっと巨大です。

「ああ・・・。実はただのカモシカじゃないんだ・・・・」。

「え？野生のを保護したってことですよね？」

「ちがう・・・・実は・・・・このカモシカはね」。

「はい」。

「昔、私が脳を胸に移植したのだよ！」

「はいはい・・・」。

そう来ると思ってました。

「おかげで、人間の言葉も話すのだ！」

「え！ほんとですか？」

「コンニチハ！ボク、カモちゃんデス！」

いや・・・・腹話術にしてもヘタクソすぎ・・・。
しかも名前が「カモちゃん」・・・。
なんてボキャブラリーの貧困な人でしょう？

「ブラックジャックに出て来るのは『ナダレ』ですよ？先生」。

「コンニチハ！ボク、ナダレ！」

おそいって・・・。


※乱栗月間　今日もおそくなりました。師走らしく忙しい・・・

人気ブログランキング
ブログ村ランキング

俺たちは風邪 第43話へ→

▲俺たちは風邪 目次へ

←メール配信のお知らせへ

関連記事

• 番外編『俺たちは風邪』第43話 遠きにありて(3)
• 番外編『俺たちは風邪』第42話 遠きにありて(2)
• 番外編『俺たちは風邪』第41話 遠きにありて(1)